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欧州不動産市場:希少な利回りの源泉
2020/01/21

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概要

不動産市場が、魅力的な利回りを追求する長期の投資家に、豊富な投資機会を提供し続けられる理由とは何でしょうか?



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「トリュフ」を探そうなどとは思わないことです。プラスの実質利回りを提供する投資の機会を見つけるのは、いまや至難の業だからです。このような状況下、欧州の不動産は、数少ない有力な市場の一つとなる可能性があります。

世界の主要な中央銀行の多くが金融緩和政策を継続する環境では、特に年金基金等の、相対的に長期の債務を持つ機関投資家の間で、不動産投資の魅力が損なわれる可能性は低いと考えます。

ただし、人気は市場価格に反映され、投資が増えるほど、バブルが形成される可能性も高まります。

図表1: 旺盛な不動産需要
世界の不動産への直接投資金額(百万米ドル)
期間:2007年1月1日~2019年10月31日

出所:ピクテ・アセット・マネジメント

 

住宅需要の変遷

不動産市場に影響を及ぼす構造的な要因を理解することが重要です。

一例を挙げると、社会が高齢化しつつあることです。欧州連合(EU)では、65歳以上の人口全体に占める比率が10年前の6分の1から5分の1に増加し、2100年までには3分の1に迫るものと予想されています。

単身世帯も急増しており、2015年には、欧州連合統計局(ユーロスタット)が統計を取り始めてから初めて、二人世帯を上回りました。手ごろなサイズの住居の取得がますます困難となり、2階建てで寝室が3つの典型的な家族用の一軒家は、多くの場合、もはや現実的でも魅力的でもなくなっています。

図表2: 単身世帯の増加
EU28ヵ国の単身世帯比率(%)

出所:ピクテ・アセット・マネジメント

高齢者向けの住宅や小さな住宅に対する需要が増加の一途をたどる中、共有スペースを備えたサービス付きの共同住宅が増え続けており、こうした傾向が不動産市場に大きな影響を及ぼしています。


住居用不動産投資を検討する際には、不動産市場に対する規制の動向を理解することも重要です。最近ベルリンで、約150万戸の住宅の家賃を向こう5年間凍結する法律が施行されましたが、デンマークや英国等、ドイツ以外の欧州各国でも同様の施策が議論されています。

商業用不動産の先行きも、取り立てて明るいというわけではありません。他のセクター同様、構造的変化に直面しつつあるからです。実際の店舗を構えた小売店は、向こう一年、英国市場を中心に大きな圧力にさらされる公算が高いと考えます。オンライン・ショッピングが勢いを増すにつれて、英国以外の地域でも同様の状況が予想されます。

英国の都市の目抜き通りに店舗を構え、2019年中に家賃の値下げ交渉に成功した小売店は枚挙に暇がありません。このような環境で店舗物件への投資を正当化するには、特殊な状況にある極めて割安な物件を見つけることが必要です。

一方、欧州の多くの国や都市ではオフィス賃貸料が、2020年の年間を通じて上昇する公算が高いと考えます。これは、オフィスの入居率が高止まりしているためです。こうした状況は、南欧の空や海の玄関口に位置する都市に特に顕著に見られます。

とはいえ、景気循環の最も後期の局面にある現在、割安感があるように見受けられる多くの地域には、総じてそれなりの理由があります。例えば、ポルトガルの首都リスボンの不動産市場は、欧州域内の主要都市の不動産市場よりも高い価値を提供する市場として言及されることが多いですが、流動性リスクを勘案すると妥当な価格設定のように思われます。

英国も、欧州諸国との比較では割安に見えますが、ここでも、相対的に低い不動産価格が相対的に高いリスクを反映していることに注意が必要です。昨年12月の総選挙における保守党の圧勝後も、英国のEU離脱(ブレグジット)を巡る不確実性が払拭されない状況が続いているからです。EUとの貿易交渉は、英国政府が目標とする一年間の期限を超えて継続する可能性があります。とはいえ、英国に魅力的な投資の機会がないというわけではありません。投資の機会は豊富でも、投資の開始時点を極めて慎重に判断することが必要だということです。


2020年はミクロ経済の視点から投資の機会が発掘できると考えます。マクロ経済の観点から特定地域の市場への投資を決めるのではなく、個別物件の利点を考慮した投資に徹するべきだと考えます。


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