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- 日米の連携で日本の半導体は強くなるか?
5月23日の日米首脳会談後に発表された共同声明では、両国による技術面での競争優位性、サプライチェーンの強靭性確保が強調された。中国を意識していることは明らかだ。その核となる半導体は、両国に加え韓国、台湾、欧州が連携、西側諸国で国際的なサプライチェーンを握る戦略と言える。ただし、日本の問題は、その一翼を担えるメーカーが見当たらないことだろう。
米中新覇権戦争:米ソによる東西冷戦とは違う
日米首脳による共同声明では、「自由で開かれたインド太平洋」を推進し、東アジアの安全保障を維持するため、日米同盟の強化を図るとの方針が示された。その背景は、中国の軍事、経済両面における東アジアでのプレゼンス拡大だ。
ただし、日米両国は貿易の対象として中国を排除しているわけではない。米国の対中貿易額は、ドナルド・トランプ前大統領時代の後半に一時減少した(図表1)。米国による対中制裁関税の発動に加え、新型コロナの影響が大きかったと言えよう。しかし、2020年夏以降は輸出入ともに拡大に転じ、足下、米国の対中輸出は過去最高の水準になっている。
リーマンショック前後から中国の経済成長が加速、新型コロナ禍を機に米中両国が将来の覇権を争い、国際社会は新たな分断の時代に突入した。ただし、かつての米ソ冷戦時代との大きな違いは、経済の相互依存関係に他ならない。安全保障で対立を深め、先端技術の開発で凌ぎを削る両陣営だが、経済交流を断てば、どちらにとってもデメリットが大きいことは十分に共有されているのではないか。
米国の半導体戦略:日本に裨益するのか?
ジョー・バイデン大統領は、半導体の競争優位に強い拘りを示してきた。それは、経済面だけでなく、安全保障においても影響が極めて大きいからだろう。
ただし、バイデン大統領がトランプ前大統領と大きく異なるのは、米国主導による半導体のサプライチェーンを構成する上で、日本、韓国、台湾、欧州など西側諸国・地域の役割分担を重視している点だ。巨額の投資を要する産業だけに、米国と謂えども一国で全てを担うのは難しい。例えば熊本に建設されるTSMCの新工場は、先端半導体を製造すると発表された。最先端は米国が手掛ける一方、その次のレベルは棲み分けをすることで日米が合意したと見られる。
また、西側でサプライチェーンを握る戦略とは言え、それは中国に半導体を売らないことを意味しない。むしろ、需要の旺盛な中国に先端以下の半導体を供給し、利益の確保を図ると同時に、中国の半導体製造に関するインセンティブを低下させることがこの戦略の趣旨だろう。その場合、対中輸出を拡大してきた日本の半導体製造装置に関しては、何等かの輸出規制が発動される可能性がある(図表2)。
また、この米国の戦略における日本の課題は、半導体メーカーが長期停滞を脱っしていないことだ。TSMCの熊本工場が稼働、先端製品を供給するとしても、このままだと日本政府は資金提供を期待される一方、関連産業がさらに存在感を失う可能性も否定はできない。
米国としては、半導体不足を補い、中国による製造技術の獲得を抑制する上で、TSMCが熊本に製造拠点を持つのは歓迎すべき状況だろう。もっとも、それが日本経済に裨益するとは限らないのが現実ではないか。
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