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- 中央銀行はなぜ金を保有するのか?
・中央銀行が金を保有する理由の多くは個人投資家にも当てはまる
金の重要な資産としての認識が高まっている
近年、金価格を下支えする要因として中央銀行が外貨準備として、金を購入する動きが注目されています。外貨準備は為替介入に使用される資金であるほか、他国に対して外貨建て債務の返済が困難になった場合等に使用されるなど、一般的に外貨準備の保有は国や通貨に対する信頼性や、金融システムの安定化などに重要な役割を果たすと考えられます。
その外貨準備として金を保有する理由について、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が世界の主要な中央銀行を対象として2023年と2024年に実施した調査の結果をまとめたものが図表1です。これを見ると、世界的に物価が高止まりする中で「長期的な価値の保存/インフレヘッジ」を金保有の理由として挙げた中央銀行の割合が最も高く、また前年よりも増加しました。次いで「危機的状況下でのパフォーマンス」や「効果的なポートフォリオ分散」の比率も増加し、世界経済や金融市場の先行きに対する警戒感や、ポートフォリオのリスク抑制を図る必要性の高まりが意識されていることが示唆されています。
※中央銀行の金保有の理由について「非常に関連性が高い」と「やや関連性が高い 」と回答した割合を合計したものです。
出所:ワールド・ゴールド・カウンシル「2024 Central Bank Gold Reserves Survey, June 2024」および「2023 Central Bank Gold Reserves Survey, May 2023」を基にピクテ・ジャパン作成
中央銀行が注目する金の特徴
金は実物資産としてそれ自体に価値を持つほか、生産量が限られ希少性の高い貴金属であることから、インフレ時のヘッジ手段としてみなされてきました。また、金には株式や債券のように発行体の信用リスクがないことから、金融市場の見通しが悪化した局面では資金の逃避先としての需要が高まる傾向があります。さらに、金の値動きが主要な資産とは異なる傾向があることから、金をポートフォリオに組入れることで、ポートフォリオの分散投資効果を高めることが期待されます。
中央銀行が金を保有する理由の多くは個人投資家にも当てはまる
世界的な物価の高止まりや世界経済の先行き不透明感などは、今後も中央銀行が金の保有を増加させる要因になると考えられます。足元では、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエル・パレスチナ情勢、中台関係などを巡る緊張が続いており、紛争当事国や支援国・地域間の分断に伴い世界各地で情勢が不安定化する懸念が強まっています。今秋には米国の大統領選挙を控えており、米国の外交政策の見通しが不透明であることも、地政学的な不確実性を高める要因となっています。このような世界の分断は、資源価格や企業のサプライチェーンに影響を及ぼし、世界的にインフレが長期に亘って高止まりする要因になると考えられるほか、カントリーリスク注の高まりなどを通じて株式や債券などの資産価格に悪影響を及ぼすと懸念されます。このような環境の中で、前述の世界の中央銀行を対象とした調査では、外貨準備に占める金の割合が5年後には現在よりも増加していると予想する中央銀行の割合が増加傾向にあります(図表3参照)。
金が持つ「インフレに強い」、「信用リスクが無い」、「分散投資効果がある」という特徴は、長期の資産運用において資産保全を図るうえでも重要な役割を果たすと言えます。不透明感の強い投資環境においては、中央銀行だけでなく、個人投資家も金への投資を検討する重要性が高まっているといえます。
注 投資している国や地域の金融危機や政情不安などが起こることで、価格が大きく変動するリスクのことを言います。
出所:ワールド・ゴールド・カウンシル「2024 Central Bank Gold Reserves Survey, June 2024」を基にピクテ・ジャパン作成
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