Article Title
ユーロ圏PMI失速の背景と市場の反応
梅澤 利文
2020/09/24

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー

概要

9月のユーロ圏PMI(速報値)の特色は2極化です。9月のユーロ圏総合PMIが前月に比べ低下したのは、サービスPMIが大幅に低下したからです。一方で製造業PMIは堅調でした。製造業とサービス業に2極化が見られました。国別指数では公表されたドイツとフランスでは、堅調なドイツと、軟調であったフランスの間に2極化が見られました。




Article Body Text

9月ユーロ圏PMI:総合PMIは50を確保するも市場予想を大幅に下回る

 IHSマークイットが2020年9月23日に発表した9月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)は50.1と、市場予想(51.9)、前月(51.9)を大きく下回りました(図表1参照)。なお、同指数は50が景気拡大、縮小の目安です。

 内訳は製造業が53.7と前月(51.7)を上回る結果となる一方で、サービス業は47.6と再び50を下回りました。国別でもドイツの総合PMIは53.7となる一方で、フランスの総合PMIは48.5と明暗が分かれました。

 

 

どこに注目すべきか:2極化、ユーロ圏PMI、感染再拡大、ドル指数

 9月のユーロ圏PMI(速報値)の特色は2極化です。9月のユーロ圏総合PMIが前月に比べ低下したのは、サービスPMIが大幅に低下したからです。一方で製造業PMIは堅調でした。製造業とサービス業に2極化が見られました。国別指数では公表されたドイツとフランスでは、堅調なドイツと、軟調であったフランスの間に2極化が見られました。

 何故、ユーロ圏の製造業は堅調でサービス業は不振であったかの背景に、欧州における新型コロナウイルスの感染再拡大懸念があげられます。米ジョンズ・ホプキンス大学のデータによると、フランスとスペインでは9月に入り1日に約1万人の新規感染者が報告されており、増加傾向であるのが気がかりです。一方で、ドイツとイタリアは2000人を下回る水準で横ばいで、国によりばらつきが見られます。

 コロナの感染再拡大に伴い、欧州の一部地域で経済活 動の制限が行われています。不要不急の外出の禁止や、 営業時間の短縮、集会の制限などが実施されています。た だ、以前のように全国的な対応でなく、スペインであればマド リード限定など地域を絞っての対策となっています。

 この結果、感染再拡大の影響を受けやすいサービス業が悪化した一方で、輸出などに支えられ、製造業は堅調という2極化となっています。国別でも製造業に強みがあり、コロナの感染が比較的抑えられているドイツは堅調な一方、フランスはPMIが悪化しました。

 なお、9月のユーロ圏PMIのコメントで1年後のビジネスの期待を見ると、2月以来の高水準(製造業、サービス業共)です。足元の感染者再拡大に懸念はあるものの、今後改善するという見通しは維持されています。ただ、堅調であった7-9期が減速感で終わったため、コロナの動向によっては影響は10-12月期に残るかもしれません、しかしながら、ユーロ圏の全体的な回復傾向は維持されると見ています。

 市場の反応を見ると軟調な9月のPMIを受けユーロ安が見られました。もっとも、ユーロが急ピッチで上昇してきたことから欧州中央銀行(ECB)の主要メンバーからユーロ高をけん制するコメントがユーロの上昇を抑えていた面もあり、PMIだけで動いたわけではないでしょう。なお、ユーロ安の裏腹で指数の半分程度をユーロが構成するドル指数は当然ながら上昇しました(図表2参照)。米国は過去景気後退の局面でドル安(を放置する)政策が見られました。しかしコロナがからむと(相手あってのことゆえ)米国も一筋縄ではいかない対応を迫られる展開となる可能性があることが示唆されたように思われます。



梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


東京都区部CPIの注意点と注目点

円安に見る、日銀ゼロ金利政策解除は単に出発点

中銀ウィーク、FRB以外に見られた注目点とは

3月のFOMC、年内3回利下げ見通しを何とか維持

ECB、政策金利の運営枠組み見直しを発表

2月の米CPI、インフレ再加速の証拠は乏しいが