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- 欧州の結束、ようやく合意した復興基金
復興基金がようやく合意に達しました。補助金の割合を減らすなど、財政負担を懸念する4ヵ国への配慮から妥協した面もありますが、欧州の結束が示せたことは大きな成果と見られます。市場でもユーロ(並びに欧州株式)は上昇しました。欧州の国債利回りは比較的落ち着いていますが、コロナ前の水準をうかがう推移となっています。
復興基金:予定を上回る5日間の会議で復興基金は合意に達する
欧州連合(EU)首脳会議は会議が始まって5日目となる2020年7月21日に、新型コロナウイルスで打撃を被る国々を支援する「復興基金」の設立に合意しました。
復興基金の規模は7500億ユーロ(約92兆円)で、その構成は、返済が不要な補助金が3900億ユーロとなり、残り3600億ユーロは低利融資で供与されることで合意しました。なお、補助金に反対していた倹約国「オランダ、オーストリア、デンマーク、スウェーデン」の4ヵ国(及びドイツ)に対しては、EU予算への拠出金を払い戻す「リベート」が最終的に盛り込まれました。これら倹約国とドイツは7年間で500億ユーロ余りを受け取る見通しです。
どこに注目すべきか:復興基金、補助金、融資、EU首脳会議
復興基金がようやく合意に達しました。補助金の割合を減らすなど、財政負担を懸念する4ヵ国への配慮から妥協した面もありますが、欧州の結束が示せたことは大きな成果と見られます。市場でもユーロ(並びに欧州株式)は上昇しました(図表1参照)。欧州の国債利回りは比較的落ち着いていますが、コロナ前の水準をうかがう推移となっています。
復興基金の意義を、合意に至る流れと共に振り返ります(図表2参照)。復興基金のアイデアはコロナ感染拡大後、今年の春に報道されています。今日のヘッドラインでも取り上げましたが、4月のEU首脳会議で復興基金が検討されましたが、この段階では具体性に乏しい印象でした。
実現性が高まったのは5月のドイツとフランスの共同提案からでしょう。新型コロナウイルスで打撃を受けた経済の復興に向け、5000億ユーロ規模の基金を創設し、融資でなく補助金とすることが両国共同で提案されました。
欧州で政治的なプロセスを進めるうえで、ドイツとフランスが共同歩調を取ることは重要です。特に、コロナが背景とは言えドイツの姿勢は重要です。復興基金は財政に余裕がある国からない国への財政移転を伴います。ユーロ圏は通貨や金融政策は共有しても財政は各国ばらばらです。復興基金は時限的対応で、恒久措置ではないと見られますが、資金調達で欧州が共同歩調を取る意義は過小評価できないと思われます。7500億ユーロの資金調達はEUの行政執行機関である欧州委員会が代表して債券を全額発行する模様で、EU債券と同等の低利での調達が見込まれます。
なお、5月末のEU首脳会議では復興基金の規模は7500億ユーロ(補助金5000億、融資2500億)が打ち出されましたが、その後は先の倹約国を説得する必要(全会一致)に迫られました。補助金の割合を減らすなど妥協を重ね、今回の合意に至りましたが、欧州が結束できたことを評価しています。
現局面で国債利回りへの影響は、欧州中央銀行(ECB)の債券購入政策が大きいようです。ただ欧州の財政の不均衡の是正に共同債は重要な役割を担う可能性もあります。まだ単なる第1歩にすぎませんが、今後の動向に注目しています。
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