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- ブラジル、インフレ率低下の明暗
ブラジルのインフレ率は水不足を背景とする水力発電不足や、通貨安、エネルギー価格の上昇などにより押し上げられてきました。ただ、足元ではブラジル中央銀行の高金利政策やコモディティ価格などの落ち着きでインフレの落ち着きに期待も高まっています。ただし、財政政策による価格抑制など持続性に疑問のある政策もあり、今後の展開に注視は必要です。
ブラジルIPCA:7月のインフレ率は依然高水準ながら、勢いは急速に低下
ブラジル地理統計院が2022年8月9日に発表した消費者物価指数(IPCA)によると、7月は前年同月比で10.07%上昇となりました(図表1参照)。11ヵ月連続で10%超の上昇となっています。
足元の変化を反映する傾向がある前月比を見ると、7月はマイナス0.68%と、前月の0.67%上昇を下回りました。
どこに注目すべきか:ブラジル、インフレ率、IPCA、減税、大統領選挙
ブラジルの代表的なインフレ指標であるIPCAは7月に上昇の勢いに低下が見られました。10%を超えるインフレ率が続いていたブラジルにとり朗報のようにも見受けられます。しかしながら、インフレ率低下の中身を見ると減税など政策対応の結果という側面が見られます。ブラジル中央銀行は政策対応の影響を見極めたうえで今後の方針を定めると見ています。
まず、ブラジルのインフレ率低下の中身を構成指数で確認します。7月に下落したのは運輸(前月比マイナス4.51%)、住居(同マイナス1.05%)などが主な項目です(図表2参照)。これらの項目が低下した背景は減税や国営石油会社が先月実施したガソリン価格の引き下げなどによります。
反対に上昇した項目を見ると、食料品(前月比1.3%上昇)に加え、主にサービス消費を示す個人支出(同1.13%上昇)などは上昇傾向を維持しています。食料品価格については、小麦など国際的なコモディティ価格は既に下落傾向にありますが、恐らくレアル安の影響などが残る結果と思われます。個人支出は堅調なブラジル雇用市場の動きを反映したものと思われます。
ブラジル中央銀行は21年3月より利上げを開始し、足元の政策金利は13.75%となっています(図表3参照)。インフレ、もしくは通貨レアル安の抑制が利上げの主な背景です。今回のインフレ率低下がブラジル中銀の金融政策の運営方針に与える影響は中立的と見ています。9日にブラジル中銀は、8月2~3日に開催した金融政策決定会合の議事要旨を公表しました。それによると、今回インフレ率を引き下げた減税やガソリン価格の引き下げは織り込んでいることが伺えます。そのうえで、ブラジル中銀はインフレ見通しを(税制改正を前提として)22年を6.8%(6月時点予想、8.8%)、23年は4.6%(4.0%)、24年は3.6%(2.7%)としており、22年を大幅に下方修正しています。これまでの高金利政策などにより、全般的な落ち着きの兆しも見込んでいるようです。議事要旨でも次回会合ではより小幅な利上げ(0.25%)が検討される見込みです。
しかし、今後の最大の懸念はブラジル大統領選挙と見られます。有力候補は左派のルラ元大統領で、財政拡大が懸念されます。現職のボルソナロ大統領は一応右派ですが、先の減税政策などは選挙を前にした人気取り政策であるのは明らかでしょう。議事要旨に言及されていませんが、この二人が争う大統領選挙は今後のリスク要因と思われます。
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