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布地のリサイクル循環
2024/09/06

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概要

現在の方法では、ほとんどの布地はリサイクルすることが出来ません。そのため、毎年何百万トンものファストファッションの衣類が埋め立て処分されています。こうした状況を変えようと試みるスタートアップ企業があります。



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ファストファッションは、季節ごとの消費と廃棄を前提として、低価格で販売する衣料品を生産してきました。その数は、毎年、約1,000億着にものぼります。ファッション業界は、年間で、欧州連合(EU)全体の排出量とほぼ同量の二酸化炭素を排出しています。ファストファッションが消費文化を支配し続ける一方で、近年は従来型の手法に替わる製造手法が関心を集めています。

英国を拠点とするエレン・マッカーサー財団(Ellen MacArthur Foundation)等の組織が主導するサーキュラーエコノミー(Circular Economy:循環型経済)の推進は、使用済みの製品を製造段階に戻すことが出来るサプライチェーンの構築を多くの企業に促しています。循環システムは、新しい事業モデルを通じて、5,600億米ドル相当のビジネス・チャンスを生み出す可能性がある、と同財団は報告しています。消費者の環境意識が高まるに連れて、循環型のサプライチェーンは企業のブランド価値を高めることに寄与し、利益の面でも恩恵をもたらすことが出来ると考えます。

しかし、ファッション業界の変革は遅々として進みません。このことが、ケミカル・リサイクル(使用済み資源を化学的に分解して化学原料に戻し、再利用可能な状態にする方法)の更なるイノベーション(技術革新)が求められる理由です。オーストラリアの起業家、エドウィナ・ホァン(Edwina Huang)氏によれば、ほとんどの服飾メーカーが、重量(1平方メートル当たりのグラム数)と繊維を特定して布地を要求します。布地を裁断し、混紡する工程だけでは十分ではないのです。

繊維業界が何百年も続けてきたやり方を変えることは出来ませんが、既存のインフラを新しい技術に適合させ、混紡に取り組むことで、自分達を変えることは可能です。

シドニーに拠点を置く、ホァン氏が率いるスタートアップ、Phoenxt社は、ファッションを環境に優しいものに変えようと奮闘する企業のうちのひとつです。同社は、革新的な化学処理法を開発し、古い衣服を美しく新しい布地に変えています。



問題のひとつは、ほとんどの生地が現在の方法ではリサイクルすることができず、何百万トンもの布地が廃棄され、埋め立て処分されていることです。それらの生地は、ポリエステルと綿の混紡であり、布のリサイクル業者は、一方の繊維にダメージを与えることなく、もう一方の繊維を回収することが出来ませんでした。古着をアップサイクルすることによっておしゃれな衣料品を作っているデザイナーもいますが、廃棄された衣類の圧倒的な量と比べれば、極めて規模の小さな試みに過ぎません。使用済みの大量の布地は、最終的に廃棄される前の最後の選択肢として、壁の断熱材、詰め物やモップ等の材料になっています。「リサイクルというよりはダウンサイクルだったのです。年間に廃棄される膨大な量の布地を考えれば、これを、再び原料にする体系だったプロセスなくして、どうやって状況を改善出来るというのでしょう」と、ホァン氏は述べています。

ホァン氏にとっては、新たな挑戦が始まりました。ホァン氏は、化学エンジニアや高分子科学者を集めてチームを結成し、調査を開始した後、2019年にPhoenxt社を設立しました。同社は、繊維を分離し、素材の品質を維持しながら、新しい繊維の素材にリサイクルするためのケミカル・リサイクルの工程を開発しました。古着が新しい糸になったのです。同社は、価値がほとんど、あるいは、全くない廃棄された布地を再生繊維に変えることで付加価値を加え、完成品を1キログラム当たり約3米ドルで販売しています。

Phoenxt社は、収益を計上する前の試験段階にあり、中国の小規模工場と提携して、1日に8キログラムの布地を生産しています。2024年末には1日に2トンを製造する工場が稼働する予定となっており、増産体制が整います。ホァン氏は、「最終的には、さまざまな国に工場を開設し、1工場あたり年間15万トンを生産したいと考えています。」と話しています。


投資のためのインサイト

ピクテ・テーマ株式運用チーム、シニア・クライアント・ポートフォリオ・マネージャー、ジリアン・ディーセン( Gillian Diesen)によると


消費者や投資家が、以前にも増して、企業のグリーン・クレデンシャル(環境への配慮に対する実績や信頼性)に注目しており、ファッション業界も例外ではありません。ファストファッションに逆風が吹きつける中、サステナブル(持続可能)な素材開発に投資し、革新的なリサイクルの仕組みを提供する企業が散見されます。


高額商品市場では、サステナビリティ(持続可能性)が重要な差別化要素となっており、ブランド企業は伝統、職人技術、細心の素材調達等への取り組みを強調しています。製品は通常、季節ごとに新しいものに取って替わられるのではなく、長持ちし、価値が維持出来るようにデザインされています。



サステナビリティは、ピクテのプレミアム・ブランド戦略の重要な柱であり、企業は、このトレンドを取り入れることで、事業の将来性を証明し、潜在的な収益力を強化することが出来ると考えます。世界のサステナブル・ファッション市場は、2023年の78億米ドルから2030年には300億米ドル規模に成長することが予想されます。


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