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「1月効果」に信頼性はあるのか?
田中 純平
2022/01/04

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概要

「1月効果」とは、株式市場における1月のリターン(収益率)が他の月よりも高くなりやすい現象を指し、明確な理論や根拠が無く、経験則として捉えられる「アノマリー」に分類される。毎年、年末年始になるとこの「1月効果」に期待したトレード(株式売買)や市場解説を耳にすることがあるが、はたして本当に「1月効果」は存在するのだろうか?



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「1月効果」とは? 

「1月効果」とは、株式市場における1月のリターン(収益率)が他の月よりも高くなりやすい現象を指し、明確な理論や根拠が無く、経験則として捉えられる「アノマリー」に分類される。

一般的に「1月効果」は米国中小型株に見られる現象として広く認識されている。よく聞かれる解説としては、①個人投資家は中小型株を中心に投資しており、②その個人投資家が含み損を抱えた中小型株を節税対策のために12月にいったん売却し、③年明け(1月)になってから再び買い戻す動きが活発になるため、特に1月は中小型株が上がりやすい、という理屈だ。

また、機関投資家も①12月末のファンド決算前にパフォーマンスの悪い株式を売却し、②ファンド決算後にその株式を買い戻す「ウィンドードレッシング(お化粧買い)」を行うため「1月効果」が発生しやすい、といった解説もある(この場合は必ずしも中小型株に限定されるものではない)。

毎年、年末年始になるとこの「1月効果」に期待したトレード(株式売買)や市場解説をよく耳にするが、はたして本当に「1月効果」は存在するのだろうか?

「1月効果」はほぼ消失した可能性がある

1月のリターンが1月以外のリターンよりも高いかどうかを検証するため、米国株の平均月次リターンを計算してみたのが図表1~3だ。S&P500指数における月次リターンを1960年代から計測してみると、たしかに全期間でみれば1月の平均月次リターンが1月以外の平均月次リターンよりも高いことが見て取れる(図表1)。

しかし、「1月効果」が見られたのは1990年代までであり、2000年代には大きなマイナスのリターンを計上している。2010年代には再び1月の平均月次リターンが高くなっているがその差はわずかであり、2020年代(20年~21年)は今のところマイナスのリターンだ。

また、S&P500指数よりも時価総額が小さいS&P400(中型株)指数では「1月効果」は2010年代のみ見られ、さらに時価総額が小さいS&P600(小型株)指数では「1月効果」は全く見られなかった(図表2、3) (注:データの関係上、 S&P400指数における1990年代は91年~99年、S&P600指数における1990年代は94年~99年のみ)。「1月効果」はほぼ消失した可能性があるので、安易に「アノマリー」に期待するのは禁物だ。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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