Article Title
グローバル・マーケット・ウォッチ:効果的な金への投資
2019/02/12

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー

概要

金への投資が再び注目を集めています。現在、金の延べ棒を購入するよりも、有利な投資手法があります。



Article Body Text

政治や経済の不確実性を背景に、安全な投資先としての金の魅力が、再び注目を集めています。このレポートでは、金への分散投資を検討する投資家に、地金の購入や金先物の買い建てに勝る投資手法を提案します。つまり金鉱株への投資が、特に高い価値を提供しているからです。事実、金鉱株は、金鉱企業のライバルともいえるバーゲン・ハンター、即ち金セクターの情報に通じた、割安株狙いの投資家にとっての魅力を増しています。

バリック・ゴールドが、昨年9月、ランドゴールド・リソーシズを60億ドルで買収したことが引き金となって、金セクターにおける企業のM&A(合併・買収)が活況を呈しています。鉱業セクター内で同業他社同士の買収が相次ぐ状況は、企業の資産、即ち、今後採掘される金が過小評価されていることを意味します。金鉱株は、埋蔵量や地金の価格に比べて割安であるというだけでなく、鉱業セクターが属する素材セクター、ひいてはグローバル株式全般と比べても魅力的です。

図表1:価値の発掘:金鉱株、素材セクター、MSCI ACWI株価指数の株価純資産倍率(PBR)の推移

 

 

青:MSCI ACWI株価指数、灰色:MSCI素材株価指数、紫:金鉱株のバスケット(個別銘柄のヒストリカルの時価総額に基き、時価総額加重平均した金鉱株の指数)

出所:ピクテ・アセット・マネジメント

金鉱株のPBRは足元1.4倍と、過去10年平均の1.9倍に届かず、素材セクターの1.5倍、世界株式の2.0倍を下回ります1。金鉱株は、2018年年初に大きく売られた後の回復が緩やかなためです。

ピクテのポートフォリオは、金鉱株および金地金を2%程度ずつ組入れています。

金の保有によるヘッジ


金鉱セクターの統合の継続が見込まれる中、金鉱株の上値余地は大きいと考えますが、金鉱株の主な魅力は、金現物に対して相対的に割安な投資となることです。一方、金の魅力は、他の主要資産と連動せず、とりわけ市場の危機時に威力を発揮する傾向が強いということです。昨年10月を例に取ると、株と債券の同時急落が投資家の不意を衝く中、金はこれに逆らって上昇を続け、2018年10-12月期の期初以降、10%超の上昇を記録しました。

 

ダブリン市立大学のダーク・バウアー、ダブリン大学トリニティ・カレッジのブライアン・ルーシー両氏は、「金は、概ね、株のヘッジとなるが、株式市場の危機時には逃避先となる」と述べています2。換言すると、金は、正常な市場環境では株や債券をある程度ヘッジするに留まるのに対して、市場の危機時にはヘッジ手段としての威力を発揮するということです。

世界の多くの地域が政治の混乱に見舞われる状況を勘案すると、両氏のコメントはまさに現状に当てはまります。米中の貿易摩擦、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)、イタリアの政局の混乱等を考えただけでも、危機時の保険をかけておくことは十分に正当化されるはずです。更に、世界各地で金融政策が大きく転換される状況にあって、投資家には対処すべき問題が山積みです。

図表2::政治リスクの高まり:経済政策不確実性指数の推移(世界、購買力平価加重平均)

 

出所:ピクテ・アセット・マネジメント


世界の中央銀行が景気減速を警告する兆しを見逃して、過度の金融引き締めを行うリスクは払拭されません。また、米連邦準備制度理事会(FRB)が年内の利上げを一時中断しても、景気減速局面では、景気を下支える余地が大きいとは思われません。FRBは2015年末以降、利上げを継続してきましたが、米国の借り入れコストは、未だに史上最低水準で推移しています。FRBのバランスシート縮小の中断と、量的金融緩和の再開は全く別物です。前者は実行される可能性が極めて高いのに対し、後者は政治的に危険です。

景気対策は財政刺激の強化という形で行われる公算が高いと考えますが、政府債務残高が既に膨れ上がる状況では、インフレが進むという副作用を伴った劇薬にもなりかねません。一方、金は、インフレに起因するドルの減価を相殺し、安全な避難先となる実物資産です。

低金利の世界では、インカムを創出する資産から得られる利回りを放棄した金の保有に伴う機会コストが低下しているのです。

    MSCI素材株価指数およびMSCI ACWI株価指数、2018年12月31日現在


    "Is Gold a Hedge or a Safe Haven? An Analysis of Stocks, Bonds, and Gold" Dirk Baur and Brian Lucey, The Financial Review 45(2010) P.217


    ●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
    ●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
    ●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
    ●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
    ●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
    ●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
    ●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
    ●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
    ●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

    手数料およびリスクについてはこちら


    MSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。



    関連記事


    中国債券市場の振り返りと見通し(2024年3月)

    新興国社債市場の振り返りと見通し(2024年3月)

    新しい産業革命

    2024年3月の新興国株式市場と今後の見通し

    人工知能(AI)はあなたの仕事を奪うか?

    代替タンパク質業界の新たなプレイヤー