- Article Title
- フランス大統領選挙直前のテレビ討論会、判定はいかに
フランス大統領選挙の決選投票を目前にマクロン大統領と、極右政党のルペン前党首とのテレビ討論会が行われました。インフレ対応など国民生活への支援を訴えるルペン氏が支持を伸ばしてはきましたが、マクロン大統領からの反撃もあったようです。選挙結果は軍事侵攻したロシアに対する欧州の結束にも影響すると見られるだけに、注視が必要です。
仏大統領選挙:支持率が接近する中、両候補によるテレビ討論会が行われた
フランス(仏)大統領選挙の決選投票は2022年4月24日に中道の現職マクロン大統領と、極右政党のルペン前党首との間で争われます。
仏大統領選挙の決選投票直前となる20日に、マクロン大統領とルペン前党首によるテレビ討論会が行われました。なお、両者の支持率は、ルペン候補の追い上げもあり、かなり接近した時期も見られます(図表1参照)。
どこに注目すべきか:仏大統領選挙、決選投票、テレビ討論会、EU
最初に、仏大統領選挙を振り返ります。5年毎に行われる仏大統領選挙は1回目の投票で5割以上の票を得た候補者がいれば大統領に選出され、いなければ2回目投票(決選投票)が実施されます。
今回は1回目の投票が4月10日に実施され、マクロン氏が27.9%、ルペン氏が23.2%で、1位と2位となったため、両者により24日に決戦投票が行われます。なお、前回17年の大統領決選投票も同じ顔合わせでした。17年の1回目の投票ではマクロン氏が24.0%、ルペン氏は21.3%でした。注目なのは17年の決選投票です。マクロン氏の得票率が66%と、ルペン氏の34%を大幅に上回ったからです。これほどの大差がついたひとつの背景が直前のテレビ討論会といわれています。ルペン氏の準備不足と、欧州連合(EU)離脱や移民制限などの主張は幅広い支持を得られませんでした。
今回の仏大統領選挙でもテレビ討論会が注目されました。その理由として両者の支持率を見ると、4月前半にはマクロン氏支持が52%前後、ルペン氏が48%前後と急接近したからです。ウクライナ問題で国民の支持を得たと見たマクロン氏が選挙運動を遅れて開始させた面があります。反対にルペン氏はEU離脱などの主張は取り下げる一方、インフレに苦しむ世帯を救う政策を前面にポピュリズム戦略を押し出してきたことが支持回復の背景と見られます。
そこで注目のテレビ討論会ですが、終了後の、どちらが討論会の勝者かという世論調査の結果は、サンプル数も少なくばらつきはありますが総じてマクロン優位の見方となっているようです。両者の主張の違いを見ると(図表2参照)、インフレによる生活費の上昇に対し、マクロン氏は価格上限の設定を主張しているのに対し、ルペン氏は減税を主張しています。年金支給についてマクロン氏は現実的に支給年齢引き上げを述べる一方で、ルペン氏は据置きで世論に訴えました。ただ、その財源には言及が無かった模様です。
EU政策についてルペン氏は前回の大統領選挙に大敗した反省を踏まえ修正しています。難民についてもウクライナ問題に対する国民の関心の高さから戦略を見直しています。
ルペン氏は国民生活を軸にインフレ対応や過激な右寄り政策を抑えて国民の支持や、一部政党(再征服)の支持を取り付けつつあるようです。ただ、テレビ討論会でもロシアの銀行からの融資や、プーチン大統領との関係を指摘されたことについては、反論できたとは言い難いと見ています。
もっとも、マクロン氏も磐石とは思えません。上から目線とも揶揄されるマクロン氏の政策運営には「黄色いベスト」運動という反政府デモがおきたことが象徴的です。
欧州には反EUを掲げる政党はフランスだけでなくドイツ、イタリアなど多く見られます。ルペン大統領となった場合EUの結束が崩れる恐れもあります。それはロシアへの制裁で見られた国際的な結束にも亀裂が生まれる恐れもあります。見守るしかありませんが、選挙結果には注視が必要です。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。