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トランプ関税をうけたピクテの見方
2025/04/07

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概要

トランプ関税をうけ、株式、債券、為替の短期的な見通しは大きく変わってきたと考えます。



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トランプ政権による相互関税措置に加え、各国の対抗・報復措置による世界経済や物価への影響を踏まえると、株式、債券、為替の短期的な見通しは大きく変わってきたと考えます。

 

米国の輸入品に課される平均関税率は4.8%から約20%へと上昇し、100年以上ぶりの高水準となります。米国の通商相手国からの報復措置を考慮に入れなくても、経済成長とインフレへの影響は甚大です。

ピクテのエコノミストの試算では、これらの関税措置により、米国の今年の実質GDP成長率が最大2%ポイント下振れ、インフレ率は最大3%ポイント上昇する可能性があります。今後の関税を巡る交渉や景気の減速による金融緩和の余地はありますが、米国の景気後退確率は50%以上と、数ヵ月前の想定を大幅に上回っています。こうした影響は、他国にも及び、特に小国で貿易依存度の高いアジア諸国はさらに深刻な影響を受けるでしょう。

 

関税措置が完全に実施された場合、米国企業の利益は15%減少し、株価収益率(PER)も10%下落する可能性があります。実質金利の低下によって一部の影響の緩和は期待できますが、景気後退シナリオでは、S&P500種株価指数が4,500程度まで下落するリスクがあると考えています。

ただし、米国株式の割安感は2024年末に比べて改善しており、投資家のセンチメントも相当に悲観的なため、徐々に下値を固める動きになると考えられます。

 

一方、中国、英国、インドでは相対的な強さが見られます。中国は50%を超える高い関税率に直面しますが、デフレ環境と財政余力を背景に金融・財政両面での景気刺激策を講じる余地が大きいと考えられます。また、中国の対米輸出依存度は実はGDPの3%程度となっています。

インドは国内需要が強く、サービス輸出比率が高いため、株価の耐性が高いと見られます。一方、日本や欧州大陸諸国は貿易依存度が高いため、極めて脆弱な状況にあります。

英国は10%と比較的低い関税率が課されます。また、高い配当利回りと資源・防衛関連セクターの高い構成比率から、英国株は他国に比べて堅調に推移する可能性があります。

セクター別では、公益事業や通信が防衛的な特性、非製造業であること、割安な評価(バリュエーション)などから、相対的に良好なパフォーマンスが期待できます。一方、消費者向け一般消費財やハイテク株は、それぞれ消費者の購買力減少と高いバリュエーション、景気循環的な性質、報復関税のリスクから、最も脆弱と見られます。

 

債券市場では、国債が資金の逃避先として選好され、適正な評価水準と追加利下げ観測から良好なパフォーマンスが期待できます。市場は年内に米連邦準備制度理事会(FRB)による3回の利下げを織り込んでいます。インフレ連動債の投資妙味が高く、米国10年物の実質利回り1.8%は魅力的です。景気後退やスタグフレーション環境では実質金利の低下が見込まれるためです。一方、ハイイールド債は、スプレッドが小さく、景気減速に伴うデフォルト率の上昇が最も懸念されます。

 

金は実質金利の低下、米ドル安、経済の不確実性増大を背景に上昇余地があります。ただし、過去1年で既に40%高騰しており、割高感があることには留意が必要です。

関税発表を受けて米ドルは通常の経済理論に反して急落しました。米国の景気後退リスク高まりを受けて、FRBの利下げペースが加速する可能性があるからです。また、米ドルは当社モデルベースで15%程度の割高な評価となっています。なお、トランプ政権は貿易赤字削減のため、米ドル安を歓迎するでしょう。

金に加え、スイスフランは本物の避難通貨として、世界的な金利低下の恩恵を受けるでしょう。英ポンドも英国への比較的有利な関税措置から、支持材料となる可能性があると考えています。


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