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投資をする際は「木を見て森を見ず」は避けよう
森永 康平
2019/12/30

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概要

投資をする際に、重要な要素の1つに「資産配分」があります。絶対に上昇する株や資産を選ぶということは誰にも出来ない以上、投資先を分散させてリスクを抑えながら、それでもなんとか高いリターンを追求していくしかありません。投資のパフォーマンスを上げるために重要なのが投資資産の配分比率をどう調整するかということになります。 それでは、投資のプロはどのようにして配分比率を決定するのでしょうか。この記事が掲載されているピクテポルテを運営しているピクテは4つの観点から資産配分を決定しています。その4つとは①:マクロ経済分析、②:流動性分析、③:センチメント(テクニカル)分析、④:バリュエーションとなっています。今回はその4つのポイントのうち、①のマクロ経済分析について考えていきましょう。



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マクロ経済分析ってなに?

まず、「マクロ経済ってなに?」と思う方もいるでしょう。マクロ経済という言葉があるということは、ミクロ経済という言葉もあります。簡単に言ってしまえば、ミクロ経済が個人や家計がモノの売買やサービスを受ける代わりに対価を払うなどの経済活動を対象とする一方で、マクロ経済ではGDP(国内総生産)などのデータを用いて、国レベルでの経済活動を対象とします。

株式投資をする時は、その企業の業績などを調べて分析する必要があると思っている方もいると思いますが、「木を見て森を見ず」になってはいけません。その企業がある国の状況も同時に確認しなくてはいけないのです。どの企業の株式に投資をするかを決める前に、そもそも、どの国に投資をするのがいいだろうと考えましょうということですね。  

企業であれば業績をみればいいですか、国家レベルだと何をみればいいのでしょうか。いくつも確認すべき指標はありますが、代表的なのはGDPでしょう。「日本は世界第3位の経済大国だ」ということがありますが、何が第3位なのかというとGDPの額を指しています。GDPとはその国が1年間のうちでどれだけの付加価値を生み出したのかを測る指標です。このGDPがどれだけ伸びているか、という成長率をみることから始めましょう。

世界の景気先行指数は上向き?下向き?

ピクテが発表している世界景気先行指数をみてみると、世界の実質経済成長率が、直近予想の年率2.7%から、2020年には同2.0%前後に減速することを示唆しています。これは、物価の上昇分を差し引いた世界のGDP成長率が鈍化しましたということを表しています。数字から成長率の伸びが鈍化していることが分かりましたので、つぎにその理由を考えてみましょう。

ピクテ世界景気先行指数と世界GDP成長率(実質)

(出所): ピクテ・アセット・マネジメントのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成。
※世界のGDP成長率:39カ国の先行指数の加重平均。世界の潜在GDP成長率:ピクテによる潜在成長率推計。ピクテ景気先行指数はピクテが独自で算出している指数。

世界の経済成長率が鈍化した要因の1つとして米中貿易摩擦が挙げられます。ニュース番組や新聞でもこの件はよく報じられていますね。世界的にはミクロの観点からは消費者需要が依然として堅調なのですが、マクロの観点からは貿易摩擦による関税の引き上げなどの保護主義政策を背景に輸出受注が縮小傾向にあります。

それでは、どの国にも投資したら危ないの?

マクロ経済の観点から世界経済が減速しているとなると、その国にも投資したら危ないのでしょうか?世界全体の成長が下降トレンドになっているというだけで、そういうことではありません。そういう全体感を持ったうえで、国ごとに考えていきましょう。

まず、米中貿易摩擦というぐらいですので、この影響を大きく受けているのは言うまでもなく米中両国になります。米国では8月のISM製造業景況感指数が3年ぶりの低水準を付けました。ISM製造業景況感指数とは、米国の製造業の景況感を示す指数のことです。一般的には50を上回ると景気拡大、50を下回ると景気後退と判断します。8月に40を下回る49.1を記録して以降、11月の48.1まで4カ月連続で50を下回っています。中国8月の鉱工業生産が過去最低水準を記録しました。鉱工業生産指数とは、鉱業や製造業の生産動向を示す指数のことです。

世界第1位の米国、第2位の中国がこのように不振だと、他の国はもっと不審なのではないかと思うかもしれませんが、実は欧州では先行きに期待が出来る指標が出ています。ピクテのユーロ圏景気先行指数は、堅調な個人消費を背景に、3ヵ月連続でプラスとなっています。景気先行指数とは景気に先行して動く複数の経済指標から算出した指数になります。景気動向に一致する一致指数と、遅行する遅行指数も存在します。小売売上高は僅かに減少していますが、家計の需要は堅調で、消費者心理も高水準を維持しています。労働市場に改善がみられることや、民間企業向けの融資が拡大基調を続けていることが背景にありそうです。

ピクテユーロ圏景気先行指数

(出所): ピクテ・アセット・マネジメントのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成。
※:ピクテ景気先行指数はピクテが独自で算出している指数。

このように、まずは世界全体で景気や経済の成長率がどうなっているかという全体感を把握したうえで、国や地域ごとに目線を落としていき、おおまかな投資対象や投資金額の配分を決めていくのです。

森永 康平
株式会社マネネCEO
経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。
業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。
​著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)
日本証券アナリスト協会検定会員。


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