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新興国投資編(6)新興国株式市場のインデックスと注意しておきたいポイント
2020/07/16

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概要

今回は、新興国株式投資においてよく使用されるインデックスについて、ご紹介します。また、インデックスの注意点も併せてご説明します。




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新興国株式市場のインデックスについて

新興国株式市場の動きを表すインデックスには、様々な種類がありますが、今回は、新興国株式市場の代表的な指数である、MSCI エマージング・マーケット指数について、少し詳しくご説明します。

 

 

MSCIエマージング・マーケット指数とは

MSCIエマージング・マーケット指数とは全世界の新興国(エマージング)市場をカバーしている最も代表的な株価指数です。世界的な指数算出会社であるMSCI社(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が算出しています。2020年6月末現在、新興国26ヵ国の大型株と中型株を対象として、1,385銘柄で構成されています。この指数は、1988年から算出されており、構成国は、当初10ヵ国からスタートしています。

図表1にあります通り、この30年余りの間に、構成国数が増えて、顔ぶれが大きく変わっています。現在はMSCI社の分類で先進国となっているポルトガルが、当初構成国に入っているのがご確認いただけます。なお、先進国と新興国市場の分類は、一人当たりGDP、外国人に対する投資規制の有無、市場環境の整備状況、為替回送金制限の有無等を基準に、MSCI社が判断して分類しています。

 

 

構成国比率と保有上位10銘柄

図表2のMSCIエマージング・マーケット指数の構成国比率を見てみると、上位5ヵ国(中国、台湾、韓国、インド、ブラジル)で、75%以上を占めており、特に中国の構成比率が約4割と大きくなっているのが確認できます。以前は、韓国や台湾の比率が高かったので、大きく様変わりしています。

また、図表3の保有上位10銘柄をご覧いただくと、ここでも、中国企業が10社中、6社と多くなっているのが、特徴としてあげられます。

中国企業については、以前は、外国人が自由にアクセスできる香港市場に上場されている香港ドル建てのH株が中心でしたが、中国本土上場の人民元建てのA株も、2018年よりMSCIエマージング・マーケット指数に採用されました。

 

 

(ご参考)MSCI フロンティア・マーケット指数

MSCI社は、先進国・エマージングの分類に属さない国の株式について、いくつかの指数を算出しています。そのうちの一つに、MSCI フロンティア・マーケット指数があります。

こちらは、エマージング・マーケット指数には採用されていない新興国のうち外国人による投資が可能と考えられる国の株式によって構成されています。2007年12月より算出されており、2020年6月末現在、28ヵ国(図表4)、89銘柄で構成されています。

エマージング・マーケット指数への組み入れを目指している国々ですが、経済成長の伸びしろからくる期待リターンをイメージして、こちらをベンチマークにしている投資信託の商品も登場しています。

※クウェートは、2020年11月のエマージング・マーケット指数への分類変更が予定されています。

 

 

時価総額加重インデックスについて

今回ご紹介したMSCI エマージング・マーケット指数をはじめ、世界には、時価総額加重インデックスが多数あります。その他には、株価平均型インデックスや、財務指標や株価のボラティリティなど特定の指標に基づき構成されたスマートベータインデックスといったインデックスもありますが、圧倒的に多いのが時価総額加重インデックスです。

それでは、時価総額加重インデックスとは、どういったものでしょうか。まず、時価総額について、おさらいしてみましょう。時価総額は株価に、その企業の発行済みの株式数を掛けあわせた金額のことをいいます。株価というのは、言ってみれば企業を買う単価です。時価とはその株価の現在の価格ですから、時価総額というのは、現在の株価で発行済み株式全てを買う場合の合計額、その会社をまるまる買い取るために必要な金額、ということになります。

時価総額加重インデックスとは、インデックスを構成する各社の時価総額で加重平均して算出されたインデックスのことです。加重平均というのは重みを考慮に入れた平均ということです。たとえば時価総額が700億円のA社、200億円のB社、100億円のC社で構成される市場があったとします。A社の株式が-10%、B社が+10%、C社が+30%だったときに(-10%+10%+30%)÷3=平均10%で、市場全体をならしてみると10%上昇、と考えるのは3社の重みを考慮に入れず等しく扱っています。市場の7割を占めるA社は1割のC社の7倍として扱い(-10%×70%)+(10%×20%)+(30%×10%)=平均-2%の下落、と考えるのが加重平均です。時価総額加重平均インデックスの身近な例としては、日本株式のTOPIXや米国株式のS&P500などがあります。

 

 

注意しておきたいポイント

時価総額加重インデックスは、非常にわかりやすい仕組みですが、一方で、注意しておきたいポイントがありますので、以下でご説明します。

時価総額は株価が上昇すると増加し株価が下落すると減少します。そうしますと、株価が上昇し時価総額が増加した銘柄の比率がどんどん高まっていくことになります。株価は本源的な価値が高まらずとも割高化しながら上昇することもありますが、割高化が進んで株価が上昇した銘柄の比率がどんどん高まっていってしまう可能性があります。また、時価総額の大きい、大型株偏重の傾向になります。

 

 

パッシブ運用の拡大

近年、インデックスとの連動を目指すパッシブ運用の資産残高が急増しています。背景としては、いくつかありますが、主なものとして、①中央銀行によるETFの買い入れ、②相対的にコストが安い、③インデックスのパフォーマンスを上回るアクティブ運用を探すのが難しい、などが挙げられます。

ただ、インデックス運用にも問題点はあります。まず第一に、配当込みのトータル・リターン指数を上回るパフォーマンスは期待できないという点が挙げられます。インデックス運用で期待できるリターンはトータル・リターン指数からコストを差し引いたリターンであり、トータル・リターン指数を上回る投資成果を得ることはできません。二番目に、投資しようとする市場で、どの指数に連動した投資成果を目指すファンドを選択するのか、という点は残り、指数の選択によって投資成果に差が生じるという点です。三番目は、指数が存在しないような投資、指数で表せないような投資、インデックス運用が行えないような投資に制限がかかってしまうという点です。四番目は、指数に連動した投資成果を目指すための運用方法が、それを逆手にとったような取引をされる可能性をはらんでいるという点です。例えば、指数の銘柄入れ替えや構成見直しのタイミングで、それがあらかじめ分かっている場合、先回り投資をして利益を得ることが、市場や指数によっては可能になることがあります。そうした取引によって得られる利益の生じる相手方はインデックス運用を行う投資家ということになります。

また、対象となる指数が時価総額加重平均指数である場合には、時価総額の大きな企業には企業業績の良し悪しにかかわらず大きな資金が振り向けられ、それによって株価が上昇すれば更に組み入れ比率が高まり、財務状態が悪く倒産懸念があっても買われてしまう、ESG【環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)】の観点から不適格な企業でも買われてしまう、といった問題もあります。近年のインデックス運用の急拡大では特にガバナンス面での懸念が高まってきています。これは、例えばスーパーの棚の商品を毎日、どんなものがどんな値段で売られていても全部買っていくという客がいる場合、スーパーの店主がどんなものをどんな値段で売っていくか、という問題と似た問題です。

もちろん、市場全体に投資するパッシブ運用や、追随目標として多数採用されている時価総額加重インデックスを否定するものではありませんが、こういった特性があることをご認識して、利用することが必要です。



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