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世界株式投資戦略 金なのか?金鉱山株式なのか?
田中 純平
2019/09/11

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概要

世界的に金融緩和モードが広がる中、各国通貨が対円で下落するなど「通貨安戦争」の様相を呈してきた。安全通貨として相対的に円が買われる中、それ以上に買いを集めているのが金(ゴールド)だ。仮に今後も金価格が堅調に推移した場合、投資対象としてより注目を集めるのは実物資産の金なのか?それとも金を採掘する金鉱山会社の株式なのか?



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歴史的に資産価値が認められてきた金

金(ゴールド)は古代文明の時代からその資産価値が認知されてきた資産であり、おそらく今後もその価値は不変であろう。無論、金価格は短期的に上昇も下落もするリスク資産であることに変わりはないが、何十年単位という長期で捉えればその資産価値は上がり続けてきた。金価格が名目上、上昇し続けてきた背景のひとつには通貨価値の下落が挙げられる。金は主に米ドル建てで取引されるが、その米ドルは歴史上、リスクイベント(金本位制離脱、経済的危機など)を経るたびにその価値が低下してきた。一国(≒中央銀行)の裁量次第で通貨供給量を増やせる通貨とは違い、金は有限な資源である。USGS(米国地質調査所)によれば埋蔵量は約57,000トン、それに対し金生産量は毎年約3,000トンであるため、およそ19年で金を生産し尽す計算になる。金価格がさらに上昇すれば埋蔵量も幾分増えることが予想されるものの、通貨のように無尽蔵なものではない。

 

世界的に金融緩和政策によって通貨安戦争が起こりつつある

米中貿易戦争の激化によって世界中で金融緩和政策が行われはじめている。一般的に金融緩和は通貨供給量の増加を意味するものであり、すなわち通貨価値の低下も意味する。マイナス利回り債の残高が8月に一時17兆ドルを超えたように、歴史的なマイナス金利環境下では債券での運用もままならないため、相対的な価値を維持しやすい金が長期的な観点から選好されても不思議ではない。

 

実物資産の金か?それとも有価証券の金鉱山株式か?

金鉱山会社は営業レバレッジや財務レバレッジを駆使することによって、金価格以上に利益を増やすことができる。そのため、金価格が上昇する局面では実物資産の金よりも優位と考えられてきた。しかし、過去10年間の上昇局面では明らかに金鉱山株式が劣後している。これは実物資産の金における主なリスクが金価格リスクと為替変動リスクであるのに対し、金鉱山株式にはそれ以外にも様々なリスクを内包しておりボラティリティも高いからだ(図表3参照)。長期目線で金に注目するのであれば実物資産に軍配が上がる。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当、新興国株式にも精通する。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場をカバー。レポートや動画、セミナーやメディアを通じて投資戦略等の情報発信を行う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBCに出演中。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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