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予想通りのFOMCから読み取るメッセージ
梅澤 利文
2020/12/17

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概要

今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)における主な変更点は市場予想通り資産購入に関する定性的なフォワードガイダンスの表明です。市場には金融緩和の催促(購入資産の年限長期化など)がある一方で、反対に比較的早期の金融政策の正常化(国債購入ペースの減速)を見込む動きもあります。今回のFOMCはその両方の憶測を目先は打ち消した格好と見ています。



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12月FOMC:市場予想通り、資産購入に関するフォワードガイダンスを修正

米連邦準備制度理事会(FRB)は2020年12月16日、米連邦公開市場委員会(FOMC、15〜16日)の結果を公表し、市場予想通り資産買入に関して定性的なフォワードガイダンス(今後の政策の指針)を導入しました。雇用最大化と物価安定の目標に向け、著しい更なる進展まで、FRBは国債保有を少なくとも月800億ドル、ローン担保証券の保有を少なくとも月400億ドル引き続き増やすという内容です。

また今回公表されたFOMCの経済予想では、GDP(国内総生産)成長率見通しを上方修正しました(図表1参照)。一方で、政策金利の予想では23年までゼロ金利政策を維持する見込みであることが示唆されました。

 

どこに注目すべきか:フォワードガイダンス、定性的、テーパリング

今回のFOMCにおける主な変更点は市場予想通り資産購入に関する定性的なフォワードガイダンスの表明です。市場には金融緩和の催促(購入資産の年限長期化など)がある一方で、反対に比較的早期の金融政策の正常化(国債購入ペースの減速)を見込む動きもあります。今回のFOMCはその両方の憶測を目先は打ち消した格好と見ています。

FOMC結果発表の当日に11月の米小売売上高が発表され市場予想を大幅に下回りました。新型コロナ感染再拡大の影響と見られます。新型コロナは当面景気下押し圧力となることが懸念され、国債購入増額や年限長期化など金融緩和の強化への期待が市場の一部に見られます。

しかし、金融緩和の強化は見送られました。財政政策による追加経済対策が(いずれ)まとまりそうなこと、米国債利回りは概ね安定的に推移、ワクチン接種の開始などが背景と思われます。会見でパウエル議長はサービス産業の落ち込みはコロナの影響であり、金融よりは財政政策の方が対応しやすいとも受け取れる発言をしています。

次に、より大切なのは早期の金融緩和の正常化、具体的には早期のテーパリング(資産購入の段階的縮小)をフォワードガイダンスでけん制したことです。ここで改めてFOMCの経済予測(図表1)を見ると、ゼロ金利を維持するとしている23年の経済指標はコロナ前と変わらない水準です。金利先物市場を見ても、23年の利上げは緩やかに織り込まれています。そこで、先の利上げ(15年末)を思い出すと、テーパリングを開始したのはその2年ほど前でした。「単純」に当てはめれば来年テーパリング開始は不思議ではないかもしれません。もっとも当時とは経済環境が異なります。特にコロナの収束は不透明で、足元は感染が再拡大している状況です。まだ先の話しながら先読みが市場の変動を高める恐れはあります。ここで資産購入のフォワードガイダンスに戻ると、国債などの購入額を数字で明記しています。従前は現状のペース(数字を示さず)で購入を続けると述べており、よくよく考えれば変わっていないのですが、声明に数字を明記することで少なくとも現状の購入額を維持して緩和的な姿勢で経済を支援することを強調したメッセージと見られます。パウエル議長もワクチン接種が想定より早期に開始され、来年後半からの景気の更なる改善の可能性に言及しつつも、当面は支援が必要で、テーパリングについては余裕を持ってアナウンスする考えを会見で説明しています。前のめりの行動に注意が必要と見ています。

資産購入のフォワードガイダンスは失業率など何かの指標に連動させる定量的でなく、最大雇用と物価安定の「著しい更なる」進展があるまでという定性的フォワードガイダンスを選択しました。新型コロナウイルスの感染拡大、ワクチン接種とその効果など不確定な要因が多い中、政策の選択余地を狭める恐れがある定量でなく定性的を選んだものと思われます。

現状を踏まえ無難な選択に終始したFOMCと見ています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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