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- 金:より変動の激しい道を進むのか?
最近の金市場の動向を振り返り、今後の見通しについて考えてみます。
■概要
・最近の記録的な高値を見ても確認できるように、金価格は上昇基調を維持しています。
・金需要の性質は変化の兆しを見せ始めています。価格の高騰が中央銀行や中国の需要に影響を及ぼし始めた一方で、米国の金利の低下や市場の不確実性がOTC取引やETFの需要を押し上げています。
金価格は史上最高値に
10月に入り、金の価格は米ドル建てで史上最高値をつけましたが、価格が上昇しているにもかかわらず、需要は依然として強さを示しています。しかし、価格は上昇トレンドを維持している一方で、需要の源泉は変化の兆しを見せています(図1)。
米国先物市場における投機的なネット・ロング・ポジションの急増からもわかるように、OTC*需要は2024年4月~6月期に急増しています。また、ETF需要も流出超の期間が約2年続いた後、足元では流入超に転じています(図2)。一方で、価格の高騰が重荷となり、中央銀行や政府機関などの需要は減少し、中国の現物需要も最近大幅に減少しています。
ETFとOTC取引の需要が主導権を握る
金への投資は、利息収入が得られないという機会コストを伴いますが、この機会コストの変化がETF需要に変化をもたらします。米国経済のモメンタムが低下し、米連邦準備制度理事会(FRB)が緩和姿勢に転じたことで、米国の金利は低下しました。その結果、市場の不確実性に対するヘッジ手段としての役割を果たす金の機会コストが低下しました。今後を展望すると、FRBの利下げサイクルが始まることで、ETFにおける金の需要がサポートされるはずです。興味深いことに、ワールド・ゴールド・カウンシルのデータによると、最近の金融市場の低迷時にはETFの金需要が不安定になっていたようです。つまり、米国株式市場が持続的に下落しても、金の価格には必ずしもプラスに働くとは限らない可能性があります。
米国の先物市場におけるポジションから推測される金のOTC需要は引き続き改善しています(図3)。このような投機的な需要は、地政学的懸念、米国の財政見通しの悪化、米国の大統領選挙に関連する不確実性、FRBのハト派的な姿勢を強める金融政策、金価格の上昇トレンドなどの要因によって引き起こされています。ETF需要と同様に、少なくとも11月の米国の大統領選まではOTC需要が大きく変化する理由は限定的であると見ています。
これまで、ETFと先物による需要は金価格の形成に重要な役割を果たしてきました。しかし、これらの需要、特にOTC取引については、非常に不安定であると言えます。また、ETF需要については、過去2年間は流出超となってきたことから今後は一段と回復する余地はあると見ていますが、OTC需要はすでに歴史的に高い水準にあります(図1)。
中央銀行と中国からの需要の低下
金価格の高騰は現物需要に影響を及ぼす傾向があり、最近の中央銀行や政府機関などからの需要がわずかに減少している要因となっている可能性があります。実際、国際通貨基金への報告によると、中央銀行からの需要はここ数か月で減少に転じています。とはいえ、金の大幅な売却は報告されておらず、外貨準備高の20%を金で保有することを目標にしているポーランド中央銀行からの需要や、インドやトルコなどの構造的な買い手からの需要が継続していることは、公的機関からの金需要の見通しが堅調であることを示唆しています。全体として、ワールド・ゴールド・カウンシルのデータによれば、中央銀行や政府機関などの公的機関による需要は2024年に900トン程度になる可能性があります。これは2022年から2023年の水準よりわずかに低く、2010年代の年平均500トンを大幅に上回ります。
それ以上に懸念されるのは、中国の金現物需要の減少です。中国の輸入とスイスの輸出、そして上海金取引所と国際価格の差である中国の金プレミアムは、すべて中国の現物需要の低迷を示しています。この弱さの一因は金価格の高騰に関連しているかもしれませんが、中国国内の消費の全体的な弱さにも関連しています。アジアの堅調な現物需要は、金の長期的な見通しにおいて重要な要素ではありますが、今のところ、中国国内の需要の弱さが懸念材料になることはないと見ています。その理由として、まず、中国の金需要は通常、夏場にはマイナスになるという季節要因が挙げられます。次に、世界的な金利低下によって人民元安に対する懸念が後退しつつあることです。また、11月の米国大統領選の結果次第では、新しいトランプ政権下での中国製品への高関税率に対する懸念が、金需要を高める可能性があります。そして、今後数か月間は他のアジア地域からの現物需要が増加する可能性があるということです。特にインドでは、7月末に金の輸入税が15%から6%に引き下げられたことが要因となるかもしれません。
全体的には、夏の間に金の現物需要が多少悪化したものの、持続的に需要が減少するリスクは限定的と思われます。
世界的に不確実性が高まっている局面では、金は魅力を維持する可能性が高い
外貨準備高の保全性強化のために金を蓄積することに熱心な中央銀行の需要に加え、足元の旺盛な投機的需要の背景にある金価格の変動要因は、今後も金の魅力を高めることが予想されます。世界中の金利低下により、金に投資することによる機会コストは低下しています。一方で、米国の政治的・経済的不確実性が今後数か月間で後退すれば、金は苦境に立たされる可能性があります。米国経済が景気後退に陥らない場合には、FRBがかなり積極的な利下げを実施するという予想を反映した価格は見直される必要があるかもしれません。
*OTC(Over-the-Counter)取引:取引所に上場している商品ではなく、直接的に買い手と売り手が合意して行われる取引のことを指します。
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