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北欧2カ国のNATO加盟と株式市場の動向
2022/05/19

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概要

スウェーデンとフィンランドの北欧2カ国がNATO(北大西洋条約機構)への加盟を申請する意向を示したことで、欧州の地政学的な緊張感は一段と高まっています。また、株式市場では、引き続き物価上昇や米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めなどが重石となっています。



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北欧2カ国がNATO加盟を正式表明

スウェーデンのアンデション首相とフィンランドのマリン首相はいずれも加盟申請を行うと正式に発表しました。北欧の2カ国がNATOに加盟した場合、NATO加盟国とロシアが接する国境までの長さは、現在と比較し約2倍延びることになります。しかしながら、NATO加盟国であるトルコのエルドアン大統領は、両国の加盟申請に対して不支持の姿勢を表明しました。エルドアン大統領は、トルコからの独立を目指す少数民族クルド人の武装勢力「クルド労働者党」(PKK)などをテロ組織とみなしており、両国がそれらの関係者を匿っていることから、多くのテロ組織の本拠地となっているとしています。また、両国は2019年のトルコによるシリア侵攻を受け、トルコに対する武器の輸出を禁止していることなどからも対立関係が続いています。ロシアは、両国の加盟申請の動きについて、これにより生じる安全保障に対する脅威を排除するため、国境の防衛を強化し、対抗措置をとらざるを得なくなると警告しました。

株式市場の動向

4月の米国での消費者物価は上昇を続け、航空輸送コストの値上げなどを背景に消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同月比8.3%となり、高水準を維持しました。長引く物価上昇により、ミシガン大学が行った米国での消費者心理調査の結果は市場アナリストの予想を大きく下回り、10年ぶりの低水準となりました。市場はCPIの上昇を冷静に受け止め、米国10年国債利回りは3%を下回り先週の取引を終えました。その結果、今週の米国長期債市場は上昇に転じました。一方、S&P500指数は6週連続で下落し、ハイテク株比率の高いナスダック指数は米国株式市場全体のパフォーマンスを下回りました。AI関連ベンチャー企業への投資を行うソフトバンク・ビジョン・ファンドは、今年大きな損失を計上し、創業者の孫正義氏は今後のファンドの投資範囲を広げることを発表しました。一方、米電気自動車大手テスラのCEOを務めるイーロン・マスク氏は、ソーシャルメディア大手のツイッターの買収への意向を示していたものの、ユーザーアカウント数の増加に関する疑問などから、買収手続きを保留するとしました。また、投資家から、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めが企業成長に与える影響が懸念され、中小型株も下落しました。また、米国と欧州の高利回り債のスプレッド(利回り格差)はここ数週間で拡大し、当初は投資適格債を上回っていた高利回り債のパフォーマンスが一転して投資適格債を下回りました。

アジアでは、上海で新型コロナ感染者数減少の兆候がみられたことを受けて、中国株式市場の株価が回復しています。しかしながら、不良債権問題に揺れる中国不動産セクターの危機解決に向けての政府による具体的な施策がみられず信用不安が残ることや、中国人民元の下落などが重石となり、中国株式市場の回復は脆弱な兆しとなっています。


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