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中国全人代、高い成長率目標を設定
梅澤 利文
2022/03/08

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概要

中国の全国人民代表大会(全人代)が開幕し、今年の経済成長率目標に「5.5%前後」を設定しました。ロシアのウクライナへの軍事侵攻前であれば、市場の成長率予想をやや上回る水準と見られます。しかしながら、軍事侵攻を受けたエネルギー価格の上昇などは中国経済にも下押し圧力と見られ、5.5%のハードルは高く、中国の政策対応に注目が集まります。



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中国全人代:今年の成長率目標を5.5%前後に設定、景気に逆風が吹く中、強気の水準

中国政府は2022年3月5日に開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で今年のGDP(国内総生産)成長率目標を過去30年余りで最も低い「5.5%前後」に設定しました(図表1参照)。

不動産規制の影響が残ることや、新型コロナウイルス関連の厳しい制限措置(ゼロコロナ政策)、足元ではロシアのウクライナへの軍事侵攻など向かい風が吹く中、昨年の成長率目標の6%以上から引き下げました。なお、全人代の会期は3月11日までとなっています。

どこに注目すべきか:全人代、成長率目標、インフラ投資、ロシア

国際通貨基金(IMF)は今年1月に公表した世界経済見通しで、中国の22年の成長率を4.8%と予想しています。ウクライナ情勢が悪化する前、市場が見込む中国の成長率も5%前後であったと思われます。しかしロシアの軍事侵攻を受けたエネルギー価格の上昇などが中国の成長率にとって下押し要因となることが懸念され、足元では中国の成長率見通しを引き下げる動きが見られます。

このような状況で開幕した全人代で、経済成長率目標をはじめ財政政策などの方針が示されました。主な内容は、昨年12月に開催された中央経済工作会議で決定した方針を踏襲しています。全人代は欧米の中央銀行の金融政策決定会合と違い、直前の経済状況でトーンを変える性格ではないと思われます。ただ、今後中国が直面すると見られる困難な経済環境に比べ、やや物足りない印象です。

例えば、財政政策は財政赤字が対GDP比で2.8%と、昨年より消極的もしくは安定性を追及する数字と見られます。もっとも、他の基金からの流用で実際の赤字額は拡大の余地があるとの見方もあり、今後の運営に注目しています。

中国の金融緩和で重要な量の目安となる社会融資総量は名目GDPの伸びに抑えるとしています。昨年後半から小幅な金利引き下げが見られましたが、今年も積極的な金融緩和ではなく、適切な金融緩和にとどめると見られます。これまでの不動産規制強化の背景となっていた「住宅は投機ではなく、生活のためのもの」との姿勢は全人代でも維持されています。中国では過去金融緩和を拡大すると不動産投資が活発化することが繰り返されてきただけに、適切な緩和にとどめると思われます。

中国経済の成長を支えてきた輸出にこれまで同様の押し上げは期待しにくいと見られます(図表2参照)。むしろ原油価格の上昇により輸入が増えれば成長の下押し圧力となることさえ懸念されます。今年の政策から想定される経済の押し上げ要因はインフラ投資です。中央政府に加え、国営企業や地方政府を総動員すれば、昨年からの上乗せは期待されそうです。ただ、これまでに指摘した景気の悪化要因を全てカバーできるかについては疑問も残ります。不動産に代表される規制強化の過剰な部分の緩和や、厳格なゼロコロナ対策の見直しなどが求められると思われます。

なお、ウクライナ情勢について中国はこれまでロシアとの関係重視から表向き中立の姿勢でした。ただ原油価格などの急上昇を受け、傍観に徹するべきか、経済的には悩ましい状況と見られます。しかし政治判断は別次元かもしれませんが。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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