- Article Title
- 疑問を残したFOMC
今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文で3月の利上げ開始の可能性が示唆されました。市場は3月開始、年4回の利上げを織り込んでいたことから声明文だけなら無風で終わった可能性もあります。しかし、その後のパウエル議長の会見では市場の想定以上の引締めを示唆する内容も見受けられました。もっとも会見の説明にはいくつか疑問も残りました。
22年1月FOMC:3月利上げ開始を示唆すると共に、パウエル議長のトーンはタカ派
米連邦準備制度理事会(FRB)は2022年1月25~26日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催しました。声明文で「インフレ率が2%をはるかに上回っており、労働市場も強いことから、フェデラルファンド(FF)金利の目標レンジを引き上げることがまもなく適切になると予測する」と明記し、次回(3月)FOMCでの利上げ開始の可能性を示唆しました。
市場では年内の利上げについて、四半期ごとに0.25%ずつ引き上げる、つまり年4回、合計1%の利上げが概ね織り込まれていたと見られます。しかし、FRBのパウエル議長は会見で市場の利上げシナリオを上回る引き締めを実施する可能性を明確に否定しなかったことなどからタカ派(金融引締めを選好)的なイメージとなりました。そのため市場では特に会見後に国債利回り上昇、円安ドル高進行などタカ派化懸念を示す動きが見られました(図表1参照)。
どこに注目すべきか:FOMC、記者会見、バランスシート縮小、売却
今回のFOMC後の、市場が織り込む22年年内の利上げ回数を確認すると、4.6回程度です。FOMC開始前は4回程度であったことから、1回分とはいかないまでも、市場が利上げ回数を上方修正させたことがうかがえます。この背景として考えられるのは、パウエル議長が示した毎会合で利上げを決定する可能性も排除しない姿勢です。市場の4回の織り込みは、3、6、9、12月の利上げを想定したものですが、例えば5月3日~4日の利上げの可能性も、一応想定する必要が浮上してきたイメージです。
次に、市場の一部でささやかれていた3月に0.25%でなく0.5%引き上げる点について質問がありましたが、これを明確に否定しませんでした。3月0.5%の大幅引き上げは、今回の会見後でも市場のメインシナリオになったとは思えませんが、先物市場の織り込み具合を見ると、若干ながら可能性を織り込んだように見られます。
なお、米金利上昇を受け株式市場が軟調となっていますが、この点についてパウエル議長は懸念を示さなかったことも嫌気された可能性があります。
会見を受け市場の不安や懸念が高まった一方で、疑問も残りました。1月のFOMCではFOMC参加者の経済見通しが発表されないこともあり、インフレ動向やその軌跡について詳しい説明はありませんでした。インフレは年前半がピークと見ており、それに柔軟に対応するため毎会合の利上げと述べたのかもしれませんが、未だインフレ率低下を確認できない中、毎会合の利上げだけが先走っている印象もあります。
次にFRBのバランスシート縮小についてです(図表2参照)。FRBはバランスシート縮小の基本方針を公表しました。この基本方針を含め、バランスシート縮小についていくつかの点が明らかになりました。例えば、資産購入は3月初旬に終了させ、利上げ開始後に縮小を開始するとしています。もっとも、基本方針でも縮小の時期やペースに具体的な数字は無く、今後数回の会合で詳細を詰めるものと思われます。1月の公聴会でパウエル議長はバランスシート縮小開始の時期として年後半を示唆していましたが、年中頃に開始される可能性も視野に入れる必要がありそうです。なお、縮小の方法としては保有証券の元本の再投資額を調整することを原則としており、明確なタカ派のメッセージとなりうる保有資産売却による縮小は考えていない様子です。ただ、パウエル議長は具体策はこれからながら、前回の縮小に比べ早いペースで縮小を進める可能性も示唆しています。市場の不安解消には政策変更について予見可能となる説明が必要と思われます。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。