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せっかく投資をするなら制度を有効活用しよう
森永 康平
2020/05/09

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概要

『~投資を始めたら~Pictet Porte』に連載を始めてから、早くも12話目となりました。サイトの名前にもあるように、投資を始めたばかりという方や、これから始めようと思っている方を対象に記事を書いています。この連載を読んで、投資の世界に一歩踏み出せたという方がいれば嬉しい限りですが、今回は難しい投資の話ではなく、お得な制度について紹介したいと思います。



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リターンを改善する方法は2つ

過去の記事「投資家に求められる資質とは?」のなかでも書きましたが、投資に限らず将来のことは誰にも予測できません。投資をする前にいくら分析や調査をしても、絶対にリターンを出せるというものではありません。しかし、リターンを改善する方法は2つあります。

1つは取引にかかる手数料を抑えるということです。投資をする際に投資信託を利用するのであれば、ノーロードと呼ばれる購入時の手数料が一切かからない投資信託を選ぶことです。まだネット証券が一般的ではなかった頃は非常に高い手数料を払う必要がありましたが、ネット証券の登場によって取引にかかる手数料が一気に低くなると、それに伴い投資信託の手数料も低下していき、今では一切手数料がかからない投資信託の本数が急増しました。手数料がかからないということは、買った瞬間に手数料分の損が出るということがなくなりました。  

つぎの方法としては、税金を払わないということです。このように書くと脱税を勧めるのかと怒られてしまうかもしれませんが、そういうことではありません。国が「貯蓄から投資へ」を掲げるなかで、税金が優遇される投資制度が整備されているのです。投資をしていくなかで、売買をして利益が出たり、配当金を受け取ると、その金額に20.315%の税金がかかりますが、その税金を払わずに、丸々受け取れてしまうお得な制度があるのです。

NISAには種類がある

そのお得な制度のうちの1つがNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)と呼ばれるものです。NISA口座から投資をすると、前述の通り非課税となります。NISAには2種類の口座があり、「一般NISA」と「つみたてNISA」があります。これはどちらかしか選べないため、自分の投資目的や投資スタイルに応じて選びましょう。

両者にはいくつも違うポイントがありますが、主なポイントを3つ紹介します。まず、年間で投資できる上限額に違いがあります。一般NISAは120万円、つみたてNISAは40万円と決まっています。NISA口座で投資したい資産が大きい方は一般NISAを選んだ方がいいと思いますが、この連載の対象の読者は毎月3万円以下の積み立てぐらいから投資を始めている方も多いかと思いますので、その場合はつみたてNISAで十分だと思います。

次に違うポイントとしては、非課税で保有できる期間です。一般NISAは5年、つみたてNISAは20年と大きな差があります。長期でコツコツ投資をしたい方はつみたてNISAの方がお得に感じるのではないでしょうか。

そして最後のポイントは、投資できる商品が違います。一般NISAは国内株式、海外株式、投資信託とほとんどの商品を選択することが出来ますが、つみたてNISAは国が定めた基準を満たした投資信託しか選べません。ネット証券だと150本ほどの選択肢が用意されています。これだけを見ると一般NISAの方がいいように思うかもしれませんが、つみたてNISAで選べる商品は金融庁が選んだ長期投資に向く低コストの投資信託ばかりです。数は少ないと思うかもしれませんが、未経験者や初心者からすれば選択肢が多すぎても困るだけでしょうから、安心して選べるという考え方も出来るでしょう。

iDeCoという選択肢もある

NISAと同じような非課税制度にiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)というものがあります。iDeCoもNISAと同じように利益に一切税金がかからないというメリットがあります。それなら、NISAと何が違うんだ、と思うかもしれませんが、iDeCoは投資した金額すべてが所得控除の対象となるという新たなポイントがあります。つまり、年間の所得からiDeCoで投資した金額を控除できるため、所得税と住民税を抑えることが可能になります。

しかも、iDeCoで投資をしてきた資産を年金のように少しずつ引き出す場合は公的年金控除、一時金として引き出す場合は退職所得控除が適用されるため、こちらも支払う税金が減ることになります。

それならNISAよりも全然いいじゃないかと思うかもしれませんが、iDeCoを活用して投資した金額は原則として60歳までは引き出せないという点は注意しましょう。また、iDeCoは自身の状況(会社員なのか、自営業者なのかなど)によって、毎月の掛け金の上限額が変化します。12,000円から68,000円までと幅が大きいので、iDeCoを活用する前に自分の毎月の掛け金の上限を確認しておきましょう。

運用資産のタイプによって使い分けよう

一気に2種類のNISAとiDeCoについて説明したので、結局どうすればいいのか、と迷ってしまう方もいるかもしれません。節税という観点でいえばiDeCoの方が有利ですが、前述の通り原則60歳まで引き出せません。よって、老後資産のための投資という強い意志があるのであればiDeCo、途中でマイホーム購入の資金や子どもの学費に充てる可能性があるということであれば、NISAを選んだ方がいいかもしれません。


また、NISAは一般NISAかつみたてNISAのどちらかを選ばないといけないと書きましたが、そのどちらかのNISAとiDeCoは併用することが出来ますので、将来的に使う可能性のある資金はNISA口座、老後資産はiDeCoで作るなどの使い分けもいいかもしれません。

森永 康平
株式会社マネネCEO
経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。
業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。
​著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)
日本証券アナリスト協会検定会員。


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