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- 米国の利上げと保有資産縮小を公聴会から占う
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の再任と、ブレイナード理事の副議長への昇格承認に向けた公聴会が開催されました。公聴会の質疑の中では重ねてインフレへの対応が求められました。公聴会を含め両氏のこれまでの発言や、他の米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の発言から、今後の金融政策の動向を占います。
上院委員会公聴会:パウエル議長、ブレイナード理事、共に金融引締め姿勢を示唆
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は2022年1月11日、米上院委員会の再任承認に向けた公聴会に出席しました。パウエル議長は米国の雇用回復やインフレ高止まりへの懸念を踏まえて金融政策の正常化を進めることを重ねて表明しました。また、パウエル議長は年内に利上げを始め、おそらく22年後半に保有資産の縮小を始めるだろうとも述べています。
また、FRBのブレイナード理事は13日、副議長昇格の承認に向け、米上院委員会での公聴会に出席しました。ブレイナード理事は高水準のインフレを非常に懸念していると指摘し、(22年)3月に資産購入を終了した後すぐに利上げができる状態になると述べ、他のFRB幹部と同様に金融引き締めを急ぐ姿勢を示しました(図表1参照)。
どこに注目すべきか:FRB議長、副議長、公聴会、利上げ、QT
FRBのパウエル議長の再任と、ブレイナード理事の副議長への昇格承認に向けた公聴会が開催されました。公聴会の質疑の中では重ねてインフレへの対応が求められました。公聴会を含め両氏のこれまでの発言や、他の米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の発言から、今後の金融政策の動向を占います。
まず、利上げ開始時期については3月FOMCの公算が高まったと見ています(図表1参照)。本来ハト派(金融緩和を選好)のブレイナード理事までが公聴会で3月に資産購入を終了した後「すぐに利上げができる状態になる」と述べています。また、米サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は12日に「不快な物価上昇が続いているのは極めて明白なため、3月にも利上げがあるのは間違いないと考える」と述べています。状況に変化が無ければ3月利上げ開始の公算は高いと見ています。
ただ、年内の利上げ回数や利上げ時期について見方が分かれています。3月の後、FOMCの経済予想が発表される6月、9月、12月が利上げ時期の候補ですが、全て利上げをすると年内4回となります。しかし、FOMC参加者の最近の発言でも3回~4回(一部5回)が主流と見られます。3回の場合利上げ候補時期のうち1回は様子見となるでしょう。
次に、恐らく市場の関心が高いと思われるFRBの保有資産の縮小(QT)についてです。QT実施までの段階を①準備段階、②具体的手法の公表、③QT開始の3つのステップに分けて考えます(図表1参照)。まず①の時期は、パウエル議長の公聴会での発言から概ね今年前半が相当しそうです。次に①が終わり次第、②のQTの具体的手法が公表されると想定されます。時期の特定は微妙ですが、パウエル議長は③のQT実施は年後半の可能性を公聴会で示唆しています。②はそれに見合う時期となることが想定されます。
このように、今年後半のスケジュールは利上げ回数も含め、変動する可能性があります。この背景はインフレの先行きに不確実性が高いからであると考えます。インフレについて確かなことは足元の上昇率は当局も許容し難い高水準であるということです。目の前の高インフレに対して、火事を前にホースを片手に様子見をする消防士のようなことは出来ないようです。しかし13日に公表された21年12月の生産者物価指数(PPI)にはインフレ減速の兆しもうかがえます(図表2参照)。また、PPIのみならず、インフレの原因となっていた海上運賃などが急落しています。しかしながら、一方で賃金や家賃は上昇余地があり、さらなる上昇も懸念されるなど、先行きのインフレ動向を占うのは困難です。金融政策はインフレ動向を踏まえ柔軟に運営されることを想定しています。
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