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- トランプ政権の不確実性に疑問の声もあがり始めた
米労働省の1月の雇用動態調査では、求人件数が市場予想を上回り、米労働市場の底堅さが確認された。市場の一部で懸念されている景気後退は、この指標からは見えにくい。しかし、当指標は2月以降の状況を反映していない。一方、足元の企業マインド調査では政策の不確実性に疑問も投げかけられている。株式市場も軟調だ。しかし、今のところ、トランプ政権は政策変更を考えてはいないようだ。
1月の米求人件数は市場予想を上回り、景気悪化懸念を幾分後退させた
米労働省が3月11日に発表した1月の雇用動態調査(JOLTS)によると、非農業部門の求人件数(季節調整済み、速報値)は774万件と、市場予想の760万件、前月の750.8万件(速報値の760 万件から下方修正)を上回った(図表1参照)。部門別では、金融や小売り、建設業などに求人数の増加が見られた。
自発的離職者の割合である離職率(一般に雇用市場の活況度を示唆し、転職が活発になると同指数は上昇)は2.1%と、前月の1.9%を上回った。
レイオフ(一時解雇)を含む解雇件数は163.5万件と、前月の166.9万件から小幅の減少にとどまり、解雇にも慎重なことが示唆された。
2月の中小企業楽観度指数は政策の不確実性に懸念を示し始めたようだ
筆者は雇用動態調査(JOLTS)において、「求人件数」、「離職率」、「解雇件数」、及び「失業者1人当たりの求人件数」に主に注目している。なお、1月の「失業者1人当たりの求人件数」は、前月と同じく1.1件であった。
1月のJOLTSは求人件数の回復などを踏まえると、米労働市場は底堅いようにも見える。市場の一部で懸念されている景気後退の観測は、この指標からは想定しにくい。ただし、JOLTSは1月の数字であり、2月以降に本格化した連邦政府職員の削減や、関連企業の雇用の悪化という足元の状況を十分に反映していない点に注意は必要だが。
足元の米国景気の悪化懸念を示唆する指標として11日に全米自営業連盟(NFIB)が発表した中小企業楽観度指数を見ると2月は100.7と、市場予想の101.0、前月の102.8を下回り、トランプ政権への高揚感の後退が示された(図表2参照)。 同指数はNFIBの会員である中小企業5000社を対象に調査したものでセンチメントを示すものだ。図表2にあるように、トランプ大統領が16年の選挙に勝った(トランプ1.0)後、トランプ1.0の政策を評価して急上昇した。同指数はトランプ1.0の期間中は高水準を維持したが、バイデン政権となってからは低下傾向となった。そしてトランプ氏の当選が昨年決定した後、同指数は急上昇した。トランプ氏の政策への期待の高さがうかがえよう。
しかしながら、同指数の足元の低下はトランプファン(?)から「ちょっと違うんじゃないか?」という懸念が出始めたことを物語るものだ。見通しの懸念を示すNFIBの「不透明度指数」も、昨年12月の86から今年2月は104にまで急上昇した。このような不安の増大はトランプ1.0では見当たらない。
もっとも、2月の中小企業楽観度指数は100.7と依然高水準でトランプ政権の政策に対する期待が無くなったわけではない。しかし、トランプ2.0における関税の範囲と規模は、トランプ1.0のそれを大幅に上回るうえ、これまでのトランプ大統領の不規則発言もあいまって不確実性が高まり、中小企業楽観度指数に影響を及ぼしたと見られる。
トランプ政策は減税(財政政策)、関税(貿易政策)、移民、規制緩和の4本が柱だ。ただ足元では関税が突出している。筆者は関税政策がインフレを押し上げ、その結果景気を押し下げると理解している。一方、景気を押し上げることが期待される減税や規制緩和を報道で見かけることは少ない。政策のバランスの悪さも懸念要因のようだ。
トランプ氏の政策は先読みできないが、現段階下支えに消極的のようだ
当然ながら、株式市場などにもトランプ政権の政策による影響が見られる。しかし、関税への強硬姿勢を弱めるなどして株安に歯止めをかける「トランプ・プット」への期待は後退している。ベッセント米財務長官が7日に経済専門局とのインタビューで、「市場と経済は政府支出中毒(依存)になっている」と指摘し、「デトックス(解毒)期間が必要だ」と述べたからだ。改革には痛みが伴うことを覚悟しているようだ。
確かに、「改革に向け新たな政策は痛みを伴う」というのは正しいだろう。米国財政には見直しが必要な面もありそうだ。ただし、問題なのは痛みを伴う政策が必ず正しい政策というわけではないことだ。これまでの不規則発言では政策を評価するのはそもそも困難だ。ベッセント氏は「良い政策であれば、(いつかは)市場は上昇するもの」と指摘しているが、不確実性が高すぎ、政策の評価もままならないというのが現状ではないだろうか。
トランプ・プットの期待が足元期待しづらい中、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和による「パウエル・プット」の可能性はあるだろうか? それはインフレ動向次第と思われる。米雇用市場が底堅いこともあり、FRBは利下げを「急ぐ必要がない」が基本姿勢だ。インフレ鈍化は利下げの必要条件だろう。そこで米消費者物価指数(CPI)において、関税政策との関連で筆者が注目しているのは財価格の動向だ(図表3参照)。理由は財価格が関税引き上げにより上昇圧力がかかる傾向があるからだ。今後の財価格の動向を注目したい。
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