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- 米国経済史の分岐点か
米ドルと米国債の異常な値動きが、トランプ政権の政策に対する明確な否定を示していると考えます。
最近の米ドルと米国債の売りの連動は、私たちにとって画期的な出来事でした。
利回りが上昇し、通貨安になる状況は新興国市場ではお馴染みのトレードですが、米国では極めて珍しいことです。
過去40年間で、4月10日(現地時間)の米国30年国債と米ドルの値動きを上回ったのは、プラザ合意の翌日を含めわずか3日しかありませんでした。
ピクテの見解では、これはトランプ政権のベッセント財務長官、ラトニック商務長官の「マスタープラン」に対する明確な否定です。
デレバレッジや裁定取引の解消など、背景を説明する一般的な要因もありますが、この規模の値動きと米国債入札の不調は、投資家がトランプ政権のシナリオにおける最大の矛盾、つまり米国の資本コストの上昇を伴わずに、米国の「ソフトパワー」が低下することはありえないということを指摘していると考えられます。
つまり、外国の米ドル余剰資金(これまでは自然に米国の金融資産に流入していた)を減らすための政策を実施しながら、同時に金融システムを武器化することで「安全な逃避先」としての地位を著しく損なうということはできません。
世界の資本が不確実性の高い政策を実施する国に殺到することを期待するのは現実的ではありません。これは、8兆米ドルの満期が到来する米国債の借り換えと約2兆米ドルの新規米国債発行を行わなければならない年においては、米国財務省にとって大きな問題となります。米国議会予算局は、利回りが毎年わずか0.1%ポイント上昇するだけで、2026年から2035年の期間、ベースライン予測よりも累積赤字は3,500億米ドル拡大すると予想しています。これにより、トランプ政権には、大規模な支出削減(政府効率化省(DOGE)の節約では影響が小さく、減税の延長では意味のある赤字削減は非現実的)から、新興国市場のように民営化(政府の土地、郵便事業、ファニーメイ・フレディーマック)までの選択肢しか残されていません。
我々は、これまで、「米国の例外主義」の大部分は経済的正統性の境界を押し広げることで成しえてきたと主張してきました。過去10年間では、過剰な景気刺激と経済を熱狂させる運営がそれにあたります。しかし、今回は少し度を越えたかもしれません。
この出来事から私たちが得た大きな教訓は2つあります。1つは、資本が国内に留まるインセンティブが高まっている(米国外のリスクプレミアムが低下)こと、もう1つは先進国が新興国のようになる(コロナ禍での財政・金融の無分別さ、そして今回の政策の確実性と貿易開放性の低下)ことです。
現時点で注目される資産は金、ユーロ、そして新興国資産です。
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