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長期的な金価格の上昇を支える要因
2024/06/19

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概要

・金には長期的な価格の上昇を下支えする複数の要因が存在する
・金は変動の大きい資産だからこそ長期的な視点での投資が重要



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騰勢を強めてきた金価格

金価格は2023年末に当時の過去最高値を更新し、2024年3月以降は一段と騰勢を強めました(図表1参照)。5月中旬に新たに過去最高値を更新して以降は、米国の政策金利見通しの変化などに伴い上値の重い展開となっていますが、中長期的には地政学リスクの高まりなどの構造的な要因に加え、米国の金融政策の動向などが下支えする要因となり、上昇トレンドを維持することが期待されます。



金の需要は地政学的リスクが高まる局面で高まる傾向

金は実物資産としてそのもの自体に価値を持ち、株式や債券のように発行体の信用リスクがないことから、地政学リスクが高まる局面などで資金の逃避先としての需要が高まる傾向があります(図表2参照)。


構造的な要因を背景に金価格は中長期的な上昇トレンドを維持か

近年では、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエル・パレスチナ情勢、中台関係などを巡る緊張が続いており、紛争当事国や支援国・地域間の分断に伴い世界各地で情勢が不安定化する懸念が強まっています。今秋には米国の大統領選挙を控えており、米国の外交政策の見通しが不透明であることも、地政学的な不確実性を高める要因となっています。このような世界の分断は、資源価格や企業のサプライチェーンへの影響や、カントリーリスク注2の高まりなどを通じて株式や債券などの資産価格に悪影響を及ぼすと懸念されることから、今後も資金の逃避先として金への需要が継続すると考えられます。

さらに、危機下における価値の安定性に対する期待や通貨分散の手段として、新興国を中心に中央銀行が外貨準備として金を購入する動きが続いています。足元では金価格の上昇に伴う購入ペースの調整とみられる動きがあるものの、米ドルへの依存度を下げ、外貨準備を多様化させる中央銀行の動きなども金への需要を下支えする要因になると考えられます。

注2 投資している国や地域の金融危機や政情不安などが起こることで、価格が大きく変動するリスクのことを言います。

金の魅力は金利の低下に伴い相対的に高まる傾向にある

金は利息を生まない資産であるため、金利が低下する局面では投資対象としての相対的な魅力が高まることで、価格が上昇する傾向にあります。そのため、中長期的な金価格を見通す上では、特に米国の金融政策の動向が重要な要素となると考えられます。図表3は、2000年以降に米国の中央銀行が利上げサイクルを終了した時点を起点とした金価格の推移を示したものですが、これを見ると、利上げ終了後の金価格は短期的には下落したケースがある一方で、過去3回のうち2回(期間②と③)は、その後の景気後退に対応した利下げの実施に伴う米国金利の低下などを背景に大きく上昇しました。


米国の金融政策を決定する会合である連邦公開市場委員会(FOMC)が6月に公表した声明や経済見通しでは、米国のインフレ圧力が緩和傾向にあるとの見解のほか、経済指標などを慎重に見極めながら2026年末にかけて段階的に複数回の利下げが実施されるとの見通しが改めて示されました(図表4参照)。インフレ動向を示す経済指標によっては、月ごとのブレが大きくなる傾向があることから、その内容によっては短期的に金価格の変動が大きくなる可能性がありますが、米国の金利が中長期的に低下すると見込まれることは、金価格にとってプラス要因になると考えられます。



政府債務の増加は希少性の高い金に対する需要を高める要因に

主要国の政府債務が高水準で推移していることも、主要通貨の通貨価値の低下を通じて中長期的に金への需要を高める要因になると考えられます。主要国の政府債務残高は、景気支援や雇用の創出などを目的とする財政の拡大を背景として2008年の世界金融危機以降、急速な増加基調にあります。米国では、現行の社会保障制度などを踏まえた米行政管理予算局(OMB)の試算によると、今後も政府債務残高の増加が続くと見込まれています(図表5参照)。一般的に、政府債務の増加は通貨供給量の拡大を伴うことから通貨価値の低下要因になるほか、通貨に対する信認の低下に繋がる可能性があります。このような場合においても、実物資産としてそのもの自体に価値を持ち、より希少性の高い金に対する需要を高める要因になると考えられます。

なお、金は価格変動の相対的に大きい資産であるほか、投機的な資金の流出入の影響などから、今後も短期的には価格変動が大きくなる可能性があります。しかし、中長期的な視点からは、上述の「地政学的リスク」や「金融政策」、「通貨価値の低下」といった要因が金への需要増加に繋がり、金価格を下支えする要因になると考えられます。


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