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市場予想を上回った中国3月PMIの内部事情
梅澤 利文
2024/04/01

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概要

中国の3月のPMIは製造業、非製造業ともに、景気拡大・縮小の目安となる50を上回りました。中国の景気回復に対し期待が高まる数字です。ただし構成指数の一部に弱さもみられます。また、製造業、非製造業とも回復の背景としてインフラ投資など当局の「官製需要」による押し上げの影響が見え隠れする点も気になります。小売り売上高など民間需要腫瘍の回復には、まだ距離があるように思われます。




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中国、3月PMIは製造業、非製造業ともに景況感の回復を示唆

中国国家統計局が3月31日に発表した3月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.8と、市場予想の50.1、前月の49.1を上回りました(図表1参照)。同指数は6ヵ月ぶりに景気拡大・縮小の目安である50を上回りました。また、同時に発表された3月の非製造業PMIは53.0と、市場予想の51.5、前月の51.4を上回りました。非製造業PMIの内訳を見ると、建設業が56.2、サービス業が52.4と、共に前月を上回りました。

財新/S&Pグローバルが4月1日に発表した3月の製造業PMIは51.1と、市場予想の51.0、前月の50.9を上回りました。内訳では生産や新規受注などが堅調で、指数全体を押し上げました。

中国の製造業PMIは新規受注などの回復を伴いながら50を上回った

中国国家統計局が発表したPMIは、製造業、非製造業共に市場予想、景気の分かれ目となる50を上回った点で経済活動の回復が示唆されました。ただし、内訳を見ると製造業、非製造業ともに回復の持続性には気になる点もみられました。

3月の製造業PMIの50.8は水準としては非製造業を下回りましたが、内訳などを見ると、製造業の回復に内容の良さもみられます。

製造業PMIの主な構成指数を見ると、生産は52.2と前月の49.8を上回りました(図表2参照)。生産活動が足元活発化していることがうかがえます。さらに、新規受注が3月は53.0と、2月の49.0を上回っています。新規受注は製造業活動の先行指標となる傾向があるだけに、目先の生産活動の底堅さは維持される可能性もあります。

新規輸出受注は51.3と、2月の46.3を大幅に上回りました。輸入も50.4と、2月の46.4を上回り、共に過去1年程度50を下回っていた状況から抜け出し、貿易活動に回復の兆しが見られました。

なお、輸出入製品の品目のうち比較的堅調だったのはプラスティック製品、乗用車、コンピュータ、通信機器などです。比較的幅広い製品に回復が見られます。

中国国家統計局が3月18日に発表した、1-2月の工業生産は年初来前年同期比で7.0%増と、市場予想を上回りました。また、同じく18日発表の1-2月固定資産投資のうちの製造業投資も堅調であるなど、24年になって発表された製造業関連の指標はこれまでのところ概ね市場予想を上回る回復を示しています。

もっとも、中国の製造業の回復の持続性には不確実性もあります。

1点目は統計の癖です。中国では春節休暇の時期が年によりずれますが、今年のように2月となった場合、3月はフル稼働となり、生産活動が押し上げられる傾向があるからです。3月の指標の強さは多少割り引く必要があるかもしれません。

2点目は、今後海外経済の減速が懸念される中、年後半には外需が落ち込む可能性が考えられることです。

3点目は今回の製造業の回復はインフラ投資の拡大など官製需要の拡大に依存していることです。中国当局は景気刺激策を当面続ける構えですが、このような景気刺激策はいつまでも続けられるものではなく、成長率の持続性に疑問が残ります。

中国の3月の非製造業PMIは新規受注や雇用が弱く力強さに欠ける

中国の3月の非製造業PMIも53.0と、市場予想、前月を上回り数字の上では製造業よりも強い回復が示されています。しかしながら、構成指数で内容を見ると数字ほどの強さはない印象です(図表3参照)。例えば、先行きを示唆する新規受注は3月が47.4と2月の46.8は上回ったものの、依然として50を下回っています。

気になるのは雇用で、3月は46.6と2月の47.0を下回りました。投入価格も前月を下回っていることが、価格上昇が受け入れられていないとの判断であるならば、非製造業の強さに疑問も残ります。

非製造業PMIを構成指数別でなく、部門別に見ると、建設業とサービス業に分けられます。このうち建設業は3月が56.2と前月を大きく上回った一方で、サービス業は52.4と前月を上回るも、建設業ほど伸びませんでした。恐らく、建設業は官製需要による下支えがあったとみられますが、サービス業における民間需要の回復がそれほど強くなかったと考えられます。民間需要の回復の鈍さは他の指標でも確認できます。1-2月の小売売上高は年初来前年同期比で5.5%増と、市場予想を下回りました。また、2月の失業率は5.3%と、前月を上回り上昇傾向なのも気がかりです。

1-3月期の終わりに発表された3月のPMIは中国の24年の目標である5%前後の経済成長率を達成するうえで、まずまずの数字と思われます。しかし、持続性の点では疑問が残ります。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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