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- 7月のFOMC、再び0.75%の利上げ
市場の大半が0.75%の利上げを見込んでいた今回のFOMCは、結局市場予想通りの結果となりました。関心は次回(9月)のFOMCでの利上げ幅などへのヒントでしたが、今後についてはデータ次第の運営にするという方針変更を表明することで具体的な数字は示しませんでした。景気減速は懸念ながら、物価の低下を確認するまで引き締め姿勢を維持する意向とみられます。
7月FOMC:利上げペースを落とす兆しを示しつつも、インフレ抑制を重視する姿勢を維持
米連邦準備制度理事会(FRB)は2022年7月26〜27日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、大方の市場予想通り0.75%の利上げを全会一致で決定しました。この結果、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは2.25〜2.50%となり、景気を熱しも冷ましもしない「中立金利」の水準に引き上げられたと見られます。
声明文では、経済状況に関しては、全体の景況判断において「消費支出及び生産の指標は軟化した」と指摘し(図表1参照)、前回声明文の「全般的な経済活動は1-3月期に切り下がった後に加速したようだ」から下方修正されました。
会見で、FRBのパウエル議長は、先行きの金融政策は今後の経済指標次第のスタンスにすると説明しています。
どこに注目すべきか:FOMC、0.75%、全会一致、消費支出、賃金
FRBは3月に0.25%、5月に0.5%、6月には0.75%と利上げ幅を加速させてきました。7月は0.75%と前月と同じ幅での利上げとなりました。これをもって、ハト派(金融引締めに慎重)かタカ派(金融引締めに積極)かという、二者択一の問題にすり替えると、今回はハト派と見られそうです。しかしながら、声明文やパウエル議長の会見を勘案すると、タカからハトへの明確な転換点とは言い難いようにも思われます。
今回のFOMCでは、今後の会合において、事前に利上げを示唆するスタイルから、会合ごとに経済データ次第で判断するスタイルに変更するとしています。そうした中、原油価格の落ち着きでガソリン価格などは足元低下傾向に転じています。また、声明文で、消費支出及び生産指標は軟化したと指摘しており、景気減速懸念を認識していることが示唆されます。 9月のFOMCでは、想定通り物価がある程度落ち着くなら、利上げ幅を引き下げることは基本戦略と思われます。
しかしながら、「雇用については堅調」の判断を維持しています。例えば景気後退の判断に参照されると見られる失業率は6月が3.6%と低水準です(図表2参照)。パウエル議長も市場が景気後退を意識していることは認識していても、ギリギリまでインフレ抑制姿勢を示す意向ではないかと思われます。パウエル議長は会見で景気のソフトランディング(景気悪化を回避しつつインフレを抑制)を達成することがますます難しくなっていると認めていることなどからも、インフレ抑制姿勢を維持する意向も伺えます。加えて、FRBが重視する賃金指数のひとつアトランタ連銀の賃金上昇トラッカーは依然警戒レベルと見られます。もっとも、今週公表予定の雇用コスト指数(ECI)は市場予想では低下が見込まれています。利上げのペースダウンを視野に入れつつ、経済指標がまちまちの中で、より明確な方向性を今後の経済データで確認したいというのが今回のFOMCのメッセージと思われます。
そのように考えれば、声明文からサプライチェーン混乱によるインフレリスクの文言が削除された一方で、リスク要因として、ロシアのウクライナ「侵攻」が「戦争」に置き換えたのは、新たな材料に注目するということだと思います。ほぼ解除された中国のロックダウンによるサプライチェーンの混乱より、戦争の長期化によるエネルギー価格上昇という今後の問題に目を向けるというメッセージなのかもしれません。
そのうえで、パウエル議長は、今回の利上げ局面における、これまでの利上げ効果について言及しました。今後想定外の事態で価格が上昇をするなら、さらなる利上げも辞さない覚悟を示すことで市場が過度にハト派となることを防ぎつつ、想定通りに物価が落ち着くなら利上げペースを下げる準備があることが、今回のFOMCのメッセージと見ています。
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