■ 10月の投資環境

10月の世界株式市場は、MSCI世界株価指数（現地通貨ベース）で下落しました。月前半は米金融当局者の発言を受けて年内の追加利上げが見送られるとの観測などから米国長期金利が低下したことなどを背景に、上昇しました。しかし月半ば以降は、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が激化し地政学リスクの高まりが意識されたことに加え、住宅関連などの良好な米国の経済指標の発表やパウエル米連邦準備制度理事会（FRB）議長の発言などを受けて米国長期金利が上昇したこと、欧州や中国の景気先行き懸念、まちまちな企業決算などが重しとなり、株式市場は反落し、月間でも下落となりました。

業種別では、公益事業を除くすべての業種が下落しました。特にエネルギー、ヘルスケア、資本財・サービス、一般消費財・サービスなどの下落率が大きくなりました。一方、情報技術、生活必需品などは相対的に小幅な下落にとどまりました。

水関連企業（現地通貨ベース）の株価は、株式市場全体に比べて下げ幅が大きくなりました。
景気減速への懸念から資本財関連の銘柄が苦戦し、装置製造・エンジニアリングセクターのマイナス寄与が大きくなりました。特に個人消費の減速や在庫調整などから消費者向けやモニタリングの銘柄が軟調でした。サーモフィッシャーサイエンティフィックは分析機器部門が7-9月期も成長したにも関わらず、経営陣が今期及び来期の見通しを引き下げたことから株価が下落しました。当面の業績のボトムが2024年の後半にずれ込んだと捉えられました。ファーガソンはこれまでの堅調な株価動向から利益確定の売りに押されました。環境マネジメント・サービスセクターでは、ウエイスト・マネジメントが大きく反発しました。7-9月期の業績発表において、堅調な価格動向を背景に営業レバレッジと利益率の改善が示されたことが好感されました。上下水道サービス・セクターは総じて堅調な展開となりました。セバーン・トレントは次回の水道料金の算定のための当局への事業計画において、2030年に向けて水道ネットワークの整備により順調に資産が拡大していくことや、環境問題への取り組みを示しました。これをうけて株価は売られすぎとみられる状況から反転上昇しました。

■ 今後の見通し

見通しについては、地政学リスクやインフレの高まりによりグローバル景気の先行きに不透明感があります。世界各国の購買担当者景気指数（PMI）は景況感の分かれ目とされる50を越えられず、労働コストやエネルギー・コストの上昇による最近のインフレ懸念は、短期的には金利引き下げを遅らせる可能性があります。水関連企業についてみると、米国の財政支出の増加が受注増加に反映され始めており、米国を拠点とする多くの上下水道インフラ関連企業や多角経営企業の収益を下支えすると予想しています。
水関連インフラへの投資は必要不可欠であり、中長期的に見ると、世界的に事業展開を行う水関連銘柄のファンダメンタルズは堅調であると考えます。温暖化の影響から世界的な気候変動によって引き起こされる干ばつや洪水の問題なども、水関連インフラへの投資を呼び起こしています。中長期的に水関連銘柄は引き続き魅力的な投資対象であると考えます。