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中国の成長目標と今後の金融政策運営
梅澤 利文
2022/02/22

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概要

中国は3月に開催する全国人民代表大会(全人代、国会に相当)でその年の成長率目標を公表するのが恒例です。22年は1-3月期の低成長が想定されることから、年後半にかけ成長戦略が求められます。今年は5年に1度の共産党大会にあたり政治的に重要な年だけに、成長の確保が求められる中、今後の経済政策運営が注目されます。



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中国人民銀行:主要な政策金利を2月は据置くも基本的に金融緩和姿勢は維持の公算

中国人民銀行(中央銀行)は2022年2月21日に政策金利の一角を形成する最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)1年物について3.70%で据置くと発表しました(図表1参照)。また、5年物LPRも4.60%で据置きました。

人民銀は1月にLPR以外の金利についても引き下げました。例えば1年物の中期貸出ファシリティ(MLF)を0.1%引き下げて2.85%とし、7日リバースレポ金利も引き下げています。景気の下押し圧力が残る中、最近の利下げを受け2月については様子見姿勢となりました。

どこに注目すべきか:中国政策金利、LPR、MLF、預金準備率

中国の21年10-12月期のGDP(国内総生産)成長率は前年同期比4.0%でした。過去の中国の高成長に比べ低い数字です。22年1-3月期の成長率について市場予想を見ると、同様に同4%程度の成長が見込まれています。足元改善は見られますが、いわゆるゼロコロナ政策に伴う行動制限がいくつかの地域で導入されたことや、北京冬季五輪開催中の生産制約などが景気回復を遅らせる要因になると見られています。

中国の22年通年の成長率を市場予想で見ると5.2%程度となっています。1-3月期が既に低いと見込んでいるならば、妥当な水準と思われます。ただ昨年の中国の成長目標は「6%以上」でした。また、21年の実績の成長率は新型コロナウイルスからの回復もあり、8.1%でした。今年の成長目標を市場予想並み、例えば1%引き下げ5%以上などとすれば、規制強化など昨年の政策への風当たりが強くなることも懸念されます。

もっとも、今年の経済運営方針を話し合う、(昨年末に開催された)中央経済工作会議では今年の成長については安定重視としており、ある程度の成長率低下に布石を打ったようにも見られます。

なお、人民銀の易綱総裁は16日に20カ国・地域(G20)財務相・中銀総裁会議の前のスピーチで、今年の中国経済は潜在成長率の水準を回復するとの見通しを明らかにしました。過去、人民銀は非公式ながら中国の潜在成長率を5.0%~5.7%程度と推定したこともあります。もっとも、成長目標は政治的判断に左右されると見られ、最終的に当局が示す数字を予想することは困難ですが、市場で噂されている中国の今年の成長目標が5.5%程度というのは議論のたたき台とはなるかもしれません。

いずれにせよ、当局は年後半に向け成長率の押上げをはかることが想定されます。昨年の預金準備率の引き下げから、足元の各種政策金利の引き下げは、今後も継続する可能性があると見ています。なお、利下げ幅が、先進国で見慣れた0.25%の利下げに比べ小幅なのは国営銀行など銀行収益への配慮があるためと見られ、今後想定される1回分の利下げ幅も比較的小幅にとどめ調整を続ける運営と見込まれます。

昨年債務不履行懸念に襲われた中国の不動産市場ですが、住宅価格に底打ちの兆しが見られます(図表2参照)。しかし、足元でも不動産企業の債務不履行不安が続いています。昨年のように大手不動産でないことから注目度は低いですが、安心できるには程遠い状況です。そこで、中国では(当局主導で)銀行が融資などで債務不安に対応を求められるケースが見られます。そのため銀行に利ざやを確保する必要もあることから金利の引き下げは段階的に調整されると想定しています。ただ、これらの点については当局からの説明が少なく、想定にはさらなる確認作業が必要です。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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