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自分のことは信用ならない〜魅惑のキャッシュレス決済〜
スミ マサノリ
2020/01/30

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概要

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国からキャッシュレスを推されている。キャッシュレス決済をすれば、数パーセントの還元もあるというが、僕はその流れに懐疑的だった。何か裏があるのでは? きっと怖いことになる。それにコンビニによって使えたり使えなかったりキャッシュレスの種類も様々で、最終的には現金が一番便利なのでは?などと現金主義を貫く方針でいた。昨年の秋、スマホを買い換えるまでは。

スマホの機種変更は5年ぶりで、それだけ使っていると画面はバキバキに割れていたし、新しいOSが発表されてもいちいち対応してくれない。スマホでピッとやって、ポロローンみたいな事が物理的に出来なかったのだ。そのこともあって、「自分、現金主義なので」と、不器用を気取って世の中の流れに抗っていた。それがどうだ。新しいスマホに買い替えた瞬間、今まで諦めていたことが次々と実現していく。スマホでのキャッシュレス決済もそのうちの1つで、使ってみるとこんなに便利なことはない。コンビニでの会計時、背負っているリュックを前に回して財布を取り出して小銭を探る。そんな非効率なことは必要ないのだ。スマホをかざすだけで決済ができてしまう。なんてスマートなんだ!それからは、どんなに小さな買い物でもスマホをかざして済ませるようになった。財布を忘れて外出してもスマホがあればなんとかなる。財布を忘れがちで愉快なサザエさんにも是非キャッシュレスを勧めたい。

 

新しいスマホにしただけで、コロッと現金主義からキャッシュレス主義に変わってしまう現金な奴である。思い返せば、スマホが世に出た時もそうだった。いち早く手にした友人に、「そんな不恰好な電話、恥ずかしい!」などとのたまっていたのだ。ラグビーだってそうだ。ワールドカップが始まるまではほとんど無関心だったのに、あの盛り上がりを経て、飲みの席で友人のつまみを横取りして「ジャッカル」とか言っている自分がいた。東京五輪は東京が混むから嫌だ、と今のところ言ってはいるが、始まったらきっと感動したりするのだろう。自分で自分が信用ならない。

スマホを買い替えてからキャッシュレス生活を謳歌して1ヶ月、カードの明細を見て震えた。明らかに使い過ぎである。無い袖を振り過ぎた。キャッシュレスは打ち出の小槌ではない。主義を変える前に薄っすらと感じていた「きっと怖いことになる」という予感は当たっていたのだ。悪い予感に関してだけは自分のことを信用できる。


スミ マサノリ
作家・映像作家

法政大学文学部を卒業後、デジタル系制作プロモーション勤務、デジタル系デザイン事務所の株式会社デジタルビイム代表取締役、フリークリエイターを経て、作家・デザイナー・映像作家・パフォーマーとしてマルチに活動中。
執筆やデザインのほか、自作のショートコントを発表したり、“捨てられた椅子に座るシリーズ”と銘打ったTwitterでの画像投稿など、ユーモラスで独特な世界観にコアなファンを持つ。
2019年、俳優の西川瑞と表現ユニット「劇団SAIGEN」を結成。活動の場を広げている。



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