Article Title
バイデン政権、支持率低下にため息
梅澤 利文
2021/11/18

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー

概要

米バイデン政権は財政政策としてインフラ投資法案と民主党単独法案を看板政策としてきました。インフラ投資法案は成立しましたが、民主党単独法案は民主党内からの抵抗で規模縮小を余儀なくされたうえ、法案成立の見通しも不透明です。バイデン大統領の支持率も右肩下がりで、バイデン政権の政策運営に気迷いも見られます。



Article Body Text

米国財政:イエレン財務長官、連邦政府の債務上限引き上げの期限の想定を提示

イエレン米財務長官は2021年11月16日、連邦政府の債務上限引き上げの新たな期限が12月15日になるとの見通しを議会に示しました(図表1参照)。

イエレン長官は議員らに宛てた書簡で、12月15日までは財務省が政府の資金繰りをやりくりできると強く確信するものの、この日より後の政府機関の運営に資金を融通し続けるだけの財源が不足するシナリオがあると説明しています。

どこに注目すべきか:インフラ投資法案、ビルド・バック・ベター

米バイデン政権は財政政策としてインフラ投資法案と民主党単独法案を看板政策としてきました。インフラ投資法案は成立しましたが、民主党単独法案は民主党内からの抵抗で規模縮小を余儀なくされたうえ、法案成立の見通しも不透明です。バイデン大統領の支持率も右肩下がりで(図表2参照)、バイデン政権の政策運営に気迷いも見られます。

まず、バイデン政権の2つの政権運営の最近の動向を振り返ります。2つの看板政策のうち、新規財源が5500億ドル規模のインフラ投資法案は超党派の合意により既に成立しました(図表1参照)。

一方、当初は3.5兆ドル規模とより大型の民主党単独法案は、ビルド・バック・ベター(よりよき再建)法案に置き換え、規模を半減させ成立を目指していますが、採決の時期も不透明です。特に上院の先行きが不透明です。上院は民主党と共和党が議席数で拮抗しており、民主党内から1人でも反対が出れば、それを上回る共和党からの支持が必要となります。しかし、インフラ投資法案と異なり、分配の色合いが濃いビルド・バック・ベター(よりよき再建)法案で共和党の協力が得られる可能性は低いと思われます。

共和党の協力はそもそも期待できないとして、問題なのは民主党が一枚岩になれないことです。民主党内で分配政策を支持するグループと、これに強硬に反対する穏健派(少数ながら)が対立しています。穏健派の代表的議員はウェストバージニア州選出のマンチン上院議員です。ウェストバージニア州は伝統的に共和党の地盤だけに、巨額の財政政策に否定的です。また最近では巨額の財政政策がインフレをさらに加速させると主張しています。ある意味、正当な主張にバイデン政権は説得に苦慮しています。

そこでバイデン政権の支持率を見ると低下が止まりません。下落のきっかけはアフガン撤退の不手際でしたが、最近の世論調査ではインフレへの不満が背景の一因となっているようです。また、バイデン大統領の後継者として期待がかかるハリス副大統領の支持率も30%前後と、バイデン大統領より低迷しています。

支持率の低迷は来年の中間選挙、さらには24年の大統領選挙への影響も懸念されますが、インフレが一時的であるにせよインフレ局面での財政政策の拡大に同意を求めるのは簡単ではなさそうです。バイデン大統領は米国民がインフレを認識しやすいガソリン価格を抑える政策を打ち出していますが、効果の持続性には疑問もあります。

来年の選挙よりも前に、来月には債務上限の問題などへの対応が、今度は共和党も含めて求められます。政府機関閉鎖や債務不履行そのものは回避されたとしても、さらなる妥協が求められる展開も懸念されます。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


FOMC:市場予想通りの利下げながら全体にタカ派

ECB:声明文はハト派ながら会見はタカ派も匂わす

11月の米CPI、市場予想通りの裏側にある注意点

11月の米雇用統計、労働市場の正常化を示唆

米求人件数とADP雇用報告にみる労働市場の現状

韓国「非常戒厳」宣言と市場の反応