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- ECBのどこがタカ派的であったか
昨日、ユーロ圏国債市場の利回りが大幅に上昇したことにあるように、12月の欧州中央銀行(ECB)政策理事会のトーンはタカ派(金融引き締めを選好する傾向)的でした。利上げ幅を縮小しても、インフレへの警戒感を緩めない姿勢が示唆されました。もっとも、ユーロ圏は景気後退入りが懸念され、今後は金融引き締めと緩和のバランスの綱引きとなりそうです。
ECB政策理事会:市場予想通り利上げ幅は縮小するも、ECBの保有資産は今後縮小へ
欧州中央銀行(ECB)は2022年12月15日の政策理事会で、市場予想通り、主要政策金利を2.50%、銀行が中央銀行に預ける際の金利(預金ファシリティ)を2.00%とすることを決定しました。利上げ幅は0.50%で、9月、10月の利上げ幅である0.75%から縮小させました(図表1参照)。
しかし、ECBは四半期毎に公表する経済見通しで23-24年のインフレ見通しを大幅に引き上げ物価上昇への警戒姿勢を維持しました(図表2参照)。
なお、ECBは量的金融緩和政策(APP)で膨らんだ資産を来年3月から「慎重かつ予測可能」なペースで減らすことも発表しました(図表3参照)。
どこに注目すべきか:ECB、タカ派、APP、バランスシート縮小
市場予想通り利上げ幅を縮小したにもかかわらず、12月のECB政策理事会はタカ派(金融引き締めを選好する傾向)姿勢でした。具体的には主に次の点がタカ派的でした。
まず、ECBのラガルド総裁は会見で利上げ幅は0.50%とすることが当面予想されると述べていることです。ユーロ圏の来年のGDP(国内総生産)成長率は0.5%と低水準の予想は景気後退に近いことが想定されます。したがって、市場では利上げの最終到達点(ターミナルレート)は政策理事会前2.8%程度を見込み、利上げの終了は近いと読んでいました。しかし0.5%の利上げが当面続く可能性を示した点はタカ派的です。
次に、当面の大幅利上げを支持するようにインフレ率の見通しが大幅に引き上げられたこともタカ派的です。インフレへの警戒を続ける理由としてエネルギー価格上昇などの価格転嫁が不十分で今後反映される可能性や、賃金上昇への懸念を指摘しています。例えば、失業率はユーロ圏の水準としては労働市場が堅調であることを示唆しています。
よりタカ派姿勢が浮き彫りとなったのは、ECBのバランスシート(B/S)縮小です。ECBのB/Sは①APPなどによる債券保有額、②条件付き長期資金供給オペレーション(TLTRO)、③その他、に分類すると、②のTLTROは既に縮小に着手しています。しかしB/S縮小の本丸は5兆ユーロ弱で再投資を繰り返している①のAPPで膨らんだ保有債券です。ECBのタカ派メンバーは政策の矛先を0.75%の利上げ維持から早期APP縮小にシフトさせ、来年1-3月期の縮小(債券償還を全額再投資しない)開始を主張していました。それが実現したことはタカ派的と見られる要因です。また、少なくとも23年4~6月期までは月150億ユーロ(約2兆1000億円)規模での縮小は、償還分の半分程度が再投資される計算です。しかし市場では再投資される部分がより大きいことを予想していたため、この点でもタカ派的と見られます。
ECBは今回の政策理事会で想定以上にタカ派を演出しました。しかし、ECBは利上げと量的引き締めを同時進行させた経験に乏しく、またユーロ圏の景気悪化は深刻です。今後の展開は手探りとなりそうで、柔軟に身構えています。
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