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豪中銀、追加利上げの意向
梅澤 利文
2023/02/08

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概要

オーストラリア(豪)準備銀行(中央銀行)は堅調な豪労働市場に伴うインフレ率上昇の勢いを背景に、複数の追加利上げを示唆しました。豪国債利回りは年初から半月ほど低下傾向でしたが、足元上昇傾向に転じています。豪中銀理事会後の市場の反応を見ると、比較的素直に声明文の内容を消化したように思われます。




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オーストラリア(豪)準備銀行は市場予想通り政策金利を0.25%引き上げ

オーストラリア(豪)準備銀行(中央銀行)は2023年2月7日の理事会で、政策金利を0.25%引き上げて3.35%とすることを決定しました。22年5月から、利上げは9会合連続となります(図表1参照)。

今回の利上げ幅は市場予想通りであったものの、豪中銀のロウ総裁は、政策発表後の声明で、「インフレが目標に戻る確実性を高めるため、今後数ヵ月でさらなる利上げが必要になると理事会は考える。その達成のために必要な対応を取る」と表明したことなどを受け、豪中銀はタカ派(金融引き締めを選好)との見方が広がりました。そのため市場では理事会の結果発表後に一時豪ドル高や、豪国債利回りの上昇が見られました。

豪経済指標は、インフレ率の上昇に懸念が必要なことを示唆

先週(2月3日)、米雇用統計で労働市場の強さが示されました。これを受け米国はもとより、他国の国債利回りも上昇に転じる中、豪中銀の声明に注目しました。そうした中、豪中銀は豪消費者物価指数(CPI)の上昇傾向などを背景にタカ派姿勢を強めました(図表2参照)。豪中銀のインフレ懸念への根強さが示されました。

豪国債利回りの年初からの動向を振り返ると、豪10年国債利回りは1月初め4%台であったものの、米国の景況感指数の悪化などを背景に低下し、1月半ばに約3.3%に急低下する展開となりました。

ただし、1月後半に22年10-12月期の豪CPIや豪失業率の低下などを受け豪中銀理事会前に3.5%程度に戻りましたが、年初の水準は大幅に下回っています。足元の豪CPI上昇からは違和感も覚える利回り低下とみられます。

なお、豪中銀のインフレ見通しによると23年末にCPIは4.75%に低下(足元7.8%)すると見込む一方で、失業率は足元の3.5%から、25年半ばに4.5%に上昇すると見込んでいます。豪労働市場は非常に強い状況で、失業率は昨年半ばから3.5%前後で推移しており、コロナ禍前の水準を大幅に下回っています(図表3参照)。また賃金も上昇傾向です。

つまり、豪中銀の労働市場とインフレ見通しを組み合わせると、金融引き締めの結果、失業率の上昇など雇用市場が軟調になり、インフレ率が低下するというシナリオが浮かび上がります。

豪中銀のややタカ派的な声明を受け市場は金融政策見通しを小幅調整

今回の豪中銀の声明では「今後数ヵ月間に政策金利の一段の引き上げを見込む」の部分が注目されます。期間が数ヵ月と、これまでの表現より具体的になったからです。今は金融政策を緩めるのではなく、もう少し引き締めを続けてインフレ率が低下に転じるのを見届けたいという豪中銀の意図が示されているように思われます。


先物市場では今回の豪中銀の理事会を受け、利上げ見通しを1回分程度上乗せする形で織り込みました。ペースは緩やかで小幅ながら、追加利上げの可能性を織り込んだ印象です。

一方で、インフレ率の低下を見込んでいることは変わりがないことから、年末に向けて利下げに転じるシナリオを、市場は引き続き維持しているとみています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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