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攻めと守りのバランスが投資には大事
森永 康平
2020/01/16

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概要

投資を始めたばかりの人や、これから始めようと思う人によく見られる傾向として、攻守のバランスがよくないというものが挙げられます。投資における攻守とはなんでしょうか。攻めるというのは、投資で利益を出すことで、守るというのは投資資金を減らさないことと言えるでしょう。投資に充てている資金の性質によって、このバランスが半々であるべきなのか、攻めに比重を置くのかなど、配分は変わってきます。今回は投資における攻守のバランスについて学びましょう。



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投資は儲けることだけを考えてはいけない

投資と聞くと、お金を増やす行為という印象があることから、攻めの部分に意識を全てもっていってしまう人がいます。しかし、投資の世界には「絶対」は存在せず、どれほど調査や分析をしても、「絶対」に株価が上がる株式に投資できるかどうかは分かりません。それでは、攻めに意識が集中していると、どのような行動を起こしてしまうのでしょうか。

攻めに意識が集中しすぎている投資家の傾向を分析してみると、「ここ最近株価が上がっている」、「みんなが買っている」という理由だけで自らもその企業の株に投資しているという特徴が挙げられます。この行為は完全に攻めだけに意識が集中している証拠です。

それでは、守りに意識を向けるにはどうすればよいのでしょうか。たとえば、この例でいえば、その企業が何をして利益を出しているのかというビジネスモデルを理解しているか。その企業が属している業界・産業の動向を理解しているか。競合との競争環境はどのようになっているか。その企業のこれまでの業績と将来の業績予想が頭に入っているか。このような情報をしっかりと理解したうえで投資できているのなら、守りも十分と言えるでしょう。「現状がこうで、将来的にはこうなるであろう」というシナリオが作られていれば、シナリオとは違う展開になった時に、売って逃げることもできますし、場合によっては買い増すことも可能です。

これができていないと、多くの投資家が想定していたシナリオと違う展開になって、株価が下がり始めたとしても、自分がどう動けばいいのか分からず、ただただ目先の相場展開に右往左往することになってしまいます。

不確実な世界なので、リスクを抑えよう

どれだけ準備をしても絶対に株価の未来を正確に予測することは出来ません。投資した翌日に株価が大きく下がることも考えられます。たとえば、2008年9月のリーマンショックや、2011年3月の東日本大震災など、予期することは難しく、特に後者の予期は不可能です。

大きな下落というのは数字以上に大きな影響を投資資金に与えてしまいます。筆者が投資初心者に指南していた時に、投資早々に大きな下落を受けてしまうと、どれだけ厳しいかを話していた時に、とても驚かれた話があるので1つ紹介しましょう。

あえて極端な例を挙げますが、「あなたがA社という企業の株に投資したとします。翌日、A社の株価が10%下がって、その翌日には10%上がったとすると、あなたの投資資金はどうなりましたか?」とその投資初心者の方に質問したところ、その方は「元に戻ったので助かりました。」と回答しました。感覚的にはその通りなのですが、実際に数字で考えると、そうではないことが分かります。

A社の株価が当初100円だとすると、翌日は10%下がって90円になります。そして、その翌日に10%上がると99円となります。つまり、元には戻っていないのです。投資直後に大きく下がってしまうと、その後はその下落率以上に上昇率を積んでいかないと、投資元本にすら戻らなくなってしまいます。 よって、極力、大幅な値下がりを投資当初に生じさせないようにリスク管理を徹底することが求められます。

分散することが一つの解決法

しかし、「絶対」に値上がりする株を選ぶことができないのであれば、その逆、つまり「絶対」に値下がりする株を避けることも不可能なはずです。いくら守りに意識を向けても、大幅に下がる株を避けるのは難しいと思いますよね。そこで出てくる考え方が「分散」です。

たとえば、いまここに5つの株があるとします。それぞれ1年後の騰落率は-10%、-5%、0%、5%、10%だとしましょう。将来のことは分からないとすると、どれか1つをランダムで選ぶことと同じです。10%下がるかもしれませんし、10%上がっているかもしれません。

一方で5つ全ての株に均等に投資をしていた場合、投資資金全体でみれば、1年後もプラスマイナスゼロとなります。この例では上がりも下がりもしないということになりますが、実際はこのようにキレイに騰落率が分散することはないので、個別に一括投資をするよりも、分散投資をした方がリスクを抑えられると考えてもらえればいいと思います。

それでは、個人投資家が分散投資を実践するためにはどうすればよいでしょうか。先日の記事にも書いた通り、個人投資家が手軽に少額から分散投資をするのであれば、投資信託を活用することをお勧めします。なぜなら、少額から投資できるにも関わらず、数十銘柄から数千銘柄に分散投資をすることが可能だからです。  投資未経験者や初心者の方に攻守のバランスを意識しなさいと言っても難しいかもしれませんが、まずは分散投資をしてリスクを抑えることから始めましょう。それだけでも、既に攻守のバランスが相当よくなっているといえます。

森永 康平
株式会社マネネCEO
経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。
業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。
​著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)
日本証券アナリスト協会検定会員。


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