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中央銀行デジタル通貨、その1
梅澤 利文
2019/04/16

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概要

仮想通貨のブームは去りました。変動が大きい仮想通貨では通貨(マネー)の基本的な機能である価値の保存や交換尺度を満たしていないとの考えが広まっています。一方で、暗号資産とは異なり、中央銀行が発行する、中央銀行デジタル通貨(CBDC)は発行を模索する動きや、導入の検討が続けられています。



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中央銀行デジタル通貨:バハマが来年中央銀行デジタル通貨導入の可能性を示唆

報道によると、カリブ海の島国であるバハマは2020年にも中央銀行によるデジタル通貨(CBDC)の導入を検討する方向であることが明らかになりました(図表1参照)。

バハマ中央銀行は19年3月に、中央銀行デジタル通貨の発行に必要な会社を選定しています。「サンド・ドル・プロジェクト」と名づけられたプロジェクトにより、通貨が幅広く使用されることを目指しています。

 

 

どこに注目すべきか:
仮想通貨、バハマ、金融包摂、CBDC

仮想通貨(最近は暗号資産と呼ばれる)のブームは去りました。変動が大きい仮想通貨では通貨(マネー)の基本的な機能である価値の保存や交換尺度を満たしていないとの考えが広まっています。一方で、暗号資産とは異なり、中央銀行が発行する、中央銀行デジタル通貨(CBDC)は発行を模索する動きや、導入の検討が続けられています。

まず、CBDC導入の動向を簡単に振り返ります。

冒頭ご紹介したバハマは約700の島から成るため、「現金」を銀行窓口やATMを通じて流通させるコストが高いという問題があります。バハマは幅広い現金の流通という問題克服に向けデジタル通貨導入を本格化させる意向です。

バハマ中銀のサンド・ドル・プロジェクトの資料には、バハマ全ての住民が公平に、デジタル通貨にアクセスできることを目指していることがうかがえます。最近、時々耳にするようになった「金融包摂(すべての人が、経済活動に必要な金融サービスにアクセス、また利用できるというイメージ)」の概念がバハマ中銀の考え方に見られます。

最近では暗号資産と呼ばれるようになったビットコインなどの「仮想通貨」は数多くありますが、中央銀行の対価(負債)として発行されず「資産」と呼ばれます。暗号資産は通貨というよりはコモディティにイメージが近いと見られます。

一方で、中央銀行が法貨として発行したCBDCの例は限られています。例えば、エクアドルはデビッドカードのような性格と見られています。2000年にドル化(独自通貨を放棄)したエクアドルでは米ドルが決済に使われていましたが、不十分なドルを補うのに使用された位置づけです。

より本格的なのはウルグアイで、法定デジタル通貨が発行されました。ただ、ウルグアイも1万人を対象に、半年という期間限定で、試験的な導入にとどまっています。

バハマの中央銀行デジタル通貨がどのような通貨なのか詳細は不明のところもあります。仮に全ての国民に行き渡ることを念頭にするならば、本格的なCBDCの導入となりますが、内容については今後の発表を待つ必要があります。

 先進国でも、英国、カナダ、そして有名なところではスウェーデンがCBDC導入を検討しています。特にスウェーデンはキャッシュレス化が進んでおり、GDP(国内総生産)に対する流通現金額は1%台に落ち込んでいます(図表2参照)。ただ、反対に言えば、他の先進国も、CBDC導入の検討を進めてはいるものの、現金比率の極端な低下は見られません。

既に国全体に現金が行き渡っている先進国と、新興国にはCBDCに対する姿勢に違いも見られます。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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