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まずは順調、中国1月のPMIは急回復
梅澤 利文
2023/01/31

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概要

中国の23年1月の製造業と非製造業の購買担当者景気指数(PMI)は前月を上回りました。ゼロコロナ政策の解除により、感染再拡大懸念を経済再開への動きが上回った格好です。サービスなど国内需要を中心に当面回復傾向が期待されます。ただし、持続的な中国景気の回復にはネックとなっている問題への対応が求められます。




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中国、23年1月のPMIはゼロコロナ政策の解除を受け急回復

中国国家統計局が2023年1月31日に発表した23年1月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.1と市場予想に一致し、前月の47.0を上回りました(図表1参照)。景気の好調・不調の境目である50を4カ月ぶりに上回りました。

建設業とサービス業を対象とする非製造業PMIは54.4と、市場予想の52.0、前月の41.6を上回りました。外食や娯楽など接触型消費に持ち直しがみられました。新型コロナの封じ込めを狙ったゼロコロナ政策を事実上終わらせたことで、4年ぶりに行動制限がない春節休暇(1月21〜27日、旧正月)を迎えたことなどを背景に、急速に消費などが回復したことがうかがえます。

中国の旅行者の動きは昨年を大きく上回る

今回のPMIはゼロコロナ政策解除による経済再開と、それに伴う春節の連休などによる旅行や消費などにより、これまで抑制されていた需要が一気に後押しされました。

 中国交通運輸省が30日に発表した今年の春節を挟んだ1月7~29日の旅行者は8億9200万人でした。前年同期比では56%の増加です。

海外からの移動も回復し、中国出入国管理局によると、春節の連休中の中国への旅行者は前年比123.2%増加しました。また中国から国外への旅行者は前年比117.8%増でした。

では、死角はないのか?1月のPMIで回復が鈍いセクターもあり、その1つが輸出です。例えば、製造業の新規輸出受注PMIは46.1と、昨年12月の44.2は小幅上回るも、11月の46.7は下回るなど緩やかな回復にとどまっています(図表2参照)。非製造業の新規輸出受注PMIは45.9と節目の50を下回っています。世界的な景気減速が懸念される中、外需の拡大余地は限られそうです。

中国の製造業、非製造業にいくつか改善の兆しは見られる

ゼロコロナ政策解除の経済へのプラス効果を感じさせた1月のPMIですが今後の回復余地も残されているようです。先の今年の春節の旅行者は前年比では大幅に回復しましたが、新型コロナウイルスの感染が広がる前の19年との比較ではマイナス46.9%の減少となっています。見方によっては、コロナ後の経済再開需要はまだ伸びる余地があるとも考えられそうです。

製造業を見ると、今回のPMIでは新規受注が50.9となったのは、国内需要の回復などが背景として考えられます。また、製造業のサプライヤー納期指数は47.6と、12月の40.1から持ち直しました。物流や輸送の遅れの是正が反映されたものと見られ明るい材料です。


中国経済は希望なのか、失望なのか

中国の23年の成長率は経済再開による需要回復と、昨年の成長が低いというベース効果を背景に5.5%程度を見込んでいます。ただし、成長率のピークは23年4-6月期で、年後半は成長率はプラスを確保するも、ややペースダウンすると見ています。

サービス部門など国内需要の一部に堅調な回復が見込まれる一方で、新規輸出受注PMIが示唆するように、外需は回復が鈍そうです。

また、不動産市場の回復の遅れも懸念要因です。12月の新規住宅(床面積ベース)は前年比マイナス44.3%と低調です。リアルタイムデータでは1月に大幅に減少していますが、例年春節では同データは減少するため、今後のデータを確認する必要はあります。

不動産部門で気になるのは、当局のテコ入れが効果を表していないことです。例えば住宅ローン金利は大幅に引き下げられていますが、反応は限定的です。信頼を失った市場の回復には相当の時間がかかることも懸念されます。

中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)は3月5日に開催される予定です。中国の景気回復の持続性は政策対応に依存する側面も強いだけに、今後の政策とその効果をデータで確認することが必要と見られます。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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