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状況の改善が可能な企業とのエンゲージメントのために投資家連合を構築する
2023/02/10

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概要

ピクテは、責任ある企業であり続けるために多面的な取り組みを行っています。その一例が、セリーズ(Ceres)とのパートナーシップです。



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セリーズは、ベンチマーク分析を用いて企業の取り組みの進捗を追跡し、ピクテのような投資家に、企業との対話を通じて事業慣行の改善を促す際に役立つ情報を提供しています。

- セリーズ水部門プログラム・ディレクター  Kirsten James(カースティン・ジェイムズ)氏

 

ピクテとセリーズのパートナーシップは、賢明なリーダーの下での慈善活動やアクティブ・オーナーシップ活動を通じて、差し迫った世界の水危機に対応することを目標としています。当記事では、上述のジェイムズ氏とピクテのESG担当者との対談を通じて、「水関連投資の評価のためのイニシアチブ(”Valuing Water Finance Initiative”)」の詳細を紹介いたします。ピクテは、当イニシアチブ発足時の64の署名機関の一社です。

セリーズは、投資家、企業、政策立案者、規制当局等との協働を通じて、世界で最も差し迫ったサステナビリティ(持続可能性)の課題の解決に取り組む非営利団体であり、「気候変動イニシアチブ(Climate Action 100+(CA100+)」の重要なステークホルダー(利害関係機関)です。CA100+は、温室効果ガスを大量に排出する企業に対し、投資家の力を活用して、気候変動対策を講じるよう圧力をかけています。ピクテグループ財団は、2021年、水の危機対策においても気候変動対策と同様の成果をあげるために、セリーズに資金を提供しており、大量の水を消費し、水を汚染する企業に事業慣行の改善を促すには、投資家の圧力をどのように使ったらよいかを検討しています。

ピクテグループのESG担当者はエンゲージメント(対話)の開始にあたり、対象とする企業を特定して、大量の水を消費し水を汚染する「ウォーター・フットプリント」の大きい企業72社とのエンゲージメントを行うために投資家が主導する取り組み”Valuing Water Finance Initiative”の目標策定に貢献しました。

                                                                                                                  

                                                                                                                                                                                                                               

■インタビュー

以下に掲載するのは、カースティン・ジェイムズ氏と、ピクテのESGアウェアネス担当シニア・マネージャーのメラニー・ラーキンの対談で、水関連のエンゲージメントの進め方についての知見を紹介するものです。

メラニー・ラーキン(以下“ML”):エンゲージメントの対象に選んだ72社にはそのことを通知しましたか?

カースティン・ジェイムズ氏(以下“KJ”):セリーズの最高経営責任者(CEO)および代表を兼任するMindy Lubber(ミンディー・ラバー)は、72社のCEOおよび関連スタッフ宛に書簡を送り、各社が「フォーカス・リスト」に掲載されたことを知らせました。水危機がもたらす深刻な財務危機を巡る投資家の懸念と、セリーズとの討議を開始して、 水危機に対応するために72社が協働することが各社の受託者責任であるとの考えを伝えました。

書簡を通じて強調したのは、当イニシアチブが各社の操業過程やグローバル・サプライチェーン上での水資源の管理および保全を、従来以上に責任を持って行うための取り組みに焦点を当てていくということです。

ML:多くの回答が得られましたか?

KJ:一部の企業からは詳細を知りたいとの回答があったため、初回の対話を行って、”Valuing Water Finance Initiative”の詳細を説明しました。また、よくある質問集(FAQ)を策定し、72社をフォーカス・リストの構成企業に選んだ理由を説明したところ、現行の事業慣行を”Corporate Expectations for Valuing Water”に整合させるにはどのような手段があるか等、前向きな質問が寄せられ始めています。

ML:一部の会社が他社よりもエンゲージメントに前向きであるとの感触を得ていますか?

KJ:水資源のスチュワードシップ活動については、各社が異なる立ち位置にあることを認識しています。セリーズが2021年に公表した報告書”Feeding Ourselves Thirsty”では、水不足、洪水、干ばつ等の水関連リスクをどのように管理しているかについて、大手食品企業を分析して各社にスコアを付与しましたが、重要な事業計画や投資判断を行う際に水関連のリスクや投資の機会を考慮しているか否か、あるいはどのように考慮しているかによって、スコアは大きく異なりました。換言すると、水関連リスクを優先課題とし、既に対策を講じている会社もあれば、そうでない会社もあるということです。

ML:エンゲージメントをどのように行っているか、ご説明いただけますか?

KJ:セリーズの水問題の専門家は、ピクテのような投資家に対して、”Corporate Expectations for Valuing Water”の観点から、企業の現状と目標との乖離状況についてのリサーチを提供しています。企業とのエンゲージメントを行って、目標の達成に向けたプロセスについて話し合うためにリサーチやデータをどう活用するかは投資家が決めることになります。

セリーズは、ベンチマーク分析を用いて企業の取り組みの進捗状況を追跡し、ピクテのような投資家に、企業との対話を通じて事業慣行の改善を促す際に役立つ情報を提供しています。企業の変革を更に進めるために、投資家が株主提案等の手段を講じる場合もあります。

ML:成功の見込みはあると思われますか?

KJ:”Corporate Expectations for Valuing Water”の実現と、強靭かつ持続可能な水サプライチェーンの構築については、向こう5年のうちに大きな進展があることを期待しており、当初選定した72社に、新規の企業を追加したいと考えています。水危機の状況は、悪化の一途をたどっています。ですから、水リスク対策を講じるよう企業を促すために、より多くの投資家が交渉のテーブルにつく必要があると考えます。

                                                                                   

■ 水を大切にする企業への6つの期待

1. 水の量
バリューチェーン上の水不足の地域において、水の利用可能性に悪影響を及ぼさないこと。

2. 水の質
 
バリューチェーン上の水質に悪影響を及ぼさないこと。

3. 生態系の保護
淡水の供給と、水生生物の多様性に深刻な影響を及ぼす自然生態系の転換に関与せず、企業が依存している劣化した生息地の回復に、積極的に取り組むこと。

4. 水と衛生へのアクセス
バリューチェーン上の、水、下水および衛生施設への普遍的かつ公平なアクセスの実現に貢献することで、事業上の関わりのある地域社会の経済的、社会的、生態学的強靭性の確保に貢献すること。

5. 取締役会の監督
取締役会および上級管理職が、水管理の取り組みを監督すること。

6. 公共政策への関与
すべての公共政策への関与とロビー活動が、持続可能な水資源管理の成果に整合していることを確認すること。

                                                                                                            

                                                                                                               

 

■    用語集

「水関連投資の評価のためのイニシアチブ」 
(Valuing Water Finance Initiative:バリューイング・ウォーター・ファイナンス・イニシアチブ)

大量の水を消費し、水を汚染する「ウォーター・フットプリント」の大きい企業72社とのエンゲージメントを行うための投資家が主導する取り組みです。フォーカス・リストに含まれる企業は、水の使用量だけを基準に選ばれるわけではなく、食品、飲料、衣料、テクノロジー等、水集約型産業における立ち位置と、水関連リスクおよび投資の機会への対応において中心的な役割を果たす可能性を勘案して選ばれます。

水リスク

水不足、(水不足により日常生活に不便が生じる状況を指す)水ストレス、洪水、インフラ施設の老朽化、干ばつ等、水関連の課題に直面する可能性を指します。リスクの程度は、特定の状況が生じる可能性やその影響の程度によって決まります。

水資源の保全に係るスチュワードシップ

社会的に公平で、環境面で持続可能であり、経済面のメリットをもたらすような水の使い方をすることと定義されます。

                                                                                                                                                                                                                               

 

- ご存じでしたか? -

ピクテは、投資を通じてプラスの成果を実現するために、排除よりも関与を促進する、金融業界の重要な地位を確立しつつあります。このことは、環境面や社会面での取り組みに遅れがみられる、「好ましくない」産業や企業を投資対象から全面的に除外するのではなく、経営陣との対話を始め、状況の改善を促すことを意味します。

一例をあげると、ピクテでは過去20年を通じて、適切な水質の水を適切な量、家計や産業界に提供する企業や製品に投資を行ってきました。水不足や水の汚染等の水を巡る課題に既に対策を講じている国や企業のニーズを満たすことは重要ですが、それらを引き起こしている企業にはどう対応したらよいかを検討し、「ウォーター・フットプリント」の大きい企業には、一対一のエンゲージメント、あるいはValuing Water Finance Initiative等の他の投資家との協働エンゲージメントを通じて、世界の水システムを保全するために、変革を促していきたいと考えます。

 

 

 

 

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