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- ECBにマイナス金利拡大期待はあるが、慎重な面も
今回のECB理事会の声明文にマイナス金利の副作用緩和を検討することが盛り込まれました。為替市場ではマイナス金利幅拡大による金融緩和への期待が高まりました。この期待を背景に、一時的ながら市場でユーロ安が見られました。ただ、ECBがマイナス金利幅を拡大させるか不透明な面もあり、ユーロは元の水準に戻りました。
ECB政策理事会:政策金利を据え置き、今後の政策の具体策を公表待ち
欧州中央銀行(ECB)は2019年4月10日に政策理事会の結果を公表し、ユーロ圏の景気鈍化に言及するも、主要政策金利の据え置きを発表しました。
なお、前回の理事会で9月に開始することを発表した新たな条件付長期リファイナンスオペ(TLTRO3) の貸出基準など詳細についての発表は見送られました。また、マイナス金利が長期化した場合の銀行収益への影響など、副作用を軽減する対策についても検討される模様です。
どこに注目すべきか:
マイナス金利、副作用、階層構造、ECB
今回のECB理事会の声明文にマイナス金利の副作用緩和を検討することが盛り込まれました。為替市場ではマイナス金利幅拡大による金融緩和への期待が高まりました。この期待を背景に、一時的ながら市場でユーロ安が見られました。ただ、ECBがマイナス金利幅を拡大させるか不透明な面もあり、ユーロは元の水準に戻りました。
副作用軽減の具体策として市場が想定しているのは階層別当座預金金利です。当座預金を(階層に)分けて、マイナス金利を適用する階層と、適用しない部分に分別し、マイナス金利の対象を限定する仕組みです。日銀は16年に3段階の階層別金利を導入しています(図表1参照)。
日銀の当座預金は階層構造により適用金利が異なります。
基礎残高(「量的・質的金融緩和」のもとで各金融機関が積み上げた既存の残高)にはプラス金利(現在0.1%)が適用されます。マクロ加算残高にゼロ%を適用し、当座預金残高のうち、基礎残高とマクロ加算残高を上回る部分にマイナス金利(現在マイナス0.1%)が適用されています。
このような階層となっていることにより、マイナス金利の適用は(意外と)少なく、銀行収益などへの副作用軽減が期待される構造となっています。また、基礎残高はほぼ一定ながら、マクロ加算残高を日銀が適宜変更することで、マイナス金利が適用される政策金利残高を増減させるなど、一定の柔軟性も盛り込まれています。
一方で、ECBが導入したマイナス金利政策の仕組みは、所要準備を超える過剰流動性に相当する額に一律マイナス金利(預金ファシリティ、現在マイナス0.4%)を適用する、シンプルな構造です。仕組みが簡単な分、マイナス金利の長期化やマイナス幅拡大が銀行収益に影響することも懸念されます。反対に、ECBが階層別金利を導入すれば金融緩和余地拡大につながることが想定されます。ECBのドラギ総裁が先月、マイナス金利の影響緩和措置が必要となる可能性を示唆したことも市場の期待の背景と見られます。
しかし、ECBは階層別金利導入等に伴うマイナス金利幅の拡大政策に慎重と見られます。
まず、テクニカルな話ですが、階層別金利は仕組みが複雑です。日本や北欧の一部など単一国では機能していると見られますが、19ヵ国で構成されるユーロ圏では各国共通の公平な階層の策定、管理は容易でないと思われます。
タイミングも問題です。ユーロ圏景気の鈍化傾向は続いていると見られますが、ドラギ総裁はユーロ圏の景気後退の可能性は当面低いとも明言しています。ユーロ圏の一部経済指標に底打ちが見られることもあり、当面は資金供給としてTLTRO3を優先し、資金動向を見守ることも考えられます。
また、ドラギ総裁はマイナス金利が銀行収益にどの程度影響をあたえているかについて一段の分析が必要なことを強調している点からも階層別金利など副作用緩和策の導入に慎重姿勢なことをうかがわせます。
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