Article Title
中央銀行はなぜ金を保有するのか?
2024/07/08

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

・中央銀行が金を保有する理由の多くは個人投資家にも当てはまる



Article Body Text

金の重要な資産としての認識が高まっている

近年、金価格を下支えする要因として中央銀行が外貨準備として、金を購入する動きが注目されています。外貨準備は為替介入に使用される資金であるほか、他国に対して外貨建て債務の返済が困難になった場合等に使用されるなど、一般的に外貨準備の保有は国や通貨に対する信頼性や、金融システムの安定化などに重要な役割を果たすと考えられます。

その外貨準備として金を保有する理由について、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が世界の主要な中央銀行を対象として2023年と2024年に実施した調査の結果をまとめたものが図表1です。これを見ると、世界的に物価が高止まりする中で「長期的な価値の保存/インフレヘッジ」を金保有の理由として挙げた中央銀行の割合が最も高く、また前年よりも増加しました。次いで「危機的状況下でのパフォーマンス」や「効果的なポートフォリオ分散」の比率も増加し、世界経済や金融市場の先行きに対する警戒感や、ポートフォリオのリスク抑制を図る必要性の高まりが意識されていることが示唆されています。

※中央銀行の金保有の理由について「非常に関連性が高い」と「やや関連性が高い 」と回答した割合を合計したものです。
出所:ワールド・ゴールド・カウンシル「2024 Central Bank Gold Reserves Survey, June 2024」および「2023 Central Bank Gold Reserves Survey, May 2023」を基にピクテ・ジャパン作成

中央銀行が注目する金の特徴

金は実物資産としてそれ自体に価値を持つほか、生産量が限られ希少性の高い貴金属であることから、インフレ時のヘッジ手段としてみなされてきました。また、金には株式や債券のように発行体の信用リスクがないことから、金融市場の見通しが悪化した局面では資金の逃避先としての需要が高まる傾向があります。さらに、金の値動きが主要な資産とは異なる傾向があることから、金をポートフォリオに組入れることで、ポートフォリオの分散投資効果を高めることが期待されます。

中央銀行が金を保有する理由の多くは個人投資家にも当てはまる

世界的な物価の高止まりや世界経済の先行き不透明感などは、今後も中央銀行が金の保有を増加させる要因になると考えられます。足元では、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエル・パレスチナ情勢、中台関係などを巡る緊張が続いており、紛争当事国や支援国・地域間の分断に伴い世界各地で情勢が不安定化する懸念が強まっています。今秋には米国の大統領選挙を控えており、米国の外交政策の見通しが不透明であることも、地政学的な不確実性を高める要因となっています。このような世界の分断は、資源価格や企業のサプライチェーンに影響を及ぼし、世界的にインフレが長期に亘って高止まりする要因になると考えられるほか、カントリーリスクの高まりなどを通じて株式や債券などの資産価格に悪影響を及ぼすと懸念されます。このような環境の中で、前述の世界の中央銀行を対象とした調査では、外貨準備に占める金の割合が5年後には現在よりも増加していると予想する中央銀行の割合が増加傾向にあります(図表3参照)。


金が持つ「インフレに強い」、「信用リスクが無い」、「分散投資効果がある」という特徴は、長期の資産運用において資産保全を図るうえでも重要な役割を果たすと言えます。不透明感の強い投資環境においては、中央銀行だけでなく、個人投資家も金への投資を検討する重要性が高まっているといえます。

注 投資している国や地域の金融危機や政情不安などが起こることで、価格が大きく変動するリスクのことを言います。

出所:ワールド・ゴールド・カウンシル「2024 Central Bank Gold Reserves Survey, June 2024」を基にピクテ・ジャパン作成

●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら




関連記事


ディープフェイクを見破る技術

人工知能(AI)の真の可能性

米大統領選を終えて新興国債券市場を展望する

データセンター:AIのインパクトを活用する

2024年11月の新興国株式市場

Climate crunch 気候危機 ~ネットゼロの移行リスクに迫る