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2024年1月の新興国株式市場と今後の見通し
2024/02/07

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概要

1月の新興国株式市場(現地通貨ベース)は月間で下落となりました。主要国別の市場動向、今後の見通しについてご紹介いたします。
※記載内容はすべて海外市場の月末1営業日前ベースでのコメントになります。



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2024年1月の新興国株式市場

新興国株式市場は月初、中国政府が発表した2023年12月の製造業景況指数(PMI)が予想を下回ったことなどを受けて、中国経済に対する懸念が高まったほか、米国の労働市場の堅調さを示す経済指標の発表などを受けて、米金融当局が早期の利下げに踏み切るとの期待が後退したことなどを背景に、低調なスタートとなりました。その後も、月半ばに発表された中国の経済指標が景気回復の鈍さを示す内容であったことや、米長期金利の上昇などが重荷となりました。月後半は、中国政府が株価下支え策や景気刺激策を発表したことや、米長期金利が低下したことから、持ち直す動きもみられました。しかし、月間でみれば月半ばまでの下落分を取り戻すには至らず、前月末比で下落となりました。

主要国別、セクター別の動き(現地通貨ベース)

国別(現地通貨ベース)では、台湾は月前半、総統選挙を前にリスク回避の動きが強まりましたが、月後半は半導体企業の業績改善期待や米ハイテク株高の流れなどを受けて、主力の情報技術セクターを中心に上昇しました。インドは、原油価格の上昇などを受けて、エネルギーセクターの銘柄が相対的に大きく上昇したほか、良好な決算を発表した自動車メーカーやITサービス企業なども堅調な株価推移となり、全体でも上昇となりました。一方、南アフリカは、金価格の下落を受けて金鉱株などを中心に下落しました。ブラジルは、中国経済の回復の鈍さなどを背景に鉄鉱石などの資源需要の弱含みが懸念される中、素材セクターの銘柄が下落したほか、金融セクターの銘柄も低調となり、全体でも下落となりました。韓国は、予想を下回る決算が相次いだ素材セクターの銘柄や業績に対する懸念が高まった主力のハイテク銘柄などを中心に下落となりました。中国は、月後半に中国政府が株価下支え策や景気刺激策を発表したことで、反発する局面もありましたが、月を通してみれば経済に対する懸念や米中対立不安などが根強く、相対的に大きく下落しました。

セクター別(現地通貨ベース)では、エネルギーが上昇したほか、公益事業は底堅い推移となりました。一方、一般消費財・サービス、不動産、素材などは相対的に大きく下落しました。

今後の見通し

長期的には、新興国経済は、若い労働人口が豊富であることなどを背景に、中間所得層の持続的な拡大や構造変化に後押しされ、先進国を凌ぐ成長力を有しているとの見方には変更ありません。

新興国株式のバリュエーション(投資価値評価)は、先進国株式に比べて依然として魅力的な水準にあります。

東南アジアについては、アジアにおける製造拠点の分散化の流れなどから恩恵を受けると予想されます。また、これまでの利上げにより政策金利が高水準にあるインドネシアなどでは、利下げ転換の可能性もあるとみています。

南米では、メキシコは、米企業などの「ニアショアリング(事業拠点の近隣移転)」先として恩恵を受けると期待されます。また、ブラジルは依然として政策金利は高水準ですが、利下げに転換しています。

2024年の新興国における政治イベントでは、1月の台湾総統選挙は与党・民進党の頼氏が勝利して終えましたが、今後、韓国、インドなどで総選挙が実施される予定です。こうした政治イベントの動向を受けて、株式市場の値動きは大きくなる可能性もあり、注視が必要と考えます。

また、注目が集まっているAI(人工知能)の進展は、情報技術セクターの株価にプラス材料となりますが、特に台湾がその恩恵を受けるとみています。

世界経済の減速懸念が高まる一方、インドについては、足元の景気動向についても概ね良好で、長期的にも相対的に高い経済成長が期待できるとみています。しかし、バリュエーションは相対的に高水準で、銘柄選別が重要になると考えます。

中国は、不動産セクターや株式市場の下支えなどの景気刺激策を打ち出しています。しかし、先行き不透明感が残り、株価は不安定な動きが続くことも懸念されます。こうした中で、当局が打ち出す政策が、実体経済に効果をもたらすかを注視しつつ、分散投資を徹底していくことが重要であると考えます。

(※将来の市場環境の変動等により、上記の内容が変更される場合があります。)

 


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