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- 離脱強硬派のジョンソン首相誕生後もすっきりしない可能性
離脱強硬派のジョンソン氏の首相就任、前日の保守党党首選の勝利に対して市場の反応は限定的でした。首相就任はほぼ織り込まれていたためと見られます。ただ、ポンドの水準は、16年の英国のEU離脱を問う国民投票後に急落した水準にほぼ並んでいます。ポンドの水準は今後の「大変さ」を示唆しているのかもしれません。
英国ジョンソン新首相就任:離脱期限での離脱方針を示唆
英与党の保守党党首に選出されたボリス・ジョンソン前外相は2019年7月24日、エリザベス女王の任命を受けて新首相に就任しました。
就任直後の演説で、ジョンソン氏は「言い訳なく」10月31日期限通りに欧州連合(EU)から離脱する方針を示しました。唯一の道が合意なき離脱であるならば、英国はその「わずかな可能性」に対して準備を進めていくと述べる一方、現存の離脱協定案でEUと再交渉ができない場合、「合意なき離脱」に備えておくことの必要性にも言及しています。
どこに注目すべきか:英国首相、ジョンソン氏、バックストップ、財政
離脱強硬派のジョンソン氏の首相就任、前日の保守党党首選の勝利に対して市場の反応は限定的でした。首相就任はほぼ織り込まれていたためと見られます。ただ、ポンドの水準は、16年の英国のEU離脱を問う国民投票後に急落した水準にほぼ並んでいます(図表1参照)。ポンドの水準は今後の「大変さ」を示唆しているのかもしれません。
何が大変なのか?主に国会運営と、(仮に)合意なき離脱となった場合の英国経済、特に財政に限定して述べます。
まず国会運営ですが、ジョンソン氏には時間がありません。10月末のEU離脱期限まで100日を切っています。その間夏季休暇などもあり、実質的な時間はさらに短くなります。
保守党党首として首相に選出されたとはいえ、議会における保守党の立場が弱いのはメイ氏の時から改善していません。ジョンソン氏の首相就任に伴い多くの閣僚が辞任し、党内の反ジョンソン機運も高まっています。北アイルランドの民主統一党(DUP)の閣外協力を必要とする構図も変わりません。数名が離反するだけで内閣不信任案の可決が懸念される状況での国会運営が強いられます。
加えて、ジョンソン氏はアイルランドとの国境を巡るいわゆるバックストップ問題を白紙撤回したい意向ですが、EUが交渉に応じる見込みは極めて低いと見られます。
次に、仮に合意なき離脱となった場合の大変さを見ると、経済への深刻な影響が懸念されます。合意なき離脱の場合、英国の経済成長率は合意しての離脱をベースとした成長率予想(1.5%弱)を3%程度下回る可能性が見込まれます。さらに、英国財政の悪化も懸念されます。英国予算責任局が最近公表した合意なき離脱を前提としたストレステストによると、英国のネット債務残高対GDP(国内総生産)比率は、合意による離脱に比べ同比率が10%以上高い(悪化)が見込まれています(図表2参照)。また、すでに主な格付け会社が英国の財政悪化に懸念(格下げなど具体策は現段階無し)を表明しています。党首選でジョンソン氏は財政拡大を伴う政策を約束している点も気がかりです。
離脱強硬派のジョンソン氏はメイ政権の時代と同様の構図で大変さに直面しながら、短期間に議会をまとめなくてはなりません。その分、合意なき離脱の可能性が高まったと見ています。同時に、展開によっては総選挙も考えられるなど、先行きについては相当に不透明です。
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