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3ヶ月で大幅高になった株式の共通点
田中 純平
2021/01/25

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概要

過去3ヶ月間のS&P500指数は、①米大統領選に関連する不透明感の後退に加え、②巨額の財政政策/緩和的な金融政策への期待、③有効性の高い新型コロナワクチンの緊急使用許可、といった3つの好材料に支えられ、史上最高値を更新しながらもジリ高の展開となっている。しかし、S&P500指数の構成銘柄の動きに注目すると、「ある変化」が生じていることが分かる。



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リスクが高い銘柄ほど、リターンが高くなる傾向に

図表1はS&P500指数構成銘柄の過去3ヶ月におけるリスク(年率)とリターンを散布図で示したものだ。グラフ上の回帰直線が右肩上がりになっていることからも分かるとおり、過去3ヶ月間ではリスク(変動性)が高い銘柄ほど、リターンが高くなる傾向が見られた(リスクが高くなればリターンも高くなると認識されているケースは多いと思うが、実際は教科書通りに当てはまるケースはまれであり、むしろ2010年代は最小分散(低リスク型)戦略のパフォーマンスのほうが良好だった)。

このS&P500指数構成銘柄の中で、リスクとリターンがそれぞれ高かった銘柄例として挙げられるのはオキシデンタル(石油・ガス)とテスラ(電気自動車)だ。オキシデンタルは、経済の正常化期待やサウジの原油減産を背景に、原油価格が上昇したことなどが大幅高のきっかけとなった。また、テスラについては、グローバルな自動車の電化の流れや黒字転換などが大きなけん引役となっている。

 一方、リスクとリターンがそれぞれ低かった銘柄例として挙げられるのはP&G(生活必需品)とベライゾン(通信)だ。この2銘柄についてはそもそも業績が比較的安定しており、景気回復による恩恵を相対的に受けづらいため、株価が軟調に推移したと考えられる。

 

ハイリスク・ハイリターンの銘柄は「諸刃の剣」

巨額の財政支出と緩和的な金融政策への期待、そして新型コロナワクチンの接種開始による経済の正常化期待がある限りにおいては、リスクの高い銘柄ほどリターンが出やすい環境が続く可能性はある。しかし、リスクが高いということは、(タイミングが悪ければ)それだけ大きなマイナスのリターンになる可能性も高いことを意味するため、ハイリスク・ハイリターンの銘柄は「諸刃の剣」であることを常に認識する必要がある。

さらに、中長期になればなるほど、株式は企業業績の成長性といった個別の「ファンダメンタルズ」が株価に反映されやすくなる。そのため、中長期的な成長性が期待できるかどうかも重要な見極めポイントになる。ハイリスク・ハイリターンの銘柄は、あくまで分散投資のためのひとつのツールとして、ポートフォリオの一部にとどめておくのが無難だろう。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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