Article Title
21年も中国に注目が集まる予感
梅澤 利文
2020/12/22

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

新型コロナウイルスを概ね収束させたことで、20年の中国経済はほぼ一人勝ちの様相でした。その中国の21年の経済方針を占うと、当面は景気回復を下支えする政策の継続が想定されます。一方で、過剰とまで言われていた債務は、コロナの危機対応でさらに増加しています。景気回復とのバランスをとりながら、債務の正常化を模索する動きが今後想定されます。



Article Body Text

中国中央経済工作会議:足もとの成長を確保しつつ、債務の正常化を示唆

中国の金融・財政政策スタンスの手がかりとなる中央経済工作会議(年1回開催)が終了し、国営メディアが2020年12月18日に声明の内容を伝えました(図表1参照)。中国は21年、「穏健」かつ「合理的」金融政策を実行、また債務比率の安定化にも努めることが示唆されています。国営メディアによると、中国当局は来年「マクロレバレッジ比率の基本的安定維持」、債務比率をGDP(国内総生産)対比で今年と同程度の水準に維持する方針と伝えています。

もっとも、GDP成長率などの数字目標は21年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で通常発表されます。

 

どこに注目すべきか:中央経済工作会議、債務正常化、小康社会

新型コロナウイルスを概ね収束させたことで、20年の中国経済はほぼ一人勝ちの様相でした。その中国の21年の経済方針を占うと、当面は景気回復を下支えする政策の継続が想定されます。一方で、過剰とまで言われていた債務は、コロナの危機対応でさらに増加しています。景気回復とのバランスをとりながら、債務の正常化を模索する動きが今後想定されます。

コロナの感染拡大に直面する局面では危機対応の優先順位が何よりも高く、債務水準の問題は脇に置くべきでしょう。ただ、中国はコロナの収束が早かった分、感染がこのまま抑えられるなら債務正常化の優先度を高めると思われます。

まず、中国の債務状況を確認します。中国の民間非金融機関部門債務残高(全体額)の対GDP比率を見ると足もとコロナ対応で、急増しています。中国当局の債務削減方針を見るため、対GDP債務比率の長期トレンドからのかい離(クレジットギャップ)を見ると、中国はコロナ前までは債務削減方針を維持していたことがうかがえます。当面は見送るとしても、中央経済工作会議の内容から、コロナ次第ながら来年は、徐々に債務の正常化を模索することも想定されます。

なお、中国のマクロレバレッジ比率は民間非金融機関部門債務に加えて政府部門債務も含めると近い数字となりますが、政府部門の同比率は50%前後で比較的安定していることなどから、先のデータで代理しています。

次に、中国の21年のGDP成長率は国際通貨基金(IMF)は8.2%を予想しています。もっとも21年1-3月期の成長率は今年が低かった分、前年同期比は10%を大きく上回る成長が想定されます。これはある程度年後半は減速することが想定されます。中国当局の成長予想は全人代を待つ必要がありますが、債務正常化の方針を踏まえ占う必要がありそうです。

最後に、中国らしく長期的な視点を簡単に述べると、21年は第14次5ヵ年計画がスタートする年です。五中全会を経て最終方針は21年3月の全人代で公表される流れです。第13次5ヵ年計画では小康社会(ややゆとりのある生活が出来る社会)などが採用されました。また、中国の第2の100年奮闘目標の第1段階(21年~35年、最終は2049年)の開始時期とも重なり長期的にも重要な節目です。加えて、共産党結党100年の年でもあります。来年も中国が注目を集めそうです。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


ベージュブックと最近のタカ派発言

中国1-3月期GDP、市場予想は上回ったが

ECB、6月の利下げ開始の可能性を示唆

米3月CPIを受け、利下げ開始見通し後ずれ

インド、総選挙とインド中銀の微妙な関係

米3月雇用統計、雇用の強さと賃金の弱さの不思議