もっと知りたいメガトレンド





持続可能な街づくりに向けた木材建築

世界の不動産緑化に果たす、木材の役割

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー

持続可能な都市拡大のための最も効果的な解決策の一つは、文字通り「木を使う」ことかもしれません。


毎日、世界の都市人口は20万人ずつ増えています。このペースで増え続ければ、都市で暮らす人の割合は、現在の割合50%強から、2050年には3分の2以上の割合になります1

そのため、環境に配慮した建設の大幅な拡大が必要です。

また、人類のカーボンフットプリントを大幅に拡大することにもなりかねません。都市はすでに、世界の二酸化炭素排出量とエネルギー使用量において約4分の3を占めています2。つまり、伝統的な建築技術や計画手法を用いると、気候変動に歯止めをかける努力を怠ってしまうことになる可能性があります。

しかし、伝統的な建築技術や計画手法を使用する必要はありません。

非営利団体であるThe Klosters Forum(以下TKF)のセッションに参加した建築家、都市計画家、グリーンビルディングのスタートアップ企業、材料科学者、投資家たちは、迫り来る都市の拡張を持続可能にする方法を紹介しました1

TKFの年次総会で議論された解決策は、技術的に高度なものばかりではありませんでした。最も効果的なものとして出席者が主張していたのは、文字通り「木を使う」ということです。

木材は、持続可能な建築材料として高い信頼性を持っています。歴史的に見ると、木材はその耐久性の高さから、アジア、ヨーロッパ、アメリカ大陸において、何世紀にもわたって建築に使用されてきました。

しかし、ここ数十年間では、耐久性が高いうえに腐りにくく大量生産が容易とされる、コンクリートや鉄が普及し、建築物における木材の割合は縮小傾向にあります。



Wood for good(社会をより良くする木材)

「持続可能な林業と地域経済を再生する木造建築のスケールアップ方法」と題したワークショップにて、TKFの参加者は、地球温暖化や環境破壊を食い止めるために、なぜ木材が建設業界で一斉に採用されるべきなのか、その理由を説明しました。

木材は、炭素のネット排出量、特に建築分野で削減が強く求められているエンボディド・カーボン(建設・解体される際に生じる内包CO2)を削減するための、コスト効率の良い魅力的な手段です。

また、木材は炭素の吸収源として機能し、生物多様性を回復させ、土壌の質を向上させることができます。

建築材料としての木材の環境への貢献を証明するデータには事欠きません。

例えば、柳の若木が成長してから5年間で75kgの乾燥バイオマスを形成した場合、140kgのCO2を吸収し、一般家庭の電気使用10日間分のCO2排出量を補うことができる、という研究結果があります4

木材は、伐採された後も炭素の大気中への排出を防ぎます。鉄やアルミニウムの代用品として使用される木材は、大気中への炭素排出量を、1立方メートルあたり平均0.9トン削減することができます5



社会通念を打ち抜く

フォーラムの参加者は、木材を使った建物の建設にインセンティブを与え、持続可能な林業と、地域経済を再生するための戦略を開発することが重要な課題であると合意しました。

木材は高層ビルには向かないという考え方が、一つの障壁になっています。しかし、新たな技術革新によって、そのような考え方はもはや正しくありません。木材を製材し、接着して積層した建築用パネルである直交集成板(Cross-Laminated Timber、以下CLT)は、建築家が木造の超高層ビルを建設できるようにするもので、人工木材におけるパイオニア的存在の一つです。

現在、ノルウェーにある高さ85mを超える世界一の木造建築物「Mjøstårnet」にはCLTが使用されており、スイスでも高さ100mの木造住宅棟が、2026年の完成を目指して現在計画されています。

CLTの市場は、現在の11億米ドルから2027年には世界全体で25億米ドルに成長すると予想されており、年間約15%の増加が見込まれています6

また、「木造建築は火災の危険性がある」という誤解もあります。木材にはもともと耐火性があり、木材の梁の外側の層が炭化しても、芯の部分を長い間ダメージから守ることができます。

さらに、CLTのような新しい技術では、より強く耐火性のある織り目を作ることができ、火災安全性の観点において無防備な鉄骨構造を凌駕することができるのです。

アムステルダムを拠点とし、画期的なプロジェクトを紹介する組織であるBuilt by Nature社は、都市におけるマスティンバー(大体積の木質集成製材)建築を促進するために、数百万ユーロの補助金を出しています。

TKFの参加者で同社のCEO、Amanda Sturgeon氏は、次のように述べています。「マスティンバーには、燃えやすいとか、森林破壊を助長するとか、様々な俗説があります。しかしそれらの俗説とは反対のことを述べる研究がたくさんあり、それらの研究を広めることで俗説を払拭することが重要です」

また、公共部門や自治体における技術的知識の不足も、木材利用の妨げとなっています。

この課題を克服するために、TKFフォーラムの参加者は以下の通り述べています、「業界がこの厳しいステークホルダー・グループと関わるサステナビリティ・ファシリテーターを育成すべきです」

規制や税制を変更することで、建物の環境性能に応じて報酬を与え、システム全体の変革を促すことも可能です。

心強いことに、いくつかの欧州政府は、国や自治体の「ネットゼロ」目標を達成するために、木材やその他の持続可能な材料の利用拡大を約束しています。

例えば、アムステルダム市は、2025年以降、すべての新規建設プロジェクトの20%に木材やその他のバイオベースの材料を使用することを義務づけています。

一方、フランス政府は、新しい建築物に使用する建設資材の50%を、木材または持続可能な代替品とすることを規定する規則を導入しました。

一般的に、ヨーロッパの建築物に使用される建材のうち、木材が占める割合はわずか20%となっています(商業用不動産では、平均してわずか5%)7

 

[1] UN World Urbanisation Prospects

[2] Seto et al. 2014; UN-Habitat, 2011

[3] Zuercher, Bern University

[4] US EPA

[5] European Confederation of Woodworking Industries

[6] Markets and Markets

[7] Tomorrow's Timber



  • 木材を丈夫で用途の広い素材に変える技術は、急速に発展しています。CLTとは、木材を製材し、接着して積層した建築用パネルであり、建築家が木造の超高層ビルを建設することを可能にするものです。CLTの市場は、現在の11億米ドルから2027年には25億米ドルに成長すると予想されており、これは年率約15%の増加となります。
  •  木材は、工業用や化学用等の用途でその存在感を増しています。バイオモノエチレングリコール(BioMEG)、リグニンベースの再生可能機能性フィラー、工業用砂糖など、木材を新しいバイオベースの材料や化学物質に変える技術を開発している企業があります。
  • さらに、木材投資家は、インフレ対策の観点から恩恵を受けることができます。このアセットクラスの企業は、歴史的にコストよりも早く価格を引き上げることができます。

TKFは非営利団体であり、世界で最も差し迫った環境問題に取り組むために、破壊的でインスピレーションに満ちた人たちのための中立的なプラットフォームを提供しています。その使命は、一流の思想家と実行者の成長するコミュニティを開発・育成し、分野横断的な交流およびコラボレーションを促進することによって、ポジティブな環境変化を加速させることです。

TKFは毎年、科学、ビジネス、政治、産業の各分野から著名な参加者をはじめ、NGO、クリエイター、サステナビリティの専門家を、中立的かつ慎重につなぐ場である、環境関連のイベントを開催しています。

TKFについての詳細は、こちらをご覧ください。

 

ピクテとTKFのパートナーシップについて

ピクテ・アセット・マネジメントは、世界の食料システムが生物多様性や社会全体に与える影響について注意を喚起するため、TKFと提携することを嬉しく思います。




本ページは2023年2月にピクテ・アセット・マネジメントが作成した記事をピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集したものです。



関連する投資テーマ



もっと知りたいメガトレンド|最新の記事


人類のアルツハイマー病との長い旅

食との闘い:環境に負荷を与える農業の苦境



関連するオンライン専用ファンド


投資リスク、手続き・手数料等については、ページ下部に表示されているファンド詳細ページのリンクからご確認ください。




未来を創る企業に投資する

iTrustオールメガトレンド




木材関連企業の株式に投資する

iTrustティンバー



お申込みにあたっては、交付目論見書等を必ずご確認の上、ご自身でご判断下さい。
投資リスク、手続き・手数料等については以下の各ファンド詳細ページの投資信託説明書(交付目論見書)をご確認ください。

iTrustオールメガトレンド

iTrustティンバー

投資リスク

基準価額の変動要因

  • ファンドは、実質的に株式等に投資しますので、ファンドの基準価額は、実質的に組入れている株式の価格変動等(外国証券には為替変動リスクもあります。)により変動し、下落する場合があります。
  • したがって、投資者の皆様の投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により、損失を被り、投資元本を割り込むことがあります。ファンドの運用による損益はすべて投資者の皆さまに帰属します。また、投資信託は預貯金と異なります。

株式投資リスク(価格変動リスク、信用リスク)

  • ファンドは、実質的に株式に投資しますので、ファンドの基準価額は、実質的に組入れている株式の価格変動の影響を受けます。
  • 株式の価格は、政治経済情勢、発行企業の業績・信用状況、市場の需給等を反映して変動し、短期的または長期的に大きく下落することがあります。

為替変動リスク

  • ファンドは、実質的に外貨建資産に投資するため、対円との為替変動リスクがあります。
  • 円高局面は基準価額の下落要因、円安局面は基準価額の上昇要因となります。


基準価額の変動要因は上記に限定されるものではありません。

投資信託に係る費用について

投資信託に係る費用について

(1)お申込時に直接ご負担いただく費用:ありません。

(2)ご解約時に直接ご負担いただく費用:ありません。

(3)投資信託の保有期間中に間接的にご負担いただく費用 :

  • 運用管理費用(信託報酬) :毎日、信託財産の純資産総額に年0.6776%(税抜0.616%)の率を乗じて得た額とします。
  • 実質的な負担(投資先ファンドの信託報酬を含む実質的な負担) :上限年率1.2676%(税込)

(4)その他費用・手数料等:

信託事務に要する諸費用(信託財産の純資産総額の年率0.055%(税抜0.05%)相当を上限とした額)が毎日計上されます。
その他、組入有価証券の売買委託手数料等、外国における資産の保管等に要する費用等が、信託財産から支払われます。(これらの費用等は運用状況等により変動するため、事前に料率・上限額等を記載することはできません)。また、投資先ファンドにおいて、信託財産に課される税金、弁護士への報酬、監査費用、有価証券等の売買に係る手数料等の費用が当該投資先ファンドの信託財産から支払われることがあります。詳しくは、目論見書、契約締結前交付書面等でご確認ください。

当該費用の合計額については、投資者の皆さまがファンドを保有される期間等に応じて異なりますので、表示することができません。


個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。


●当資料はピクテ・グループの海外拠点からの情報提供に基づき、ピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集し、作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら