Article Title
新型コロナで株価が大きく変動、過去の急落時との時系列比較
2020/04/21

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を受けて世界の株式市場は3月中旬にかけて大きく下落しましたが、足元は金融緩和や財政出動などの経済対策により反発しています。今回の株価推移を、過去の急落時の株価推移と比較してみました。



Article Body Text

世界恐慌やブラックマンデーの際にも株式市場はピークから3ヵ月間の下落後、反発

新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を受け世界経済の先行き不透明感が高まる中、3月中旬にかけて世界の株式市場は急落しました。

今回の新型コロナウイルスのパンデミックによる株式市場の急落(2020年3月23日まで)の時間経過を、過去の急落時と比較すると、下落がはじまる前のピーク(月末ベース)から3カ月間の下落は1929年の世界恐慌や1987年のブラック・マンデーと同程度の下落率となっています。

しかし世界恐慌時、ブラックマンデー時は、ともに急落後、上昇基調となりました。

今回も株式市場は急落後、反発しています。

 

金融緩和や財政支出などを背景に株式市場は反発

米連邦準備制度理事会(FRB)は3月に2回の緊急利下げを実施、国債や投資適格債の購入を発表、4月には一部のハイイールド債の購入にも踏み切るなど、大規模な金融緩和策を実施しています。また米政権は2兆ドル規模の大型経済対策法案を成立させています。欧州や日本でも米国同様、景気対策として金融緩和策や財政支出を決定しており、このような動きが株式市場の反発に繋がったとみられます。

更に足元では、米トランプ大統領が経済活動再開への指針を示したことや、新型コロナウイルス感染症の治療薬開発への期待なども株式市場にとってプラスに働いています。


 

世界恐慌やリーマンショック時は、株式市場は長期間低迷

足元、株式市場は反発していますが、引き続き動向を注意深く見ていく必要があると考えます。

過去の急落時と比較すると、ブラックマンデー時には急落後3ヵ月で反発し、以降、上昇基調を維持しました。

一方で、世界恐慌時は急落後、一度は反発しましたが、その後再び長期にわたる下落基調となりました。リーマンショック時は、リーマンショック発生前の2007年後半に米国のサブプライムローン問題の深刻さが認識されて以降、株価は1年以上にわたり下落基調となりました。またITバブル崩壊後の下落局面では、米国同時多発テロ、エンロンおよびワールドコムの破綻、米国における企業会計不信などが相次いで発生し、株式市場は約2年間、下落基調で推移しました。

 


本格回復には経済活動の正常化が必要

米FRBをはじめとする各国の中央銀行による積極的な利下げ、量的緩和によりひとまず流動性懸念は後退しています。一方、新型コロナウイルスによる経済活動の停止が実体経済にどれだけ影響を及ぼしているかについては、注視していく必要があるでしょう。

米国を例に挙げると、週次で発表される新規失業保険申請件数が2020年3月下旬から急増、4週間で2200万件を超えており、4月の失業率は10%を超えるのではとの予想が出ています。他の経済指標も急速に悪化しており、企業利益、配当ともに急激な落ち込みが懸念されることから、株式市場は引き続き激しく変動する可能性があり注意が必要です。

ブラックマンデー時、急落から株価が回復した背景には、当時のグリーンスパンFRB議長が「信用秩序維持のための流動性供給の用意がある」との声明を発表、利下げや流動性対策を行ったことや、米国企業の業績が堅調だったことなどがありました。

リーマンショック時には、世界的な金融危機が株価急落の要因となっていたことから、各国中央銀行が積極的な利下げ、債券購入などを実施、政府による不良債権買取などにより金融システムを支え、さらに家計や企業を支援するための財政出動により株価は底を打ち、上昇に転じました。

今回の株価下落は新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞が原因となっています。本格的な株価の回復には新型コロナウイルスの感染拡大が抑えられる、もしくは治療薬やワクチンの開発などで、経済活動が正常化する見通しがたつ必要があり、これらの動向を注視していく必要があると考えます。


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら


MSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。



関連記事


AI(人工知能)の普及に伴い、その将来性を精査する時が来ている

新興国市場:AI投資への別ルート

半導体業界が環境に及ぼす影響 

中国債券市場の振り返りと見通し(2024年3月)

新興国社債市場の振り返りと見通し(2024年3月)

新しい産業革命