- Article Title
- 「実質利回り」から読み解く新興国通貨の見通し <萩野琢英 × 梅澤利文>
マーケットを知り尽くしたプロが多様なトピックを語り合う動画コンテンツ「Pictet Market Lounge」。萩野琢英とストラテジストの梅澤利文が、南アフリカ、ブラジル、トルコなどの新興国通貨について語りました。
以下は二人の対談の中で触れられたトピックです。
- 南アフリカランドは、すでに新型コロナウイルス感染拡大前の水準まで回復。新興国の中でも元気な通貨だと言える。
- 好調な中国からの需要が追い風となっているものの、ブラジルでは財政政策の持続力に課題があり、レアルは感染拡大前に比べ通貨安で停滞している。
- 2020年10月の大きな政策転換を経験したことで、トルコリラは変化の兆しを見せているが、その行方は従来通り政策の舵取りに左右される。
「実質利回り」=「債券利回り」-「物価上昇率」
金利水準は下がっているとは言え、新興国の利回りは先進国対比では表面上、魅力的な水準にある。また、投資に際しては考慮しておく必要がある、債券の利回りから物価上昇率を差し引いた「実質利回り」の水準も魅力的だと言える。
南アフリカ“ランド”に要注目!
政策金利3.5%-物価上昇率3%=実質金利プラス0.5%
南アフリカは、中央銀行が政策として打ち出している短期の金利が3.5%であるのに対して、物価上昇率は3%程度に抑えられており、実質金利はプラスの水準にある。
通貨ランドの動きが安定していることに加え、ラマポーザ政権の経済運営への信頼感から、かつては二桁台にあった物価上昇率も現在は落ち着いてきている。
南アランド(ザール)が強い!背景は魅力的な「実質利回り」
“資源価格上昇”が 追い風
新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、2020年前半にかけては対ドルで南アフリカランド安に動いていたが、足元では感染拡大が懸念される前の水準にまで戻ってきている。
全般的に新興国通貨は、2020年前半に通貨安の動きを見せていたが、中でも南アフリカランドは、高金利や資源高の恩恵を受けて回復している印象を受ける。
南アフリカ7-9月GDP成長率(前期比)プラス66%!
新型コロナ・ウイルスの感染拡大に伴い、南アフリカでは対策を厳格に行うために都市封鎖が行われた。その結果、GDPが大きく落ち込んだものの、都市封鎖の解除後は、その反動から回復の動きが見られている。
政策金利2%-物価上昇率4.56%=実質金利マイナス2.56%
南アフリカ同様に資源高の追い風を受けているブラジルはどうか。ブラジルでは、ボルソナロ大統領の方針で新型コロナ・ウイルス対策はあまり行われなかったこともあり、感染者数が増加し経済が停滞した。また、低所得者を中心に現金給付するという財政政策を取るために、必要以上に金利を抑える対応を行った。その結果、実質金利はマイナスの水準に落ち込んでいる。
求められるのは“物価上昇率に見合った金利”
ブラジルでは、政策金利を物価上昇率よりも低い水準に留めているが、今後は政策金利の引き上げが見込まれている。ブラジルレアルも2020年前半に対米ドルで通貨安となったが、南アフリカランドとは異なり通貨安のままで推移している。この背景の一つには、実質金利がマイナスとなっていることが影響していると考えられる。
ブラジルは内政に問題あり
資源国であるブラジルにとって、貿易相手国である中国が好調であることはプラス材料ではあるが、それを生かしきれていない原因は内政にあると考えられる。財政政策もあり、ブラジル経済も回復はしているが、このバラマキともいえる政策を今年度も続けられるのかという点が課題と言える。
「政策大転換」トルコ“リラ”の見通しは?
大きく変わった通貨がトルコリラ。2020年10月に、担当者を変更し政策を大きく転換。従来はマイナス圏にあった実質金利だが、足元では17%という高い政策金利(2020年8月は8.25%)を発表しており、実質金利はプラスに回復しトルコリラ高に転じている。こうした物価上昇率を意識した政策金利の誘導自体は大きな転換であったと言える一方、新型コロナ・ウイルスの影響で落ち込んだ経済が持ちこたえられるかといった不安要素はつきまとう。
バイデン政権を警戒する新興国
米国大統領の交代の影響を各国が見極めようとしている点も注視しておく必要がある。バイデン政権は、従来の政権に比べてグローバル経済と歩み寄ろうという姿勢を見せているので、各国は当面の間、米国を敵に回さずにオーソドックスな政策を敷いているように見受けられる。
実質金利プラス(利回り>物価上昇率)なら“リラ”に期待
経済にダメージは残るものの、トルコリラが上昇の兆しを見せている影響で、今後、トルコの物価上昇率は低下していくと見ている。それまで現状の政策金利を維持するようであれば、経済にも期待が持てるのではないか。
イールド・ハンティングは続く・・・
先進国の債券利回りが低下している中、相対的に利回りの高い新興国債券には引き続き投資家の関心の目は向かいやすい。特に高利回りだけでなく、その背景にある高い経済成長が実現していくならば、新興国は有望な投資先の一つになると考えられる。
ぜひ動画もご視聴ください。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。