ロボットのリース事業

次なるロボット革命-ユーザーのもとに届けるために

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重工業に欠かせない存在となりつつあるロボット。しかし、その導入には大規模な設備投資が伴います。リース事業という革命によって、その応用範囲の拡大に拍車がかかるかもしれません。






ロボット革命の次の段階では、技術的な面よりも、ロボットをどのように産業界に普及させるかということが重要になるでしょう。これまでは、企業がロボットを導入したい場合、メーカーから購入するために多額の投資が必要でした。しかし、今後数年間で、ロボットがサービス産業へと変化していく中、企業にとってロボットは雇うことができる存在に変わっていくと考えられます。実際、リース事業はロボット革命を引き起こす可能性があります。2018年のロボット市場の規模は320億米ドルでしたが、2025年には5,000億米ドル近くになると推定されています1

その結果、企業が自動化のために投じる資金は劇的に減少し、ロボットの普及はより一層進んでいくでしょう。小規模の企業でも、過大な財務リスクを負うことなく、より多くの事業の自動化を検討することができるようになります。

これを達成するうえで、メーカーとエンドユーザーの間を取り持つ、新しいタイプの仲介業者が誕生することになりそうです。そのためにはまず、資本市場からの多額の投資が必要です。



ベンチャーキャピタルのビジョン

ロボット業界において今後起こり得る大きな変化、そして業界の劇的な成長を促すと考えられる変化は、所有からリースへの転換です。現在メーカー側では、機械の潜在的な用途を十分に理解することよりも、機械を製造し販売することに重点が置かれがちです。そのため、リースやレンタルを行う仲介業者が新たに参入する余地があります。

メーカーは販売型のビジネスモデルからリース・レンタル型のビジネスモデルへの移行に必要な巨額の資金調達に踏み切れず、その変革は、ターンキーソリューション(即時利用可能なシステム)を提供する仲介業者によってもたらされることになるでしょう。ベンチャーキャピタルは、既にPoC(Proof of Concept:概念実証、試作を開発する前段階におけるコンセプトの実効性検証)を待っている段階にあります。PoCは今後3年間で目処が立つとみられており、そうなれば、投資家はこれらの企業に数十億米ドルの資金を投入する用意があります。

その影響の一つとして、個々のロボットメーカーの重要性が低下し、ユーザーは1つのメーカーにこだわることなく、複数のメーカーを自由に使い分けることができるようになると考えられます。しかし、同時に市場そのものは大きく成長し、多くのビジネスが生まれることになるでしょう。

なぜなら、より小規模なエンドユーザーまでもが、こうした技術的に非常に高度なソリューションを利用できるようになるからです。現在、ロボットを購入すると、少なくとも2〜3年の投資回収期間が必要です。しかし、リースを利用すれば、資金力のないエンドユーザーでもロボットを利用することができます。例えば、ある米国の金属プレス加工企業では、「平均的な熟練度の労働者の時給が20ドルであるのに対し、ロボットのリースは1時間あたり10ドル以下である」ことが明らかになりました2



テクノロジーはここにある

このような需要の多くは、あらかじめプログラムされた経路や手順に従う単純なロボットではなく、その場の環境に合わせて動き回ることができる自律移動型ロボットにあると思われます。一方、産業用ロボットや(安全柵などなしに)人と同じ空間で作業するコボット(協働ロボット)はすでに確立されていますが、市場としては限定的なものにとどまると見られています。

屋内型の自律型ロボットは、すでに進化を遂げています。これは、安全システムの改善や、弾性、適応力、位置推定技術(ローカライゼーション:ロボットが空間内の自分の位置を把握する能力)の向上によるものです。このようなロボットに腕をつけることで、自律的なマニピュレーション(物体操作)ができるようになる可能性があります。

スーパーマーケットなどのピッキング・配送事業では、自律型アームを持つロボットが注目されています。また、空の棚を撤去し、商品を再度補充した棚と交換できるようなシステムの再設計を検討しているところもあります。欧米のスーパーマーケットグループは、この取り組みの最先端を走っています。その他にも、出荷用パレットの積み上げと積み下ろしをロボットで行うことを検討しているベンチャー企業もあります。また、物流業界向けには、50~60台が倉庫内で連携して稼働する自動フォークリフトというものがあります。

その一方、屋外の自律型ロボットは、屋内のロボットと同じように信頼性と安全性を確保できるようになるまでには、位置推定技術の確立に時間がかかるため、まだかなり遅れをとっています。
とはいえ、農業の分野では、自動走行システムを備えたロボットトラクターがすでに稼働しているように、前進している企業もあります。また、医療や宅配の分野における可能性も広がっています。

重要なのは、機動性だけでなく、これらのロボットがさまざまな用途に適応できる柔軟性を持っていることです。このことは投資をより効率的で有用なものにします。Goldman Sachs社は、2020年に販売された12万台に対し、今後こうした自律型ロボットには700万台もの需要があると予測しています。
ある意味、未来はすでにここにあると言えるでしょう。つまり、自動化されたロボットの技術はほぼ準備が整っており、あとは実用化を待つのみです。そして、それには、最終的なユーザーのもとに届けるための新しい方法が求められているのです。

 

[1] UNCTAD Technology and Innovation Report 2021

[2] https://www.reuters.com/technology/rent-a-robot-silicon-valleys-new-answer-labor-shortage-smaller-us-factories-2021-08-26/




本ページは2022年2月にピクテ・アセット・マネジメントが作成した記事をピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集したものです。




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