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新型コロナウイルスの感染拡大でも米国株が最高値を更新したワケ
田中 純平
2020/02/14

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概要

連日報道される新型コロナウイルスの感染者拡大をよそに、S&P500指数は2月13日にザラ場で最高値を更新した。中国に おける工場の再稼動がたびたび延期され、小売やレストランの店舗は一時閉鎖、航空会社は中国行きを減便/休止を余儀なく されるなど、企業活動の停滞が懸念される中でも米国株の上昇が止まらなかった要因は「流動性」にある。



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新型コロナウイルス感染拡大のピークはいつか?

中国の保健当局のチームを率いる専門家によれば、新型 コロナウイルスによる感染拡大は2月中旬から下旬にかけて ピークを迎える可能性があると、一部メディアが2月12日に 報道した。米国株式市場でもすでに感染者数の伸び率鈍 化をきっかけに、今月から株を買い戻す動きが見られた。し かし、2月13日には湖北省の保健当局が新たな診断方法 を導入した結果、2月12日における新型コロナウイルスの感 染者数が新たに14,840件増えたと発表、想定以上に感染 が広がっている可能性が浮き彫りになった。

米国株の上昇を支えたのは「流動性」

新型コロナウイルスによる経済の下振れリスクが依然として残る中、米国株が最高値を更新する展開となった要因は、FRB(米国連邦準備制度理事会)による潤沢な流動性供給が挙げられる。パウエルFRB議長は否定するが、FRBは昨年10月から毎月約600億ドルの短期国債の買い入れを行っており、これが実質的にQE4(量的緩和第4弾)とマーケットでは認識された。さらに、感染者拡大の影響でFRBによる追加利下げもマーケットでは期待されており、流動性相場を後押しする材料になった。

流動性供給は過度なリスク・テイクの副作用も

FRBによる潤沢な流動性供給はS&P500指数の予想PER (株価収益率)を切りあげ、過度なリスク・テイク(リスクを積 極的に取る投資行動)を助長するおそれがある。それはつ まり、市場で大きなリスク・イベントが発生した際に、そのリス ク・テイクがすぐさま逆回転する可能性があることを同時に 意味する。新型コロナウイルスの感染拡大が早期に終息す ることを願うばかりだが、投資ではマーケットが想定していな いリスクについても考慮する必要がある。新型コロナウイルス の感染拡大によって想定以上に経済が下振れする可能性 が払拭されない以上、公益や不動産といった相対的にリス クの低いセクターに分散投資をし、ポートフォリオのリスクを 下げて資産運用を行うことが当面重要になるだろう。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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