Article Title
中国PMIが示す景気回復の鈍さ
梅澤 利文
2022/02/01

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

中国の1月の(政府版)製造業購買担当者景気指数(PMI)と非製造業PMIは共に前月を下回り、中国の景気減速感が示唆されました。なお、民間企業や中小企業の動向を反映すると言われる財新製造業PMIは市場予想並びに前月を下回り、景況感の悪化が示されました。中国当局による景気支援策が本格化することも想定されます。



Article Body Text

中国1月PMI:製造業、非製造業共に前月を下回り、減速傾向を示唆

中国国家統計局が2022年1月30日に発表した1月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.1と、市場予想の50.0は上回ったものの、前月の50.3を下回りました(図表1参照)。またサービス業の動向を示す非製造業PMIは51.1と、前月の52.7を大幅に下回りました(図表2参照)。

中国メディア財新が1月30日に発表した1月の財新製造業PMIは49.1と、市場予想の50.0、前月の50.9を下回りました(図表1参照)。財新製造業PMIは政府のPMIと比べて調査対象に民間企業が多く、中小企業の景況感をより反映しやすいとされています。

どこに注目すべきか:製造業PMI、新規受注、中小企業、金融政策

まず政府版と財新製造業PMI(財新非製造業PMIは春節休暇後に発表予定)の内容を振り返り、その次に景気支援策として中国の金融政策を整理します。

(政府版)製造業PMIは1月が50.1となりましたが、主な構成指数のうち、拡大・縮小の分岐である50を上回ったのは生産指数(50.9)で、他は投入価格指数(56.4)や卸価格指数(50.9)など、生産者物価の上昇を反映したことなどに関連する項目に見られました。一方で、新規受注(49.3)、雇用(48.9)、新規輸出受注(48.4)などの重要項目指数はいずれも50を下回りました。新規受注指数や雇用指数は前月から低下しており、景気の減速感が示唆されます。

サービス業の動向を示す(政府版)非製造業PMIは1月が51.1と新型コロナウイルスの感染再拡大抑制を目指したゼロコロナ政策の影響で前月の52.7を大幅に下回りました。非製造業PMIの内容を見ると、新規受注(47.8)、雇用(46.9)、新規輸出(46.0)の各指数は50を下回り、いずれも前月を下回っています。1月の非製造業PMIの構成指数で50を超えたのは主に投入価格や販売価格で、非製造業PMIの実態は50、もしくは50を下回る水準と見られそうです。

財新製造業PMIは1月が49.1と50を下回りました。財新製造業PMIには民間企業、特に中小企業が多くカバーされており、その分指数が下がったと見られます。政府版の製造業PMIは企業規模別PMIも合わせて公表されています。分類は大企業、中堅企業、中小企業です。1月の大企業指数は51.6と、前月の51.3を上回りました。一方で、中堅企業、中小企業指数は共に前月を下回り悪化しました。中国当局は昨年後半から景気下支えに政策をシフトさせてきました。しかし効果は大企業に限られている可能性があり、もう一段の政策支援が想定されます。

次に、中国人民銀行を中心に金融政策を振り返ります。中国景気の悪化を踏まえ、人民銀はすでに金融緩和政策を実施しています。具体的には、人民銀は昨年12月に預金準備率を大半の銀行に対し0.5%引き下げました。また金利政策として昨年12月に1年物貸出プライム金利(LPR)を3.85%から3.80%へ引き下げたことに続き、今年1月には1年物中期貸出ファシリティ(MLF)金利を2.95%から2.85%へ引き下げました。7日物レポレートについても2.20%から2.10%へ引き下げるなどの金融緩和を行っています。

今後についても、景気てこ入れの必要性から金融緩和を拡大する可能性が高いと見ています。主な手段としては預金準備率のさらなる引き下げと、各種金利の引き下げです。なお、主な先進国で行われている、中央銀行が国債などを購入する量的金融緩和策について人民銀行は慎重な姿勢を表明しており、量的金融政策の活用は控えると見ています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


FOMC:市場予想通りの利下げながら全体にタカ派

ECB:声明文はハト派ながら会見はタカ派も匂わす

11月の米CPI、市場予想通りの裏側にある注意点

11月の米雇用統計、労働市場の正常化を示唆

米求人件数とADP雇用報告にみる労働市場の現状

韓国「非常戒厳」宣言と市場の反応