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中国の3月PMIの底堅さの背景と、今後の注目点
梅澤 利文
2025/04/02

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概要

中国の3月PMIは製造業、非製造業共に50を上回った。中国当局の景気刺激策がセンチメントを下支えしたが、回復の持続性に不安もある。春節連休中の消費を見ると、補助金の効果などもあり堅調だった。しかし、PMIの雇用指数は依然として低水準で、消費の自律的な回復には距離がありそうだ。堅調だった輸出も駆け込み輸出の反動が予想される中、トランプ政権の関税政策の出方に注視が必要だ、




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中国の3月PMIは製造業、非製造業とも市場予想を上回った

中国国家統計局が3月31日に発表した3月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.5と、市場予想の50.4、2月の50.2を上回った。中国の製造業PMIは2ヵ月連続で拡大・縮小の境目である50を上回った(図表1参照)。

同時に発表された3月の非製造業PMIは50.8と、市場予想の50.6、2月の50.4を上回った。構成指数でみると、サービス業PMIは3月が50.3と、前月の50.0を上回った。別の構成指数である建設業PMIは53.4と、前月の52.7を上回った。

4月1日に中国のメディアの財新とS&Pグローバルがまとめた3月の製造業PMIは51.2と、市場予想の50.6、2月の50.8を上回った。

3月の製造業、非製造業PMIの構成指数は注意点を浮き彫りにしている

米トランプ政権の関税政策の主要な対象国と見られる中国だが、センチメント(マインド)を示唆するPMIは全般に底堅かった。中国政府の景気刺激策などがマインドを支えたことで安定化がみられる。しかし、回復の持続性を描き切れない面もある。

中国国家統計局が発表した製造業PMIの主な構成指数の内容を振り返る(図表2参照)。「生産」や、今後の動向を示唆する「新規受注」は3月が各々52.6、51.8と前月を上回り、水準としても50を上回り堅調だ。1月末から2月月初の春節(旧正月)に伴う大型連休が終わり、生産活動の再開が「生産」を押し上げたようだ。また、当局の設備更新促進策が「新規受注」等を下支えしたようだ。

「輸出向新規受注」は3月49.0と拡大・縮小の目安である50を小幅下回るが、1月からは回復傾向だ。この背景は、中国では昨年末から関税引き上げ前の駆け込み輸出(米国の輸入)が増えたためと思われる。なお、この輸出の急回復は、中小企業や輸出型企業を多く調査対象とする財新製造業PMIにおいて、3月が51.2と、1月の50.1から大幅に改善していることとも整合的だ。

一方で、雇用PMIは3月が48.2と半年前と変化はない。生産などに回復感が戻っても、雇用を積極的に増やすには至っていないように見える。

次に中国の非製造業PMIの主な構成指数を見ると、先行きを示唆する「新規受注」は3月が46.6と伸び悩んだ。「販売価格」は春節休暇後は鈍化傾向で持続性に乏しい。一方で「新規輸出」は回復傾向だが、製造業と同じく、関税前の駆け込み輸出が押し上げ要因とみられる。

なお、非製造業PMIが50を上回ったのはサプライヤー納期などが50を超えていたためで「雇用」も含めたに主要な構成指数は50を下回っており、力強さに欠ける印象だ。

中国当局には当面、景気刺激策が求められそうだ

トランプ関税への懸念はあるものの、中国当局の消費財買い替え促進策や、公共投資による建設業の改善、堅調な輸出などがセンチメントを改善し3月のPMIは底堅かった。ただし、次の点を見ると消費回復の持続性には疑問も残る。

春節連休中の消費について、中国国家税務総局の消費動向調査によると、1日当たりの売上高は前年比で10.8%増(内訳は商品消費が9.9%増、サービス消費は12.3%増)と堅調だった。家電製品やオーディオ機器などが急増した。しかしこの背景はあくまで補助金の対象であったためだろう。

サービス消費の回復も当局頼りの面が一部に見られた。春節連休中の映画興行収入は過去最高を記録した。ヒット作があったという面もあるが、背景の一つに、地方政府が映画観賞券や割引券を配ったことも要因と思われるからだ。

底堅かった中国の3月PMI(製造業、非製造業共に)だが、雇用指数の回復は鈍い。中国の(調査)失業率は2月が5.4%と2年ぶりの水準と実際のデータも悪化し始めている。若年層に絞れば1月は16.1%と依然高水準だ。自律的な消費回復という姿には距離があるように思われる。

堅調だった輸出も、関税引き上げ前の駆け込み輸出の反動は想定される。その後の輸出動向はトランプ政権の中国に対する関税政策に大きく左右されそうだ。

中国の製造業は一部の分野で世界的なシェアを取り戻している。中国企業DeepSeekが提供した生成AIアプリの登場は衝撃的であったがこれだけではない。それ以外にも世界を席巻する分野がある。中国の電気自動車の生産シェアは24年に約6割と過半を占めた。また、太陽光パネル、産業用ロボット、リチウム電池などの分野でもシェアを確保している。場合によっては、これらの分野が今後も中国の輸出を下支えする事も考えられる。もっとも、今後の展開でわからないのはトランプ政権の対応だ。中国の輸出に対しどのように関税政策を適用するかは不確実だ。中国経済の今後の展開を占ううえで関税政策が重要なカギとなりそうだ。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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