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米国主導の金融相場と東京市場
市川 眞一
2020/01/31

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概要

新型コロナウイルスに揺れる世界のマーケットだが、基本的に日米欧の中央銀行による低金利・流動性供給策に支えられた金融相場であることに変化はないだろう。日本株の場合、歴史的に米国景気との連動性が高い。それは、自動車、テクノロジー関連など主要企業の利益の源泉が、最早、国内ではなく米国中心になっているからだ。足下、米国の製造業景況感指数(PMI)は低下基調にあり、日経平均の一株利益(EPS)も減少に転じた。これまでの例では、東京市場が調整局面入りしても不思議ではない。しかし、昨秋以降、日本株が上昇したのは、世界的な金融相場の下、バリュエーション拡大の波が東京市場にも訪れたからではないか。背景には、米国の物価上昇率が低く、当面、FRBによる金融政策の変更がないとのコンセンサスがあると言えそうだ。むしろ、米国の産業部門が底入れし、企業と財政の資金の奪い合いから長期金利が上昇すれば、この金融相場に終止符が打たれると想定される。



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日経平均のEPSの増減率は、米国のPMIに連動する傾向がある。自動車、テクノロジーなど主要企業の場合、人口減少・高齢化で需要が先細りとなる国内市場ではなく、米国市場が利益の源泉となっているからだろう。足下、PMIは低下基調にあり、日経平均の予想EPSも前年同月比でマイナスに転じている。

企業業績のみならず、日本株は米国景気の循環的変動に遅行的に動く傾向が強い。それは、ファンダメンタルズから見れば、業績の変化に沿ったものと言える。もっとも、足下については、米国のPMIが大きく低下しているのに対し、日本株は逆行して高値水準となった。

米国景気、特に産業部門の減速下にも関わらず、日米株式市場が上昇した背景は、中央銀行による金融緩和だろう。昨年、FRBが再び緩和基調へ姿勢を転換できたのは、期待インフレ率がFRBの目標とする2%に届いていないからだ。つまり、期待インフレ率が上がり、長期金利が上昇すれば、この金融相場は終わると考えられる。

 

 


市川 眞一
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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