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史上最高値を更新したS&P500に死角はないのか?
田中 純平
2024/12/12

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概要

S&P500指数は12月6日にザラ場で6099.97ポイントをつけ、史上最高値を更新する展開となった。右肩上がりの相場が続くS&P500指数だが、来年1月には3つの要因から波乱相場となる可能性があるため、用心するに越したことはないだろう。



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史上最高値を更新したS&P500指数

S&P500指数は12月6日にザラ場で6099.97ポイントをつけ、史上最高値を更新した(図表1)。米国株が好調な理由としては、①堅調な米国経済や企業業績の見通し、②トランプ次期米政権による減税や規制緩和への期待感、③FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ観測、などが挙げられる。

S&P500指数の市場予想PER(株価収益率、12カ月先)が22倍台と割高圏に達する中、バリュエーション以外のダウンサイド・リスクはないのだろうか?

1月は「リターン・リバーサル」が発生しやすい

好調な米国株に波乱があるとすれば、それは来年1月だろう。なぜなら、1月は「リターン・リバーサル」が発生しやすく、順張り銘柄(=モメンタム株)のパフォーマンスが毀損するリスクがあるからだ。

「リターン・リバーサル」とは、過去パフォーマンスが高かった銘柄群が、一転してパフォーマンスが低くなる現象だ(逆も然り)。MSCI米国モメンタム株指数とMSCI米国株指数の月間騰落率差(相対リターン)の平均値と標準偏差を月ごとに集計した結果が図表2だ。これを見ると、1月の相対リターンは平均値でマイナスになっていることが分かる。また、1月の相対リターンの標準偏差は他の月よりも高くなっていることから、相対リターンのブレも大きいことが確認できる。

つまり、右肩上がりの米国株でリターン・リバーサルが発生すれば、これまで相場を牽引してきたモメンタム株を中心にパフォーマンスが毀損するリスクがあることを意味する。

「1月効果」は消失?

米国株式市場では「1月効果」も近年消失している。「1月効果」とは株式市場における1月の月間騰落率が他の月よりも高くなる現象だ。明確な理論や根拠がなく、経験則として捉えられる「アノマリー」に分類される。

S&P500指数の平均月間騰落率を1月と1月以外で比較すると、1980年代から1990年代までは明確に「1月効果」が見られた。しかし、2000年代は完全に消失し、2010年代は復活したかに見えたが、今のところ2020年代は再び消失している(図表3)。1月の平均月間騰落率がマイナスになっているわけではないが、心許ない結果だ。

ドナルド・トランプ次期米大統領の就任日は2025年1月20日

さらに、来年1月20日にはいよいよトランプ次期米大統領が就任する。トランプ氏は関税の引き上げや移民の制限などを公約として掲げており、連邦議会の承認を必要としない大統領令によって、就任直後から公約を実行に移すと見られている。

IMF(国際通貨基金)は、トランプ次期政権の政策に近いシナリオに基づいて米GDP成長率への影響を試算している(図表4)。この分析では、トランプ減税の延長以外の政策は、総じてGDP成長率を押し下げる方向に働くと考えられている。 

このように1月は、①「リターン・リバーサル」が発生しやすく、②「1月効果」もあまり期待できない中、③トランプ次期米大統領の就任も控えている。これらの波乱要因が杞憂に終わる可能性はゼロではないが、用心するに越したことはないだろう。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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